ネットワークの接続形態あれこれ(後)
無線通信を使ったLAN
ここまで説明してきたのは、電気信号を伝えるケーブル(あるいは光ファイバなど)を使う有線ネットワークです。現在はケーブルという拘束のない、無線のデジタル通信ネットワークも広く使われています。
無線ネットワークは、電波で送られる無線信号を使ってデータ伝送を行います。データは電波で送信できるように変換され(これを変調といいます)、送信機とアンテナを介して空間中に送出されます。ほかの機器はこの電波信号を受信し、元のデータの形に復元(これを復調といいます)します(図1)。
無線通信は、情報を電波の形で送信し、別の機器がそれを受信するという意味では、テレビやラジオと同じような考え方です。しかし無線ネットワークの場合、特定の機器だけが送信するのではなく、すべての機器が送信と受信を行います。
ある機器が送信した電波は、その電波の届く範囲にあるすべての機器で受信されます。もし運悪く複数の機器が同時に送信を行うと、電波信号は混信し、正しく受信できません。これらの点で、無線ネットワークは、前述のケーブルを共有するバス型接続に近いものとして考えることができます。バスとなるケーブルの代わりに、電波が伝搬する空間を共有しているのです。
実体のあるケーブルの場合は、複数のケーブルを用意してネットワークを分割したり、ケーブルを安全に管理することができますが、電波が飛ぶ空間はそうはいきません。ある機器が送信した電波は、到達範囲内にある近くの家や会社など、不特定多数の人が受信できます。そのため、1つの空間を多数のユーザーで共有するための仕組みや、他人にデータが見られないようにする暗号化処理が必要になります。
遠距離を接続するネットワーク
ここまで説明してきたのは、ローカルエリアネットワーク(LAN)と呼ばれるもので、狭い範囲での通信、具体的には建物内や数百メートル程度の距離でのデータ交換に使われるものです。LANに対し、遠隔地との間でのデータ通信に使われるネットワークもあります。このようなものを、ローカルエリアネットワークに対してワイドエリアネットワーク(WAN)と呼びます。
現在広く使われているインターネットや、銀行や企業、行政などのネットワークでは、LANよりも遠距離の通信が必要になります。特にインターネットは、家庭や会社と接続事業者の接続、接続事業者どうしを結ぶ幹線、海外との接続など、広い範囲を結ぶための通信システムが必要です。
LANは建物や敷地内といった狭い範囲での利用なので、利用者が構築するのが普通ですが、広い範囲、遠距離を結ぶ接続は、通信サービスを提供する会社と契約して利用することになります。
通信会社が提供するサービスにはいろいろなものがあり、2箇所の拠点を固定的に接続するもの、ダイヤルアップで接続するもの、広域ネットワークという形で多数の拠点間で自由に接続できるものなどがあります(図2)。
携帯電話ネットワーク
携帯電話サービスはもともとは、どこでも自由に電話を持ち歩いて使えるようにするというものでした。その後、携帯電話の通信基盤が1990年代にデジタル方式に移行したこと、そして携帯電話ネットワークがインターネットに接続したことにより、インターネットの重要な通信基盤の1つになりました(図3)。
今日では、携帯電話やスマートフォンは電話から汎用の情報機器に代わっており、通話機能を持たないデータ通信専用機器も広く使われています。
この記事のもとになった書籍 | |
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榊 正憲 著 |
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