仮想ストレージを効率よく管理する「Data ONTAP」

2009年8月26日(水)
阿部 恵史(あべ よしふみ)

仮想化ストレージの管理容易性の向上

 ストレージシステム自体に前述した仮想化機能が実装されていることも重要ですが、管理容易性の実現には物理環境を抽象化し、仮想サーバーに視点を置くことも必要です。

 そうすることで、仮想サーバーの管理者がストレージ管理者に頼ることなく、与えられた権限の範囲内で、
・仮想サーバー環境全体のバックアップ/リカバリー
・データレプリケーション
・VMのゴールドイメージのコピー作成、削除
 といったデータ管理を行えるようになり、またデータ管理プロセスの自動化によってリスクの低減も可能です。

 NetAppではこうした管理容易性実現のために、「SnapManager for Virtual Infrastructure」という、サーバー仮想環境に対応したGUIベースのデータ管理ツールを提供しています。あらかじめ定型化されたデータ管理プロセスをポリシーとして登録しておくことで、サーバー管理者自身がストレージの機能に精通していなくても、仮想サーバー環境を前提としたデータ管理タスクを実行できるようになります。

 また、前ページで紹介した「FlexClone」をVMwareによる仮想化環境で利用する場合、NetAppから無償提供されている「Rapid Cloning Utility」というツールをVMwareのvCenterと統合させて利用することができます。これによりvCenterからNetAppストレージシステム上のVMDKファイルやデータストア全体の複製を容易に実行することができます(図3-1参照)。

仮想環境を前提としたストレージリソース管理

 仮想サーバー、仮想デスクトップ環境では、VMの可搬性向上に加え、前述のようなストレージ仮想化機能によるデータストアのプロビジョニングが迅速かつ容易になったことで、従来の管理ツールや管理手法ではITインフラ個々の利用状況の把握が困難になっています。管理者が気づかないうちに誰かがVMを立ち上げ、インフラリソースを消費していることも考えられます。

 そこで、NetAppではストレージリソースの利用状況をリアルタイムに把握するだけでなく、実際にストレージリソースを利用している物理サーバー上のVMから、そのストレージシステム内のディスクに至るまでを、エンド・ツー・エンドのトポロジーで管理できる「SANscreen VM Insight」というGUIベースの管理ツールを提供しています。

 これにより、新たにVMのプロビジョニングが行われてストレージリソースが消費されると、「どのストレージのリソース」が「どのスイッチやHBAあるいはネットワークカード」を経由し、「どの物理サーバー上のどのVMで、どれだけ使われているのか」といった情報を可視化することができます(図3-2参照)。

 サーバー仮想化を中心とする現在のデータセンターにおけるITインフラの仮想化は、ITインフラ全体の投資対効果を高め、ビジネス上の競争優位性の向上を実現します。同時に、データセンターのグリーンIT化による電力消費量、発熱量削減のための有効な手法として、急速に市場に浸透してきています。

 さらには、クラウドコンピューティングの登場により、情報システムのコスト面における最大の課題である運用コストの削減と、情報システムの柔軟性や俊敏性の向上が期待されます。このクラウドコンピューティング環境の実現にあたり、その中核技術となるインフラの仮想化技術の重要性が増してきています。

 こうしたインフラ環境の構築にあたっては、ストレージ仮想化技術の組み合わせによって得られるメリットも変わってきます。その設計・導入にあたってはストレージ自体の仮想化技術のみならず、管理容易性と柔軟性の向上をサポートするツール群、仮想環境を前提としたリソースおよび資産管理ツールや、ストレージ仮想化機能と、これら管理ツールのサーバー仮想化ベンダーとの統合状況についても、併せて調査、検討を進めていくことが必要となります。

著者
阿部 恵史(あべ よしふみ)
ネットアップ株式会社
マーケティング部 部長 製造系企業の情報システム販社、外資系ITベンダーなどを経て2007年8月より現職。その間、企業の基幹系システムの設計・開発・導入、インターネットTV開発、UNIX系ハイエンドサーバー、クラスタシステムの導入コンサルティングなどを経験し、2002年よりマーケティング職に転身。現在もデータセンターインフラの仮想化・自動化およびグリッドソリューションを担当。

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