データベース:サーバにデータを保存しよう
はじめに
これから始めるPHP入門コラムでは、PHPを学ぶ人が、PHPで簡単なプログラムを書けるようになるまでに必要な知識とポイントをTips的に書いていきます。今後PHPのスキルを身につけて仕事に役立てたい、という方のために「PHP技術者認定初級試験」の出題範囲を意識しながら進めていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
今回のあらすじ
- Webシステムでデータを扱うには
- データベースマネジメントシステムとは
- データベースへ接続する
- DBMSを準備する
- データを作成する
- データを更新する
- データを削除する
- データを検索する
Webシステムでデータを扱うには
ほとんどのWebシステムでは、何かしらのデータを取り扱っています。実際、どのようなデータが考えられるでしょうか。
(A)その場限りで破棄されるデータ
- 心理テストの設問に対する回答
- 文字数カウンターで入力されたテキスト
(B)システムで使用するため、あらかじめ用意しておくデータ
- ショッピングサイトの商品情報
- 住宅情報サイトの住宅情報
- 経路検索サイトの電車情報、時刻表情報
(C)ユーザーに登録してもらうデータ
- ユーザーの氏名や住所、メールアドレスなど
- レシピサイトの投稿レシピ
- 掲示板サイトの投稿やコメント
その場で破棄される以外のデータは、どこかへ保存しておかなければなりません。保存先には、いくつかの候補があります。
(A)Webシステムが置かれているサーバ(自サーバ)の
- データベース
- ファイル
(B)クラウドなどのデータ保存サービス(外部サーバ)
(C)ユーザーのブラウザの
- クッキー
- ローカルストレージ
(最近のブラウザに備わっているデータ置き場。ブラウザを終了すると破棄される) - セッションストレージ
(最近のブラウザに備わっているデータ置き場。ブラウザを終了しても破棄されない)
ショッピングサイトの商品情報など、複数のユーザーが見るためのデータは、サーバ上に置かれます。一方「最後に開いていたメニュー」などのように、ユーザー自身しか使用しない情報で(メインブラウザの交換などにより)、消えてしまっても特に問題ないものは、クライアントであるユーザーのブラウザに保存することもあります。
データベースマネジメントシステムとは
数あるデータ置き場のうち、今回はデータベースを取り上げます。ファイルシステム(テキストファイルなどにデータを保存しておくこと)と比較してデータベースのよいところは、以下の通りです。
- データの保存、更新、削除、検索などの操作が簡単である
- データに対する権限を細かく設定できる(見るだけなのか、削除もできるのかなど)
- セキュリティが高い
ここでいう「データベース」とは、MySQLやORACLEなどの「データベースマネジメントシステム(DBMS)」のことです。DBMSはPHPなどのプログラムから「商品価格が500円以下の商品のうち、最も売れている商品を知りたい」などの命令を受け取り、実行します。命令は主にSQL(Structured Query Language)という構文を用いて行います。
リレーショナルデータベース
DBMSには複数のデータ形式がありますが、最も一般的なものは「リレーショナルデータベース」という表形式のものです。
リレーショナルデータベースでは、表のことを「テーブル」と呼びます。 図1.2の例では「レシピテーブル」「カテゴリーテーブル」「ユーザーテーブル」と3つのテーブルがあり、「レシピテーブルのカテゴリーIDとカテゴリーテーブルのカテゴリーID」、「レシピテーブルの登録者IDとユーザーテーブルのユーザーID」に、それぞれ関連(リレーション)があります。
1つのデータベースの中には複数のテーブルを用意することができますので、Webシステムで使用する場合、最低1つのデータベースを作成すれば大丈夫です。
リレーショナルデータベースには、MySQL、PostgreSQL、ORACLE、SQLiteなど様々な製品があります。基本的な仕様は同じですが、ライセンス費用の有無、パフォーマンス、特殊な機能などに差があります。少し複雑な命令を行おうとすると、それぞれ異なるSQL文になってしまうこともあります。
また、PHPには特定のDBMS向けの関数が用意されていますが、それらを使用することはあまりありません。なぜなら、特定のデータベースでのみ動くようなプログラミングをしてしまうと、あとからデータベースの切り替えがスムーズにできなくなるからです。
Webシステムを運用している途中でMySQLからPostgreSQLに交換(またはその逆)をする例は少なくありません。またパッケージ製品を納品する場合ですと、こちらの会社にはPostgreSQLで納品し、あちらの会社にはORACLEで納品するといったこともありえます。特定のデータベースを対象にしたプログラムを書いていると、データベースを変える際にそれらの箇所をすべて修正しなければなりません。これは、かなり無謀なことです。
そこで、どのDBMSでも同じように使用できるように、PHPのフレームワークやライブラリを導入します。DBMSごとの差異はこのライブラリが吸収してくれるので、使用するDBMSの種類を気にせずに開発できます。
プログラミングにおけるライブラリとは、便利な機能を他の人も使えるようにパッケージ化しているもののことです。PHP以外の言語にもライブラリはあります。PHPにはPEAR(PHP Extension and Application Repository、発音は「ペア」)というライブラリ群があり、以下のサイトで一覧を見ることができます。
Manual :: PEAR とは?
https://pear.php.net/manual/ja/about.pear.php
ライブラリを使わずに、PHPの拡張モジュールを使用する場合もよくあります。データベース関連の情報は、以下のマニュアルで確認できます。
PHP: データベース関連 - Manual
http://php.net/manual/ja/refs.database.php
今回はPEAR DBというデータベース用のライブラリを使用したいと思います。なお、このライブラリはすでに非推奨となっていますので、実際にはMDB2やPDOなど、他のライブラリやモジュールの使用をお勧めします。