IT運用に求められる統合フレームワーク
オーケストレーションとモニタリング
オーケストレーション
(b)オーケストレーションとは、仮想マシンのイメージとシステム・リソースを結合し、仮想マシンやアプリケーションの設定までを統合的に行うための仕組みである。
オーケストレーションまでを含めた汎用的な仕組み立ては、まだ多くない。こうしたフレームワークには、例えば、米Eucalyptus Systemsが開発してオープン・ソースとして配布している「Eucalyptus」(Elastic Utility Computing Architecture Linking Your Programs To Useful Systems)がある。
Eucalyptusは、米Amazon.comのクラウド・サービスで仮想サーバーを提供するEC2とAPIレベルで互換性がある。Amazon EC2と同一の手順で仮想サーバー環境を設定できる。ここで“自動的”なオーケストレーションが機能している。
モニタリング
(c)モニタリングは、障害などのシステム・イベントから性能値まで、さまざまなデバイスから各種の情報を収集する仕組みである。
パブリック・クラウドにおけるSLA(サービス・レベル契約)の診断にはログから稼働時間を算出する必要があるため、モニタリングは重要である。また、プライベート・クラウドの環境においては、コンプライアンス(法令順守)用のレポート生成用途などでログが重要になる。
サーバー仮想化環境では、イベント同士を関連付ける機能も重要である。なぜなら、単一障害が発生したときに出力される多数のイベント・ログの中から根本原因を“自動的”に抽出する必要があるからである。図3-1は、イベント同士を関連付けたイメージである。
ワークロード管理に適したFC
ワークロード管理
(d)ワークロード管理は、システム・リソースにかかっている負荷をモニタリングしてシステムの性能を維持/管理するための仕組みである。
性能のモニタリングは、プライベート・クラウド環境では特に重要である。なぜなら基幹システムにおいては、オンライン性能だけではなくバッチ性能も重要だからだ。例えば、夜間にバッチ処理でデータベースに情報を登録する場合、あらかじめ定めた時間内にバッチ処理が終わるかどうかは重要な問題である。
メインフレーム環境では、IRD(Intelligent Resource Director)によってMIPS値やメモリ、I/Oリソースなどを動的に変更できたため、バッチ処理が終わることを前提にした処理フローを組めた。一方、オープンシステムのサーバー仮想化環境は、まだメインフレームには追いつけていない。
しかし、筆者が所属しているブロケードコミュニケーションズシステムズ(米Brocade Communications Systemsの日本法人、以下Brocade)では、オープンシステムにおけるワークロード管理の問題に対し、一定の解を見いだして提供している。
具体的には、Brocadeが扱っているFibre Channel(FC)製品の環境では、FC特有のフロー制御のおかげでI/Oが遅い理由を判別できる。デバイスの問題なのか、リンク上の輻輳(ふくそう)なのか、リンク自体の遅延が問題なのかが分かる。さらに、ブロケードのHBA(ホスト・バス・アダプタ)を使うことで、キューの長さも管理できる。
サーバー仮想化ソフトの管理コンソールに組み込むプラグインも提供している。このアプローチには、管理者にベンダー固有な管理環境を強制しないという意味がある。現在のところWindowsのSystem Center用だけだが、VMware用のプラグインも開発中である。
第3回では、Brocadeの次世代データセンター・アーキテクチャーについて解説する。