文章表現の技術は誰にでも求められるか

2008年8月6日(水)
上原 佳彦

Webライティングって、いったいどんなもの?

 そもそも、Webにおける文章表現=Webライティングとはどのようなものでしょうか。一言でいえば、Webならではの特性を意識したテキスト制作のことです。それでは、Webならではの特性とはどのようなことを指すのでしょうか?

 まず、紙と違ってWebは、ハイパーリンクを利用することができます。ほかのページや場所への移動もハイパーリンクによって簡単に実行できるので、ユーザーを目的のページに簡単に誘導できるようになります。何らかの目的を持っているWebサイトであれば、リンク用テキストとして、ターゲットユーザーを誘導するような言葉選びが求められるでしょう。

 また、ユーザーの閲覧環境によって、表示される見栄えや動きが異なってくるということも、Webならではの特性です。自分の制作環境を中心としてWebを制作すると、回線やディスプレー、使用しているブラウザなどの問題から制作者の意図と違った見え方をすることもあり、思わぬ誤解を生むことも想定されます。ファーストビューで見える範囲もユーザー環境によって変わってくるので、訴求したいメッセージは早い段階で露出することが必要です。

 そして、ほとんどの場合、情報を得るために対価を支払う必要がある紙メディアと違って、インターネット上で閲覧できる情報は基本的に無料ということも特性といえます。ユーザーはそういった金銭的な要因もあって、熟読しようとする意志が紙に比べて弱い傾向にあるようです。そのため、難しい表現は避け、気軽にサラッと読めるような文章を心がけることが必要です。

 近年では、こうした特性に加えて、SEO、ユーザビリティ、アクセシビリティといった要件も考慮したテキストの制作が求められるようになっています。

Webライティングには、ユーザー本位の優しさが必要

 紙面というスペースが限られているせいで、各部分の文字数が事前にしっかりと決められている紙メディアと違って、Webの場合は原稿を依頼するとき文字数を制限する慣例があまりありません。そのため、原稿制作者はたくさんの言葉を使って説明しようとして、文章が冗長してしまう傾向が強いようです。そして、HTML制作側に編集の意志や権限がないため、そのまま長い文章を1ページに掲載することもしばしばありました。

 しかし、実際のところ、本当にスペースを気にして、短く端的にメッセージを訴求しなければならないのは、Webの方だといえます。その理由として3つ挙げられます。

 1つにWebは、目が疲れるディスプレーを凝視しなければ欲しい情報を得られないため、ユーザーは早めに情報を取得して、すぐにページを立ち去ろうとすることが挙げられます。

 また、検索エンジンの検索結果で、似たようなWebサイトをたくさん紹介してくれますから、端的に自分の欲しいメッセージを取得できなかった場合、ユーザーはすぐにほかのWebサイトへ移動してしまうでしょう。これが理由の2つ目です。

 そして3つ目の理由として、Webサイト運営者にとって大切なメッセージの訴求は、ユーザーのスクロールという作業に依存しているということです。紙のライティングでは定石だった起承転結のプロセスを、Webでは悠長にたどっていられない、ということも大いにあるのです。

 こういった点からもわかる通り、Webのユーザーは非常にか弱く、かつ流動的です。そのためWebライティングには、文章の内容をできるだけ短くまとめたり、早めに要点を掲示したりするなど、小さな子に読み聞かせるための絵本のように、ユーザー本位の優しさが求められます。こうした気配りが、ユーザビリティへとつながっていくのです。

株式会社ミツエーリンクス
編集ディレクター。2003年にWebライターとして(株)ミツエーリンクスに入社。事例紹介ページやランディングページなど、さまざまなWebサイトのライティングに従事。現在はWebサイトのライティングをはじめ、コンテンツの企画・編集ディレクションや読みやすさを追求したテキスト改善支援まで幅広く担当。http://www.mitsue.co.jp/

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