コンテンツ管理や情報漏えい防止に力を発揮するECM、Alfrescoとは

まだまだ普及していないコンテンツ管理とその必要性
企業内に存在する文書、写真、ビデオ、メールなど、様々なコンテンツがビジネスを支えています。これらはどのように社内で共有、管理されているでしょうか?
以前から、業務データ共有のために企業はファイルサーバーを導入して、情報共有の促進を図っています。ハードディスクの価格も下がり、安価で簡単に据え付けることができる「入れ物」であるファイルサーバーは、便利ではあるものの、次第にビジネス案件の増加やユーザーが増加していくにつれ、アクセス権をきちんと管理することができなくなってしまいます。
さらに、格納されるコンテンツの量の増加により、ファイルサーバー内に不必要なコンテンツ(ゴミ)が増えてきます。また部署ごとにサーバーが乱立しはじめると、そのサイロ化のために部署を横断するような情報共有が難しくなってきます。
プロジェクトの情報共有は社内のみにとどまらず、社外と行われることはもはや必須と言えます。社外と情報共有するようになると、メールや大容量ファイル転送サービス等を利用するケースが多くみられますが、これらはコンプライアンスの観点から、企業のIT部門にとって危惧する問題です。
情報漏えいの防止など、リスクを回避するために、IT部門はファイルの暗号化や、通信ポートの遮断、クライアント監視ツール等の対策が必要となってきます。しかしこういった手段を採ると、ユーザーにとっては使いにくいシステムになってしまいがちです。
また、テクノロジーの進化によって新たなソリューション、例えばDropboxなどの共有ストレージサービスを利用するといった抜け道ができることによって、最大のセキュリティホールがそれらを利用する人になってしまうことは、近年の情報漏えい事件においても明らかです。こうしたファイル転送サービスや共有サービスは、取引先にファイルを送付したり、外出先から社内のファイルサーバーにある情報にタブレット等のモバイル端末でアクセスしたい時にはとても便利ですが、前述の理由から、使用を禁止されている企業は多いです。
その一方で、企業のコンプライアンスや、業界の規制にそった形でレコード管理が求められます。多くの製造業やソフトウェア開発の企業では、品質管理マネジメントモデルであるISO 9001やISO 14001の遵守を、サービスを受ける側から求められ、多数の企業が既に認証や監査を受けているものと思います。
ISO 9001では、製品やサービスがユーザーに提供されるまでの過程を重視し、その中で品質に関わる文書の保管方法や所在、保護、検索、保管期間、廃棄ルール等を明確化することが求められます。多くの企業は紙文書でそれらを保管していますが、紙での取り扱いは、キャビネットの増加による保管コストの増加や、書類の山に埋もれてしまうなどの原因から、探す時間のために仕事が遅くなったり、紛失してしまう等の危険性も抱えています。
このような問題を解決するための方法として、コンテンツ管理システム(ECM)を活用することが考えられます。ECMを利用することで、適切に文書を管理すると同時に、保管コストを下げ、生産性の向上につなげることができます。
しかしながら、企業はコンテンツ管理の必要性に対して十分認識されているものの、ITの投資の優先順位としては、低い状態に置かれることが多くみられます。その理由としては、既存のコンテンツ管理製品の初期投資が高額になることや、投資対効果をそれぞれの企業が算出することが難しいことが原因となっています。そこで、今回はこうした企業の問題解決を支援する、オープンソースのコンテンツ管理プラットフォームであるAlfrescoを紹介していきます。
オープンソースのコンテンツプラットフォーム
- Alfresco -
Alfrescoは2005年にDocumentumの創設者のJohn NewtonとBusiness Object COOのJohn Powellが中心となって設立された、オープンソースのコンテンツプラットフォームを提供する会社です。設立から20年以上も経つような他のECMベンダーに比べると若い会社ですが、そのマネジメントチームは、ORACLEやFileNet等の長年ECMに取り組んできた優秀なスタッフ(タレント)で構成され、コンテンツプラットフォームをオープンソースとして、1から作り直すことを目指しました。
2005年の設立当初に利用できた新しい技術、例えば、Spring Frameworkで提供されるDI(Dependency Injection)や、AOP(Aspect Oriented Programming)、Web Scripts、Java Scriptのようなスクリプト言語をリポジトリのフレームワークとして利用しながら、様々なビジネスシーンに対応できるよう、柔軟なデータモデルを構成できるシステムになっています。
このため、最近のクラウドへの対応や、マルチテナンシー(1つのインスタンス上で複数ドメインのユーザーとコンテンツを管理)、モバイルへの素早い対応など、製品の拡張性が高いだけではなく、メンテナンス性に優れたアーキテクチャと言えます。また、Alfrescoが提供するサービスは、業界標準であるCMIS, JSR-170 に準拠しており、開発者は他システムとのインテグレーションや、独自ユーザーインターフェース等のシステム構築を簡単にすることができます。
Alfrescoは従来型のオンプレミス版である“Alfresco One”の他に、パブリッククラウドでのコンテンツプラットフォームサービス、“Alfresco in the cloud”を提供しています。このAlfresco in the cloudでは、オンプレミスと同等のユーザーインターフェースおよび機能を無償で提供しており、すぐに利用することが可能です。
特筆すべきこととして、Alfrescoはこのクラウド環境とオンプレミス環境のコンテンツを常に同期するEnterprise Cloud Syncを用意しています。Enterprise Cloud Syncによって、例えば、クラウドには取引先のパートナーを登録し、共有したいドキュメントを同期することで、社外のユーザーが社内のコンテンツリポジトリにアクセス することなく、情報をセキュアに共有することができます。
Alfrescoは、iOSとAndroidの両方に対応したモバイルアプリケーションを提供しています。これらはダウンロードしたらすぐに、会社にあるオンプレミスのAlfrescoサーバー、またはAlfresco in the cloudの環境にアクセスし、最新のドキュメントを取得することができます。
訪問先のミーティングで急に必要になったドキュメントをモバイルデバイスからアクセスすることはもちろん、工事現場の写真をその場で撮影し、これをプロジェクトのメンバー全体にすぐに共有するといった使い方も簡単です。
また、Alfrescoのモバイルアプリケーションからワークフローも使うことができるので、いつでもどこでも、社内稟議の承認や、開発ドキュメントのレビューを行うことができ、ビジネスプロセスを迅速に進めることができます。
次にAlfrescoの主な機能について説明します。
Alfrescoでできること
Alfrescoは以下の図4で紹介する通り、基本的な文書管理機能、レコード管理、情報共有、Webコンテンツ管理、そしてBPM/ワークフロー機能をカバーします。
これらの機能は、Alfresco ShareというWeb UIからその機能を利用することができますが、CIFSやFTP、WebDAV、さらにはIMAPからもアクセスすることができます。
文書管理機能
Alfrescoは企業のコンテンツ管理基盤として必要な要件を網羅しています。主な機能としては、バージョン管理、ドキュメント間のリンク、セキュリティ、認証、監査証跡、検索、トランスフォーメーションサービス、自動属性抽出、カテゴリ管理などです。そしてこれらの機能はハイブリッドコンテンツプラットフォームとして、オンプレミスおよびクラウドの両方で提供されます。
レコード管理機能
従来のECMが持つレコード管理機能はユーザーにとって決して使いやすいものではなく、利用するにはスペシャリストが必要なほどでした。Alfrescoのレコード管理機能は、ユーザーに利用しやすい設計になっており、ファイルの保管についてはWebのユーザーインターフェースだけではなく、CIFSやIMAP経由でも行うことが可能です。
Alfrescoのレコード管理機能は、オープンソースでは初めて米国国防省の電子レコード管理アプリケーションに関するDoD 5015.02-STD 認定を取得しています。このDoD 5015.02-STDという規格は今後、軍や公共機関の電子記録だけではなく、一般の企業のレコード管理についてもベースになる可能性があります。
情報共有機能
Alfrescoでは、文書や画像データ等のコンテンツの共有機能だけではなく、WikiやBlogの形式で情報を共有することができます。また、データリスト機能によって、表形式のデータを格納することも可能です。情報共有機能については次回以降で詳しく説明する予定です。
ワークフロー機能
Alfrescoでは軽量なビジネスプロセスエンジンのActivitiを利用し、その上にワークフローを提供しています。Activitiは特定のアプリケーションやクラウドシステムのために利用できるように考えられたもので、プロセス仮想マシンアーキテクチャを採用しています。BPMN 2.0でプロセスを記述し、単一言語に縛られることなく、様々な言語で具体的な記述を行うことが可能です。
さらに、Alfresco One 4.2ではオンプレミス(Alfresco One)とクラウド(Alfresco in the cloud)との間でワークフローを使用することができます。これによって、取引先への資料の閲覧確認や、見積の依頼などの場面において、社外のユーザをシステムとしてビジネスプロセスに取り込むことができるので、ドキュメントが介在するビジネスプロセスの管理を社外にまで広げ、ビジネスをより効率的に行えるようになります。
次回は、Alfresco のメインのユーザーインターフェースであるAlfresco Shareで利用できる機能を紹介します。
このコンテンツは、オープンソース総合情報サイト「OSSNews」が提供・監修しています。 「OSSNews」では、オープンソースに関する、最新情報、イベント情報やバージョン情報を掲載しています。 Alfrescoのライセンスや動作環境などのソフトウェア情報もご確認できます。
【参考URL】
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