ボウリングでスペアを取得した場合のテストケースを考える

2014年10月15日(水)
吉谷 愛

図2: ボウリングの点数(クリックで拡大)

  1. [古谷] あっ……。
  2. [高梨] ボウリングのスペアは、投球後の1投球の得点がボーナス点として加算されます。ですから
第1投目3ピン倒す
第2投目7ピン倒す(スペア) 
第3投目4ピン倒す
残り17投全てガタ—
  1. [高梨] この場合は、3+7+4+4=18になります。
  2. [古谷] すみません……。
  3. [高梨] 大丈夫です。ただ、ここから少しずつ仕様が複雑化していきます。いままでの難易度と比較すると「ちょっとした困難」と言ってもいいでしょう。そろそろ、設計の変更方針からしっかり整理して考えていかなければいけません。とはいえ、慌てず騒がず、インクリメンタルに進めましょう。では、今まで同様、まずはテストコードの追記からはじめましょうか? あ、追記するテストコードは「private」の前に記述してくださいね。
  4. [古谷] は、はい!では、これでどうでしょう?

図3: スペアの計算方法を考える(クリックで拡大)

  1. [高梨] 大丈夫です。ボウリングのルールはよくわかっていないようですが、テストコードはちゃんと書けていますね。#10+4=14のコメントもわかりやすくていいです。
  2. [古谷] このコメントがないと私が混乱しそうなので……。
  3. [高梨] では、これ以上古谷さんが混乱しないように、今から設計の変更方針を一緒に検討していきましょう。とはいってもそんなに難しく考えることはありません。行うべきことを、下記に示しました。

図4: 設計方針を考える(クリックで拡大)

  1. [古谷] これは…… プログラミング以外の「ちょっとした困難」でも使えそうですね。
  2. [高梨] 機会があれば使ってみてください。では古谷さん、どうして今のプログラムではスペアを計算できないと思いますか?
  3. [古谷] えっ? それは単に設計でスペアを考慮していないからでしょう?
  4. [高梨] まあその通りです。とはいえ、今のプログラムだって、「20投球すべての得点が4」の時のことは考慮していませんが、このケースであれば正しく計算します。何が問題でスペアが計算されないのか、という視点でこのプログラムを見てください。どうですか?
  5. [古谷] そもそも、このプログラムは前回の投球状態を保存していませんから、スペアの判断が出来ないからだと思います。

図5: スペアを計算できない理由(クリックで拡大)

  1. [高梨] その通りです! それでは次の段階である「この問題の回避策」の検討へと進みましょう。古谷さんなら、どうやってこの問題を回避しますか?
  2. [古谷] うーん…… すみません、怒られそうですが、スペアフラグ位しか思いつきません……
  3. [高梨] 大丈夫です。それではスペアフラグがセットされる条件を考えてみてください。
  4. [古谷] もちろん10点取った時ですが、ストライクや10フレーム目を考えたら……
  5. [高梨] 大丈夫です。まずはインクリメンタルにいきましょう。それでは、いよいよ最後の段階である「変更する際の手順」を考えていきましょう。bowling_game.rbに、下記の仕様を追加してみましょう。
  • スペアフラグを設置。
  • record_shot(pins)メソッドに、以下のコードを追加
    1:合計値が10点になったら、フラグを立てる。
    2:スペアフラグがtrueだったら直前にスペアを取っているので、今の投球のピン数をさらに加算。
  1. [古谷] はい、ではやってみます…… あれ?
  2. [高梨] どうしましたか?
  3. [古谷] 新しいテストケースは通ったのですが、他で失敗しました。

図6: @spareフラグによる状態の保持(クリックで拡大)

  1. [高梨] なぜでしょうね?
  2. [古谷] 「全ての投球で1ピンだけ倒した」で失敗しているのですが…… あっ、わかった!
フロイデ株式会社 代表取締役

「最新のアーキテクチャを追及し続ける技術者集団」を目指す、フロイデ株式会社代表取締役社長。現在は、自身のCOBOLからRailsまでの非常に幅広い開発経験や、学生や未経験社員への技術指導経験を糧に、技術講師としてソフトウエアエンジニアの育成に注力している。2013年06月より、初心者向けの「はじめようRuby on Rails開発!」シリーズを考案。“技術者の立場にたった、技術者の心に火をつける”熱い講義をモットーとしている。

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