文章表現への細かな気遣いが印象を変える
Web制作の現場では、校正がないことも珍しくない
残念なことですが、現在インターネットで閲覧できる多くのWebページにおいて、誤字脱字衍(えん)字・表記揺れがあるまま公開されています。これは、誰でも情報を発信できるというWebの特性が、よく表れている事象といえるかもしれません。すべての人が日常的に文章を作成しているわけではありませんし、人間ですから間違いが起こるのも当然といえるでしょう。問題は、その文章を公開する前に見直したかどうかということです。
Webの制作現場では、一度ライティングが終了した原稿を、見直して校正するフェーズが存在しないことも珍しくありません。これは、印刷したあとでは修正がきかない紙媒体の世界では、あり得ない話です。しかし、Webの世界ではまだまだ多くの場面でまかり通っています。これは、間違いもすぐに修正できるWebならではの特性や、Webではあまりじっくり文章を読まない傾向にあること、それにWebの制作現場において完全分業制が主流であることが影響しているのかもしれません。
以前クライアントから「文章の細かい部分に気を遣うより、ページを数多く迅速に制作する方が大切ではないか」と尋ねられたことがあります。確かにそういった考え方もありますし、Web制作現場にはとにかく量産作業が必要になる場面があることも否めません。
しかし、Webサイトは企業の顔です。制作した側や運営する側からすると何百ページのうちの1つかもしれませんが、ユーザーからすればその1ページが企業との出会いの場所となります。ちょっとした文字表現の誤りでさえも、ユーザーにとっての企業の印象に影響してくるはずです。
現状のWeb制作体制が完全分業制であるならば、校正を実施するフェーズを設置することと、「きっと誰かが直してくれるだろう」ではなく「気づいた人が指摘する」姿勢を作ることが大切です。どんな作業を担当していたとしても、「ミスは自分が必ず撲滅する」という意識がWebのクリエイターには必要といえます。
Webサイトの品質は、企業の成果物を映す鏡
文章表現の中で起きやすいミスといえば、字が誤っている「誤字」、必要な字が抜けている「脱字」、余計な字が入っている「衍(えん)字」ですが、これらは比較的見つけやすいため、制作側や運営側も発見後にすぐ修正することができます。むしろ見つけにくいうえに、「気づいても見過ごされがち」であったり、「気づいたときには手遅れ」であったりするのは、表記の揺れです。
例えば、「といあわせ」を漢字に変換したとき、「問い合わせ」「問い合せ」「問合わせ」「問合せ」と、複数の候補があり、表記も揺れやすいといえます。実際にこうした表記を意図なくバラバラに使ってしまっているWebサイトは、インターネット上で本当に数多く確認できます。しかも、ボタンやバナーなどに活用することが多い言葉であるため、取り返しがつかなくなっているケースが多いのです。
ユーザーにとって、表記揺れがそのままになっているWebサイトは読みにくく、どうしても粗暴なイメージになってしまいます。「大切な情報を、見直しもせずに公開するような会社なのか」というイメージを与えてしまうことにもなりかねません。Webサイトの品質は、企業の成果物を映す鏡です。メッセージの効果的な訴求のためには、表記を統一する細かな気遣いが必要といえるでしょう。
この表記統一は、ページを作成したあとから実施したのでは、修正作業も膨大になります。この部分はデザイン前の、Webサイト設計の段階でしっかり統一基準を取り決めておくべきです。Webデザイナーとしても、その基準の有無を制作前に必ず確認しておきたいところです。
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