ファイル・サーバーの課題を解決する
ファイル圧縮アプライアンスで既存環境を有効活用
(3)ファイル圧縮アプライアンスを用いて、既存サーバーの容量を圧縮して活用する
すでにアプライアンスのファイル・サーバーを利用しており、日々増加するデータ量に対処したいというケースでは、ディスク追加による方法のほかに、既存のファイル・データそのものを圧縮する方法が有効です。
ファイル圧縮アプライアンスは、ユーザーとファイル・サーバーの間に入り、ユーザーがファイル・サーバーに対して書き込み/読み出しを行うタイミングでファイル・データを圧縮/伸長する装置です。これにより、既存ファイル・サーバーで利用可能な容量を増やすことができます。
米Storwize(ストアワイズ)の「STNシリーズ」は、図3-1のように、プライマリのファイル・サーバーの前段に設置してデータを圧縮する製品です。
STNシリーズによる実際の圧縮率は、データベースやソフトウエア開発用ファイルで80%、電子メールやCADファイルで65%、動画ファイルで55%程度であり、特にCADなど設計系のファイルに対して高い圧縮率が認められます。逆に、JPEGやZIPなどの、すでに圧縮されているファイルに対しては、あまり効果は期待できません。ファイル圧縮アプライアンスを検討する際には、あらかじめユーザーの実際の環境で圧縮率を測定する必要があります。
既存のファイル・サーバーでDR(災害対策)を実施している場合も、STNシリーズは有効です。圧縮済みのデータをファイル・サーバー間で転送することになるため、バックアップ先のファイルサーバー容量と、データ転送に必要なWAN回線コストを同時に削減できます。
ファイル・サーバーのバックアップ
ここまで、ファイル・サーバーを統合する際の要件と、それに対応する3つのアプライアンスを用いた解決策を解説してきました。以下では、ファイル・サーバーの運用にとって大切な要件であるデータ・バックアップの需要を満たすアプライアンスについて、最新動向を紹介します。
(4)ファイル・サーバーのバックアップでは、多くのファイル・サーバー・アプライアンスがディスク・ツー・ディスクのバックアップ技術を搭載しています。テープなどの他媒体を用いず、ディスクからディスクへデータをコピー(複製)する方法です。この方法には、以下のメリットがあります。
- 本番系に障害があった場合に、すぐにサービス再開できる
- 送信データは差分のみで済むため、WAN回線を経由したDR(災害対策)も可能
しかし、この方法ではシステム(ファイル・サーバー)を完全に2重化する必要があるため、多くのコストがかかります。そこで、復旧速度よりもコスト低減を優先したい場合に有効な手法として、バックアップ・データそのものを圧縮するやり方があります。ここで特に有効な技術が重複排除(Dedupulication)です。
ディスク・ベースのバックアップ・アプライアンスは、重複排除の技術を採用しています。重複排除とは、一度格納したデータと同じデータがあると、そのデータブロックのみを除外して保存する技術です。多くのデータが重複する世代バックアップにおいては、10倍、20倍以上のデータ圧縮効果が期待できます。
重複排除技術を搭載するアプライアンスの例として、米EMCの「DataDomain DDシリーズ」があります。データの増加やシステム統合などによって日々増え続けるバックアップ・データに対応するため、採用例が増えています。
今回紹介したアプライアンスを使うことで、ファイル・サーバー統合によって発生する各種の要件を満たすことができます。現在の資産や今後のデータ増加量などを考慮して最新技術を導入することで、システム拡大や運用上の課題に対処するだけでなく、コスト削減の実現も可能となります。
次回(最終回)は、セキュリティ・アプライアンスについて紹介します。