ブレード仮想化の統合メリットと先進性
仮想化ビルトインのブレード
今回は、第1回で説明した仮想化目的の歩みという視点から、物理統合・論理統合の技術と、どのような運用最適化がもたらされるのかについて解説します。
はじめに、OSに依存しないPOWERブレードのハードウエア構成としての特長を述べ、続いて、各OSのメリットを生かした運用最適化の先進技術と効果を説明します。
・ブレードでも容易なスケールアップ
POWER6搭載ブレードは、2007年11月の4コアJS22を皮切りに、翌年には2コア搭載「IBM BladeCenter JS12」が投入されました。今年発表された4コア搭載JS23では、同じ筐体(きょうたい)デザインを持つアドオンSMPシャーシをねじ止め接続することで、2枚分の幅で8コア搭載JS43へと拡張できます。
この筐体デザインは、Power Systemsのモデル570で登場し、モデル560にも引き継いだビルディングブロックを段重ねすることで、1サーバーとして活用できるスケーラビリティ強化の手法をブレードにも展開したと言えます(図1参照)。
Power Systemsの仮想化技術
■POWERブレードでのPowerVMスタンダード標準搭載
Power Systemsの仮想化技術PowerVMは、単体製品の名前ではなく、仮想化技術のベースとなるPower Hypervisorファームウエア、仮想化機能を支援するソフトウエア、LPAR(Logical PARtition:論理区画)管理のハードウエア管理コンソール(以降HMC)機能を含んだ総称です。
PowerVMには規模に応じて3つのエディションがあり、POWERブレードではスタンダード・エディションまたはエンタープライズ・エディションを選択できます。スタンダード・エディションが標準機構として提供されることから、POWERブレードは「仮想化ビルトイン」の製品と言えます。
スタンダードでは主に次の3つを提供しています。
・バーチャルLAN、最小1/10物理CPUとして1/100 CPU単位で増減できるマイクロ・パーティショニング
・プロセッサ・プールによるLPAR間共有、SCSI/イーサネット/ファイバー物理アダプター資源をLPARへ仮想資源提供するバーチャルI/Oサーバー(VIOS)
・x86上Linuxアプリケーション実行環境を提供するソフトウエアLx86
LPARをPOWERブレードで利用する場合は、別筐体のHMCを利用するのではなく、VIOSが提供する簡易HMC機能のIntegrated Virtualization Manager(IVM)を運用管理に使用します。
またエンタープライズ・エディションへアップグレードすることで、ブレード環境でもライブ・パーティション・モビリティ(LPM)や、実メモリーをプール化して柔軟に使用するアクティブ・メモリー・シェアリング(AMS)が使用できます。
■IBM BladeCenterによる異なるプロセッサー・アーキテクチャの物理統合
IBM BladeCenterシャーシは、IBM System xやIBM Cell Bladeと共にPower Systemsのブレードも搭載可能で、仕様が共通化されています。省電力や省スペースを実現するシャーシBladeCenter Eをはじめ、ハイパフォーマンス用シャーシH、ストレージ同時搭載のシャーシS、通信機器用ラック搭載に向くNEBS対応準拠のシャーシTやHTと、業務に合わせて選択できます。
IBM BladeCenterでは、x86、Cell、POWERと、異なるプロセッサーを搭載したブレードをシャーシ内で物理統合することができます。運用面でのメリットとしては、ブレード管理用インターフェースからの操作性が共通化されているため、運用の容易性や費用削減といった効果が得られます。
また、Power SystemsのPOWER6搭載ブレードは、IBM i、IBM AIX、Linux(日本では RedHat社RedHat、Novell社SUSE)のOSをサポートしています。