一歩先行くクリエイターに学び、人との繋りで未来は変わる!「クリエイター祭りin Tokyo」レポート

2019年6月7日(金)
miyu(天野 美雪)

2019年4月28日(日)、東京・新橋のクリーク・アンド・リバー社5F、イベントホールにて「集え、悩めるクリエイター諸君!!クリエイター祭りin Tokyo」(以下、クリエイター祭り)が開催されました。

本イベントは大阪で過去4度開催され、最高来場者数230名を超える大規模イベント。今回は、東京で初の開催となり、会場には多くの来場者が訪れました。

開始直前の様子。会場入口には、東京での開催を心待ちに来場した参加者たちの長蛇の列が

クリエイター祭りとは?

クリエイター祭りは、これまで大阪でのみ開催されてきた、関西では知名度の高いクリエイターのためのトーク・交流イベント。自分の一歩先を行くクリエイターのトークセッションやジャンル別の相談会&交流会で、悩みを解決へと導いてくれるイベントです。

ポートフォリオにリーフレットやチラシ、ぬいぐるみまで展示される名刺置き場兼作品紹介ブース

クリエイターの本音に迫る!
「あなたはどっち!? クリエイター多数決」

最初に行われたのは、「あなたはどっち?クリエイター多数決」のコーナー。スマホから投票できる多数決のアンケートです。

参加者は用意された二択の質問に回答し、自分のスマホからリアルタイムで投票。その場で、どちらが多数なのかを見ることができます。

質問内容は「Windows派かMac派か」といった簡単ものから、「単価10万円以上の案件を受注したことがあるか」「貯金は100万円以上あるか」など、知りたいけれど話しにくいものまで、クリエイターの本音に迫ります。

フリーランスなら誰でも気になるがなかなか聞けない単価の問題。意外と50:50の結果となった

多種多様!体験をシェアし、
自分の糧とする「トークセッション」

続いて、本イベントのメインでもある、現在フリーランスとして活躍しているクリエイター5名による「トークセッション」が行われました。自身の悩みを解決したその実体験やストーリーをシェアするコーナーです。

大畠 昌也さん(Webデザイナー)
ブラック企業からの脱却!勇気を出して、初めの一歩を踏み出そう

美容業界からWeb業界へ転職した大畠さん。しかし転職先はまさかのブラック企業。体力的にも精神的にも大きな負担がある中で、理想の未来を手に入れるために大畠さんが取った行動とは?

Webデザイナーの大畠 昌也さん

元美容師とだけあって、軽快なトークで聞く人を引きつける大畠さん。過去を振り返りながら、フリーランスのWebデザイナーとして独立するまでのストーリーを語りました。

話は大畠さんの子供時代まで遡ります。小学校5年生の時に父親の勤務する会社が倒産。子供心に貧しい生活を覚悟しましたが、父親の収入がなくてもこれまでと生活は変わりませんでした。

それは、美容室を経営していた母親に家族を養うだけの収入があったから。そんな母親の背を見て育ち、「会社に頼らず自分で稼げる人間になりたい」と目標を掲げます。やがて母と同じく美容師の道へ進んだ大畠さんですが、足の疲労骨折が原因となり、その道は絶たれてしまいます。

しかし、このことが人生の転機となります。勤務していた美容室のインハウスデザイナーとして働くことに。それがWeb業界での第一歩となりました。

それから一年後、大畠さんは上京して本格的にWebの勉強を開始。半年間専門学校に通った後Webデザイナーとして独立します。

一旦は独立した大畠さんですが、さらなる成長のため一度就職することに。美容師としてのトークセンスを活かし、面接を受けた会社の殆どで採用が決まりました。その中から選んだ先は、まさかのブラック企業。休みがない、終電までに帰れない、にも関わらず給料は下がる。会社に5日間寝泊まりしたことも。

就職を志し、殆どの会社で採用を勝ち取ったが、選んだ会社は…

この頃は肉体的にも精神的にも追い詰められて、正常な判断を下すことができませんでした。辞めたいけれど辞めたら迷惑がかかる。給料も入ってこない。そんな時、相談にのってくれたのが志を同じくする友人や本イベントの実行委員長の阿部さん。信頼できる人に話を聞いてもらうことで自分の気持に整理をつけました。

自分の目標は、会社に頼らなくても稼げるようになること。その目標すらも見失っていたことに気づき退職し、再びWebデザイナーとして独立しました。

大畠さんからのメッセージ

「現状を変えたい方。固定概念を捨ててください。悩んだ時は保証を求めてしまいがちですが、それは本当に安心なものですか? 目標を決めてみましょう。目標を決めると自分がどうするべきかが見えてきます。悩んだときは信頼できる人に相談してみてください。また、この後、相談会や交流会があるのでこの機会をぜひ活かしてください」

いまい かよさん(イラストレーター)
自分だけの価値が武器となる!生き抜くために必要な「自己分析」とは

インハウスデザイナーとして会社員をしていたいまいさん。会社を辞めてフリーランスになった後、予想外の大きな壁にぶつかります。いまいさんがぶつかった壁とは?

イラストレーターのいまい かよさん

いまいさんはビジネステイストに強いイラストレーター。独立した当初はデザイナーと名乗っていました。なぜ、デザイナーからイラストレーターに方向転換したのか、その経緯をプレゼンで語りました。

2年前にデザイナーとして独立したいまいさんですが、フリーになった直後、思いもかけず大きな壁に行く手を阻まれます。仕事をしたくても、仕事の取り方がわからなかったのです。会社というシステム内で働いていると最初から大口の取引先がありますが、フリーになったら仕事は自分で取りにいくもの。しかも自分はフリーランス一年目。ゲームに例えれば、自分はレベル1なのに周りには伝説の装備を纏うレベル100の猛者が大勢いる状態です。

そんな環境に放り出されたいまいさんは迷走状態に。心療内科に通い始めるほど思いつめてしまいます。どん底から抜け出すキッカケを作ってくれたのが「自分の中に基準をつくりましょう」という心療内科の先生の言葉。

自分の中に基準がない状態とは、自分の理想が定まっていない状態ともいえます。その状態から打破するために自己分析を始めました。また、自分を客観視するためにクリエイター同士で交流の持てるイベントなどにも積極的に参加。

自分の基準をつくる=自己分析。自分を客観視することで迷いも晴れる

こうして浮き彫りになったのが、自分とほかのデザイナーとのある違いです。いまいさんは、量産できるほどにイラストを書くのが大得意だったのです。自分にとって「絵を書く」ことは当たり前のこと過ぎてその価値に気づいていませんでした。

結果、「丁寧に悩みをヒアリングし、多彩な絵柄で相手が希望する絵柄を作れる」自分の強みが明確になりました。

次に自分のイラストの需要を調べてみました。すると自分のイラストの系統は、カタログや会社案内に使われることが多いとわかり、ビジネステイストに強いイラストレーターとして再スタートすることに。ターゲットを絞りメールでの営業も開始、イラストを発注したい企業さんと出会うことができました。

いまいさんからからのメッセージ

「自分が当たり前に作れるものの価値を自分だけで見つけるのは難しいものです。まずはクリエイター同士で話してみましょう。そして、自分と同じ職種の人と出会ったら作品を見せ合ってみてください。それは今日この場でもできることなので、ぜひやってみて欲しいです!」

マスノ ナツキさん(イラストレーター・色彩講師)
元接客業イラストレーターのSNSを使用した「圧倒的バリュー思考とは」

眼鏡屋で接客業を経験し、イラストレーター・色彩講師として独立したマスノさん。接客業で学んだことが後のフリーランス人生に大きな影響を与えます。マスノさんが一貫して大切にしていることとは?

イラストレーター・色彩講師のマスノ ナツキさん

2018年4月に独立し、コピックという画材を使ったイラストの制作や色彩講師としても活躍するイラストレーターのマスノさん。今回のプレゼンのテーマは、

  • 過去の接客業から得た経験と独立した今大切にしていること
  • SNSの活用法について

眼鏡屋で店舗業務全般と色彩の社内講師も担当し、仕事柄色の面白さや色の力を目の当たりにしてきました。接客では、お客様に無理やり商品を勧めることを良しとしません。新人時代は売上げが伸び悩んだそうです。そこで思い立ったのが売らない作戦。

「うちだけで決めずにほかも見てみたらどうですか」と他店を勧めたり、悩んでいるお客様には「焦って決めないほうが良いですよ」とわざと帰っていただいたり。結果、売らないということが安心や親しみに繋がり、売上個人1位を獲得するまでになりました。

時は流れて8年後、イラストレーターとして独立。フリーになったからには、営業も自分でやらなければなりません。けれど、営業よりも来てくれる人を楽しませる接客の方が得意。そこでTwitterお店化計画をスタートします。

最初にプロフィールに自分が何者でどんな価値提供をしているのかわかりやすく書きました。次にフォロワー数を少しだけ意識してみます。コピックという画材を使っているので、そういった情報を多く発信。プロフィールに飛んできてくれた人が欲しそうな情報を固定ツイートにまとめておきます。フォローボタンを押してもらいやすい動線作りを意識しました。

多くの人がフォロワー数を意識するが、マスノさんの目的は数を増やすことではない

次にリプやDMでは文章に必ず名前を入れること。送信する前に声に出して読み上げること。相手のテンポに合わせてトーンをチューニングすること。文章のトーンを合わせます。

「おもてなしと感謝の心を忘れないこと」。それが接客時代から今もマスノさんが大切にしていることです。

マスノさんからのメッセージ

「何かを得たい時は与えることからはじめてみましょう。自分が持っている知識や技術で、必ず誰かの手助けができると信じてみてください。あなたの発信は誰かの力になります。そこに、あなただからこその価値が生まれるはずです。皆さんも楽しいSNSライフを!」

Ao Uminoさん(アニメーションクリエイター)
「好き」も「仕事」も「子育て」も!女性も輝ける自由な働き方を目指すママクリエイターの話

結婚、出産・子育て、家族の転勤。CM制作会社やゲーム会社で働く中、これら人生のイベントを経験し、独立を決断したUminoさん。フリーになる前に行ったこととは?

アニメーションクリエイターのAo Uminoさん

FLASHを使ってテレビアニメ本編やエンディング、おまけパートなどのミニキャラアニメーションの制作、VチューバーやLINE LIVE公認キャラの3Dモデルのデザインも手がけるなど、幅広く活躍するUminoさん。3歳のお子さんがいるとは思えぬ程の精力的な活動に驚かされます。

けれど、独立前は子供との時間を大切にしたいママとしての気持ちと、クリエイターとしての制作意欲との葛藤に悩まされたといいます。出産後2年のブランクを経て会社に復帰したUminoさんですが、フルタイム勤務での仕事と子育ての両立は予想以上に難しいものだったのです。

そんな時、夫に転勤話が浮上します。「これは独立するタイミングなのでは」とフリーになる決断をしました。この考えが浮かんだのは、出産前に準備していたことがあったから。

かねてから「いつかテレビアニメの仕事をしてみたい」と考えていたUminoさん。そのために自信を持って出せる作品を作りたいけれど、子供ができると時間的に難しい。そこで子供が生まれる前に一本アニメを作ることを決意。妊娠中に今の自分の持てる技術を詰め込んだアニメの自主制作にチャレンジしていたのです。

こうして誕生したのが「麻比呂のゲーム理論(鬱)」です。完成後は映像イベントで発表しました。映像の中に手拍子や掛け声を促すエンターテイメント性を入れたのですが、これが見事に成功。アニメ関係者の方と名刺交換をすることもできました。その後すぐに大きな仕事があったわけではありませんが、繋がりを作ることができたのです。

独立の際に、自主制作で繋がった方にフリーになった報告をすると、なんといきなりテレビアニメ本編の話をいただくことができました。

独立してスグに大きな仕事をゲット! 自分のスキルを証明する自信作を準備していたことが繋がった結果だ

「子供や家庭が優先なのはもちろんですが、女性としてもクリエイターとしても輝いていけるように、これからも活動の幅を広げていきたい」と語るUminoさん。次なる目標はオリジナルキャラの青パンダのグッズ化だそうです。

Ao Uminoさんからのメッセージ

「私は独立を選択しましたが、それを推奨するわけではありません。メリットとデメリットを照らし合わせて後悔のない選択をして欲しいです。また、独立するのであれば、自分のスキルを証明できる自信作を用意することをお勧めします。そして、それを知ってもらうこと。SNSやブログ活動でも実を結ぶと思うので、会社所属のうちに始めてみましょう!」

スエオカ ヒロミさん(グラフィックデザイナー)
「ついに手に入れた夢、そして立ちはだかる新たな壁とは? 好きなことで仕事をしていくために、必要なのは〇〇だった!」

アートディレクター・グラフィックデザイナーとして2017年に独立。現在はフリーランスとして活躍するスエオカさん。「好きを仕事にする」ことを実現した先には大きな壁がありました。その立ちはだかる壁とは?

グラフィックデザイナーのスエオカ ヒロミさん

アニメのロゴやポスター・パッケージを中心に、グッズ広告のデザインなど幅広く手がけるスエオカさん。そんな彼女が好きなものは、ズバリ「アニメ」。まさに好きを仕事にしているわけですが、夢の仕事を手に入れるまでの紆余曲折を語りました。

フリーになるまで4社に勤めましたが、会社員時代には「デザイナーをやめよう」と考える程に落ち込む出来事がありました。

それは、当時の上司からの「デザイナー向いてないよ」という言葉。けれど、デザイン以外にやりたいと思える仕事はありません。そこで「自分がやりたいこと、やれることは何か」を改めて考えてみました。デザインだけでもさまざまな分野があります。デザイン業界について調べるうちにアニメのデザインに出会い、「こんな道もあったのか」と輝いて見えたといいます。

上司の言葉をきっかけに、改めてやりたいこと、やれることは何かを考えたスエオカさん

自分のやりたいこと、好きなこと、できること。その3つが結びついたときに、進みたい道が明確になりました。その後、アニメデザインの仕事ができる会社に再就職。この会社では上司に恵まれ、多くの作品に関わることもできました。

仕事が充実してくると、今度は「自分はどこまで成長できるか」という好奇心が芽生え、独立を考えるように。師である上司と社長も「クリエイターは挑戦すべき」と背中を押してくれました。

そして、環境や人に恵まれたことに感謝の絶えないフリーランス人生が始まります。ところが、独立して3ヶ月、フリーだからこその壁にぶつかります。溢れ出した仕事、経費の管理、サーバートラブル。しばらくは寝る時間も削って仕事をしました。けれど、ひとりでできることには限界があります。外注さんや一時的なアシスタントさんに一部の業務をお任せすることに。思い切って人に頼ることも大切だと痛感しました。

スエオカさんからのメッセージ

「好きなことで仕事をしたいと思ったら、やりたいこと、好きなこと、できることの3つが結びついた時がひとつのスタートになると思います。スタートに立ったなら何が求められているのか、自分には何ができるのかに向き合ってみてください。目指すべき方向性が見えてくると思います!」

悩みを解決するヒントを見つけよう!
「ジャンル別交流会&相談会」

トークセッションの終了後には、ジャンル別交流会&相談会が行われました。キャリアや転職、就職について相談できるスペースや、参加者と交流できるスペースがあります。ちょっとした情報と人との繋がりで将来は大きく変わります。自分の悩みを解決するヒントがきっと見つかったことでしょう。

ジャンル別交流会&相談会では、どのブースでも時間が足りなくなるほどの盛り上がりを見せる

クリエイター仲間が見つかる!?「カフェ交流会」

イベントの最後に開催されたのは、参加者同士で自由に交流できるカフェ交流会。100名を超える大勢のクリエイターと交流できる機会はそうはありません。参加者誰もが積極的に名刺交換や意見交換し、会話の声も聞こえないのでは…と思えるほど熱く話し合っている姿が印象的でした。

フリーランスの多くが孤独感に悩むとか。カフェ交流会は繋がりを作る大きなチャンスだ

カフェ交流会に参加するにはイベント参加費とは別に有料ですが、人脈作りや同じ目標を持った仲間づくりの格好のチャンスです。これからのクリエイター人生に大きく関わる人物との出会いが待っているかもしれません。

* * *

今回はトークセッションの様子を中心にお届けしましたが、実行委員長による挨拶やスポンサートークコーナー「クリエイティブ業界で好きを仕事にする方法」、主催からの挨拶。どのお話もその全てがためになるものでした。

Egaku_Zonoさん(@Zono_Moto)による、イベントの全貌がわかる「グラフィックレコーディング」も実施!

およそ6時間半にもおよぶ長丁場のイベントでしたが、全てが学びに繋がる盛りだくさんの内容で、交流会終了時まで会場は熱気に包まれていました。これからも大阪や東京で開催される予定の本イベント。悩めるクリエイターにこそ、ぜひ参加して欲しいと思えるイベントでした。

最後は恒例の参加者全員写真で締め。クリエイター祭りの仕掛人、樫本祐輝さんも大阪から駆け付けた(2列目一番左)

文筆業・取材記者
東京の東側を拠点に置くフォトライター。雑誌やムック、書籍、新聞などの紙媒体を中心に執筆。雑誌やWebにて連載を持つ。エンターテインメントの世界やサブカルチャー。楽しいことと美味しいものがとにかく好き。

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