Java EEの動向と最新機能

2010年1月7日(木)
原口 知子

Java EEを越えた機能が必要な場合は?

Webアプリケーションの多様化により、Java EEを超える機能を必要とするアプリケーションも出てきました。WASではこのようなニーズに応えるために、「Feature Pack」という機構を提供しています。これはWAS上にアドオン可能なコンポーネントで、Webから無償でダウンロードできます。保守契約を交わしたユーザーにはサポートも提供されます。

Web 2.0 対応

昨今では、Google Mapに代表されるリッチなUI(User Interface)を持つWebアプリケーションが増えてきました。全画面のリフレッシュ(再描画)を必要としないスムーズな画面遷移やリッチなコンポーネントによる使いやすさが受けて、最近では企業のWebアプリケーションにおいてもAjax(Asynchronous JavaScript + XML)採用の検討が進んできています。

WASでは、Ajax開発をサポートする「Feature Pack for Web 2.0」を提供しています。同梱(どうこん)している「Dojo Toolkit」は、各種のコンポーネントを提供しクロスブラウザに対応しているため、開発生産性が向上します。このほかにも、Feedを作成する機能、既存のJava資産をAjaxクライアントに公開する機能、外部のWebサービスとマッシュアップする機能など、各種の機能を提供しています。

SOAとの統合

SOA(サービス指向アーキテクチャー)のためのプログラミング・モデルとして、「Open SOA」が策定した「SCA」(Service Component Architecture)という仕様があります。SCAは言語中立なサービス指向プログラミング・モデルであり、サービス・コンポーネントの再利用性向上と、変化に強い柔軟性/迅速性の実現を目的としています。SCAでは、各種のプロトコルやインターフェースをサポートしています。

WASでは、「Feature Pack for SCA」を追加することにより、SCAのJava実装を利用できます。SCAでは、EJB 3やSpringのコンポーネントと連携することも可能です。

音声との統合

一部の企業では、「Webアプリケーションと音声を統合したい」というニーズがあります。これを実現するプロトコルが「SIP」(Session Initiation Protocol)であり、次世代ネットワークであるNGNにおいても基本プロトコルの1つとして採用されています。

WASはV6.1から基本機能としてSIPコンテナを提供していますが、V7ではさらに機能拡張した「Feature Pack for CEA」(Communication Enabled Application)を提供しています。WebアプリケーションからSIP機器への発呼や、クライアント間でブラウザ画面を共有(共有ブラウジング)するアプリケーションを簡単に作成できるようになります。

今後の解説予定「スクリプト言語開発、Key-Valueストア、クラウド」

高速化への対応

オンライン・トレーディングやオークション・サイトの登場により、ミリ秒単位の高速なレスポンスを必要とするWebアプリケーションが増えてきました。これを実現する技術としてキー・バリュー型データストア(Key-Valueストア)が注目されています。この技術については第3回で紹介します。

クラウド対応

不況によるIT予算の縮小や既存資産の有効活用が叫ばれる中で、2009年は各種のクラウド・ソリューションが各社から提供されました。例えば、クラウド型サービスを特徴付ける、使用した分だけ支払う従量課金制により、企業はインフラ予算の削減と環境構築負荷の軽減が期待できます。

また最近では、セキュリティを考慮して、自社内にクラウドを構築する企業も増えてきました。今後のWebアプリケーションは、社内外を問わず、クラウドの仮想環境上に構築されるケースが増えてくるでしょう。クラウドについては第4回で紹介します。

今回は、エンタープライズWeb開発の動向としてJava EEを中心に解説しましたが、次回はスクリプト言語でのアジャイル開発について解説します。

日本アイ・ビー・エム株式会社
2001年よりWebSphere事業部にてWebSphere Application Serverの技術支援を担当。WebSphere製品の提案活動や構築支援の他、セミナーの講師やWeb(http://www.ibm.com/developerworks/jp/websphere/)の運営など幅広く担当している。

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