文章表現への細かな気遣いが印象を変える

2008年8月27日(水)
上原 佳彦

表記が揺れたままでは、誤解を招く

 表記の揺れは、複数の解釈を生む原因にもなります。例えば、1回、2回など数字部分が可変の場合はアラビア数字、第三者、四季など数字部分が不変の場合は漢数字を使うことが通例です。この部分をゴチャゴチャにしてしまうと、事実や結果を誤認識してしまう可能性が高くなります。特に「30%OFF!」や「保証期間3年間」、「第三者機関認定」など、文章中に出てくる数字には、大切なメッセージが込められている場合が多いものです。その見え方にも気を遣わないと、訴求力が減少します。

 また、同じ意味で使用している言葉の表記が揺れていると、SEO的な観点からいっても、ややもったいないといえます。例えば「マネージメント」「マネジメント」「管理」のように表現がバラバラだと、訴求したいメッセージもバラバラな印象となってしまうでしょう。「複数のキーワードをページ内に含有できるから良いのでは?」という意見もあるかもしれませんが、複数のキーワードで誘導できたとしても、せっかく誘導したユーザーにメッセージが伝わらない方が問題だと考えます。

 音声ブラウザなどを使ってWebサイトを閲覧しているユーザーに対しても、表記のあいまいさは厄介な障壁となります。例えば、「行った」という表現を視認できるのであれば、ある程度の推測が立つかもしれません。しかし、音声ブラウザによっては、これを「いった」とも「おこなった」とも読み上げる可能性があります。どちらを読むかは、ユーザーが使用しているツールに依存するので、読み上げの誤りを避けられないケースも多々あるのですが、制作側と運営側の取り決めいかんでは、その数を減らすこともできるはずです。

 このように漢字を使うか使わないか、送りがなを送るか送らないかなど、規則は厳密にしようと思えば、いくらでもできます。しかし、一定のラインを設けなければ、規則を守らなければならない原稿作成者や校正者が迷ってしまうでしょう。そのような場合は、1つの指標として、共同通信社(http://www.kyodo.co.jp/kkservice/)の「記者ハンドブック 新聞用字用語集」を参考にすると良いでしょう。

ずれた論調のままの文章では、印象が悪くなる

 丁寧さや親近感を与える「です・ます」調、主張の強さを示す「だ・である」調は、ページのターゲットや訴求内容によって使い分けなければなりません。原稿作成が2日にわたると、こうした論調の混在が起きやすくなってしまいますが、文章の価値を左右する語尾があいまいでは、訴求内容やターゲットが一貫していない印象を与えてしまいます。

 注意して読み返すと、語り手の立場が変わってしまっていることもあります。例えば、「環境に配慮して作られた製品です」という文章は、メーカーA社に頼まれてBさんが紹介しているのであれば、この表現でOKです。しかし、メーカーA社自身が自社製品を紹介しているのであれば、この文章には矛盾が生じます。この場合、1人称は誰かということを考えれば「環境に配慮して作った製品です」とするべきといえます。

 このような話は、国語の中でも大変難解とされている、敬語のカテゴリーにも抵触する部分ですので、一概に答えを決められない事情もあります。ただ、「●●サービスをご提供いたします」というように、自分がおこなう行動に対して「ご」をつけるような表現は、いんぎん無礼に感じる人も少なくない、ということは覚えておいて損はありません。

株式会社ミツエーリンクス
編集ディレクター。2003年にWebライターとして(株)ミツエーリンクスに入社。事例紹介ページやランディングページなど、さまざまなWebサイトのライティングに従事。現在はWebサイトのライティングをはじめ、コンテンツの企画・編集ディレクションや読みやすさを追求したテキスト改善支援まで幅広く担当。http://www.mitsue.co.jp/

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