社内コンテンツ利用をめぐる、社員とIT部門のいたちごっこを防ぐためには

社外との情報共有の実際と問題点
第1回の記事の中でも触れましたが、企業が社外の取引先とのコンテンツを交換する際には、メールや、ファイル転送、共有サービスを使ってコミュニケーションされているケースが多いものと思います。
そういった場合、例えばメールでのやり取りにおいて、ファイル添付を忘れる、暗号化されていないコンテンツをそのまま送受信する、最新のコンテンツ側からなる、といったことが多いと思います。既にコンテンツ管理製品を利用されている会社では、メールやファイル転送サービスの送信時に、折角つけられていた属性情報が失われることもあれば、後で整合させるために手作業でそれらを管理しなければならないため、それらの情報をつけないまま保管してしまうケースがあるかもしれません。
また、ファイル転送サービスなどを利用して、取引先に素早くファイルを送りたいとか、必要に応じて外出先のモバイル端末から社内のファイルサーバーにアクセスしたいと思っても、会社のコンプライアンスのために利用することができず、不便なことも多くあります。
当たり前ですが、ユーザーは使いやすいシステムを好みます。一方で、企業のIT部門は情報管理の立場上、外部への情報漏洩を阻止しようとするので、メール送信前の上長の承認が必要であるとか、添付ファイルの暗号化等の対策を行っている企業も多いことでしょう。しかしそのほとんどのソリューションは、ユーザーにとっては使いにくいシステムではないでしょうか。
ユーザーは用意された道具が使いにくいと、それを使わない「抜け道」をいろいろと考えます。Dropboxや宅ファイルサービスもその1つです。そうなると、今度はIT側がそれを阻止するために、ポートを防いだりなど、まさにユーザーとIT部門の「いたちごっこ」がくり広げられることが想像できます。
ユーザーにとって使いやすく、仕事の効率を上げ、かつ企業のコンプライアンスを遵守するようなシステムが必要不可欠です。Alfrescoはオンプレミス、クラウド、モバイル、そしてオンプレミスとクラウド間のコンテンツを行うCloud Syncによって、ユーザーにとって使いやすい、いつでもどこでも安全に最新の情報にアクセスすることができるソリューションを提供しています。
前回はAlfrescoのオンプレミスのソリューションであるAlfresco Oneをご紹介しました。今回はAlfresco in the cloudとCloud Syncをご紹介します。
Alfresco in the cloudとCloud Sync
Alfresco in the cloudはパブリッククラウド上でCMIS(Content Management Interoperability Services)準拠のコンテンツ管理サービスを提供しています。企業は自前のインフラを用意しなくても、IT部門の管理下で、企業のコンテンツや、利用するユーザーおよびコンテンツの共有をすぐに開始することができます。オンプレミス版のAlfresco One同様に、バージョン管理、アクセス権管理、検索機能、MS Office/GoogleDocs との連携編集機能などを搭載し、本格的なコンテンツプラットホームになっています。
また、Alfresco in the cloudに対するCMISをベースにしたPublic APIを用意しているので、企業のエンタープライズアプリケーションやモバイルアプリケーションとの連携も可能です。既にAlfrescoではSalesforceとの連携アプリケーションをAppExchangeにて無償で公開しています。
Alfresco in the cloudには3つのサブスクリプション(年間利用料)の形態があります(表1)。
Alfresco Free Network |
Alfresco Standard Network |
Alfresco Enterprise Network |
|
---|---|---|---|
概要 | 無料で始められるコンテンツプラットホームクラウド | 小規模事業者向けのコンテンツプラットホームクラウド | 中、大規模のサポートを必要とする企業向けのコンテンツプラットホームクラウド |
対象ユーザー数 | 無制限 | 5人以上 | 500人以上 |
初期クラウドストレージ(最大ストレージ) | 10GB (10GB) | 25GB (500GB) | 1TB(無制限) |
ファイルサイズの制限 | 50MB | 2GB | 2GB |
クラウドサイトの管理 | × | ○ | ○ |
サポート | ×(なし) | ○(9-5時、営業時間内オンライン) | ○(24x365、オンラインおよび電話) |
費用 | 無料 | $49/月※ 追加ユーザーは1人当たり$9/月 |
Alfresco営業担当までお問い合わせください。 |
Active Directory/LDAP インテグレーション(SAML SSO) |
× | △(オプション) | ○ |
Cloud Sync | × | ○ | ○ |
ブランディング (企業ロゴの設定) |
× | ○ | ○ |
WebDAVアクセス | × | ○ | ○ |
表1:Alfresco in the cloudのサブスクリプション |
※日本円での見積もり/決裁が可能。
Alfresco Free Networkは無料でAlfresco in the cloudを利用することができます。個人データの格納や、少量の文書の共有をすぐに開始したい場合に最適です。初めてAlfresco in the cloud をご利用される場合には、こちらのサイトから申し込むことができます(利用するためには企業のメールアドレスが必要になります)。
企業が利用ユーザーを管理したい場合や、取り扱うコンテンツの量が多い場合には、有料のAlfresco Standard NetworkまたはAlfresco Enterprise Networkを用意しています。
Cloud Syncは、オンプレミスのAlfresco OneとクラウドサービスであるAlfresco in the cloudのコンテンツを、属性情報を保ったまま同期することが可能です。そのため、クラウドには取引先のユーザーを登録しておき、共有したいコンテンツをCloud Syncを使って同期することで、社外のユーザーが社内のコンテンツサーバーにアクセスすることなく、情報をセキュアに共有することができます。
取引先のユーザーがコンテンツをアップデートした場合でも、Cloud Syncによって自動的に社内のAlfresco内のコンテンツも更新されます。企業のIT管理者も、共有されたコンテンツと、ユーザーをIT部門の管理下に置くことができるので安心です。なお、Cloud SyncはAlfresco Community EditionとAlfresco in the cloudの間では利用できません。
次の章では、Alfresco OneとAlfresco in the cloud間を共有するためのCloud Syncの設定方法について説明します。
Cloud Syncの設定
Cloud Syncの設定は簡単です。ここではシナリオとして、社外のABC商会という取引先との情報共有のために、社内のAlfrescoにある“共有フォルダ”内のコンテンツをCloud Syncを使って共有する例を紹介します。
まずは、Alfresco in the cloud側にABC商会用のサイトを作成します。これはオンプレミス版のAlfresco Oneと操作は同じです。
サイトを作成したら、このサイトにABC商会のユーザーを招待します。ユーザーのメールアドレスを入力し、サイトでの役割(ロール)を設定し、招待のメッセージを入力後、“招待する”をクリックすると、設定したメールアドレス宛に招待メールが送られます。メールを受け取ったユーザーは、メールに書いてあるリンク先からこの招待されたサイト(この場合は“ABC商会”サイト)にアクセスすることができます。
これで、社外ユーザー側が参照できるAlfresco in the cloudの設定が完了しました。
ここからは共有の設定を行います。共有に関する全ての設定はオンプレミス側から行います。まずは、ユーザーのプロファイルのページの“Cloudとの同期”で、Cloud Syncで利用するAlfresco in the cloudのアカウントを設定します。
次に情報を共有するコンテンツがあるサイトのフォルダ、または文書のアクションから、“Cloudと同期”を選択します。
共有するクラウドネットワークドメインと、サイト、およびそのドキュメントライブラリのパスを指定します。フォルダを同期した場合、その下のフォルダも同期の対象にするかを選択することができます。また、“オンプレミスのコピーをロックする”にチェックすると、オンプレミス側のコンテンツはロックされ、他のオンプレミス側のユーザーからコンテンツを変更することができないようにできます。
この時、クラウド側の同期しているコンテンツは、コンテンツを変更し、バージョンを更新することができます。この状態はオンプレミス側でCloudとの同期を解除するまで継続されます。
Cloudとの同期の設定は以上で終わりです。とても簡単に設定、利用できることがわかると思います。
Cloud Syncの同期は、オンプレミス側からクラウド側に対してPushまたはPullする形で行われます。デフォルトではPushは15秒、Pullは60秒で行われます。両方でコンテンツが変更できる場合には競合が発生することもありますが、Alfresco Shareでは、バージョン管理対象となっている全てのコンテンツは上書き保存できないようになっているので、競合したコンテンツはバージョンの違いとして格納されます。競合が起こった後で、優先するものを選択することができます。
外部のユーザーとの共有を終了するには、オンプレミス側で共有しているコンテンツの左上の雲アイコンをクリックするか、右側のメニューから“Cloudとの同期を解除”をクリックします。この時、チェックボックスをチェックして“同期を削除”すると、クラウド側の共有しているコンテンツが削除されます。この時オンプレミス側のコンテンツはそのまま残ります。この機能はプロジェクトが終了して、これ以上必要のないコンテンツを残したくない場合に役立ちます。
次回は最終回になりますが、従来のフォルダ/ファイル階層型の文書管理ではなく、文書が中心のビジネスプロセスをサポートするAlfresco Workdeskをご紹介します。
このコンテンツは、オープンソース総合情報サイト「OSSNews」が提供・監修しています。 「OSSNews」では、オープンソースに関する、最新情報、イベント情報やバージョン情報を掲載しています。 Alfrescoのライセンスや動作環境などのソフトウェア情報もご確認できます。
【参考URL】
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