vSAN最新情報

2017年6月23日(金)
山本 祥正
連載3回目となる今回は、進化を続けるvSANの最新情報をご紹介する。

vSAN最新情報

前回は「vSAN のアーキテクチャーと機能概要」と題し、vSANのアーキテクチャーと一部の機能概要を紹介しました。今回は、目まぐるしく進化を続けるvSANの最新情報をご紹介します。

VMware vSANの変遷

最新情報を見ていく前に、vSANの進化の過程を見ていきましょう。最初のvSANとなるバージョン5.5は、2014年3月にリリースされました。今から見るとバージョン5.5は、vSANの基本的な機能を実装したものでした。しかし、基本的な機能でありながら、ポリシーベースのマネージメントやハイパーバイザー層でのストレージ仮想化機能の提供はとても特徴的な機能であり、当時から注目を浴びていました。

それから1年経過した2015年3月に、次バージョンとなるバージョン6.0がリリースされます。その後2015年8月にバージョン6.1、2016年2月にバージョン6.2、2016年11月にバージョン6.5、そして2017年4月に最新のバージョン6.6がリリースされました(2017年5月27日現在)。2014年3月にリリースされて以来、3年と1ヶ月で5回のバージョンアップを経て、大小合わせて40以上の機能が追加されました。この背景には、前回説明したハイパーコンバージドが受け入れられてきていることもあるでしょう。

vSANの各バージョンで追加された機能

vSANの各バージョンで追加された機能

vSANバージョン6.6の概要

続いて、バージョン6.6の概要を見ていきましょう。

今回のバージョン6.6は「データセンターのモダナイゼーション」をコンセプトとし、以下の3つを実現しようとしています。

リスクなしでの環境の進化

ネイティブセキュリティや柔軟性に富んだ管理

コスト最適化

管理工数の大幅削減、プロアクティブな分析

次世代への拡張

最新のハードウェアやアプリのサポート、さらなる性能の最適化

上記の実現に向けて、バージョン6.6は今までにないほど機能が追加されました。バージョン6.6までのバージョンアップは、6~7点程度の機能追加でしたが、今回はなんと以下に示した23点もの機能が追加されました。

  • 保存データ暗号化
  • 組み込みのコンプライアンス
  • 障害発生中のドライブからプロアクティブにデータを退避
  • vCenter Serverから独立した耐障害性管理
  • スマートで効率的な再構築による迅速なリカバリ
  • 認定ファイル サービスとデータ保護
  • ローカルの障害から保護されたストレッチ クラスタ
  • vRealize Operationsとのネイティブ連携
  • vSAN SDKとPowerCLIによる自動化の拡大
  • ユニキャストを使ったシンプルなネットワーク接続
  • 実用的な情報を用いてパフォーマンスを最適化
  • リアルタイムの通知と推奨のサポート
  • ハードウェア ライフサイクルの1クリック管理
  • 健全性チェック機能の拡張
  • クリックで修正可能なガイド付きインストール
  • vCenter Serverのシンプルなインストールとアップ グレード
  • 順次書き込みのパフォーマンスを30%高速化
  • フラッシュ向けに最適化されたチェックサムと重複排除
  • さまざまな新規ワークロード
  • Photon 1.1のサポート
  • 最新フラッシュテクノロジー向けに最適化
  • 次世代サーバプラットフォームの選択肢
  • キャッシング層の選択肢の拡大

またバージョン6.6では、ライセンスの内容にも変更があります。今回追加されたデータ暗号化や、ローカルの障害について強化されたストレッチクラスタといった機能を利用できるのは、Enterprise Editionとなります。

また、今までEnterprise Editionのみで利用可能であったQoSについては、vSANのすべてのエディション(Standard/Advanced/Enterprise)で利用可能となりました。

vSANのエディションごとの機能比較

vSANのエディションごとの機能比較

vSANバージョン6.6の特徴的な新機能

それでは、vSANバージョン6.6の新機能から特徴的な以下の4点について、機能を見ていきましょう。

  • 保存データ暗号化
  • ユニキャストを使ったシンプルなネットワーク接続
  • vCenter Serverから独立した耐障害性管理
  • リアル タイムの通知と推奨のサポート

保存データ暗号化

保存データの暗号化は、vSANデータストアレベルでデータストア上のすべてのvSANオブジェクトを暗号化する機能で、不正なアクセスからデータを保護することができます。

この機能はハイブリッドとオールフラッシュの両方の構成で利用でき、さらに重複排除/圧縮を含むすべてのvSAN機能と併用することが可能です。なお本機能の利用には、KMSサーバ(Key Management Server)が必要となります。鍵管理に関しては、KMIP(Key Management Interoperability Protocol)に対応しています。原稿執筆時点(2017/05/29)で動作が確認されている鍵管理ソリューションは、以下のとおりです。

  • HyTrust®
  • Gemalto®
  • Thales e-Security®
  • CloudLink®
  • Vormetric®
保存データ暗号化

保存データ暗号化

ユニキャストを使ったシンプルなネットワーク接続

vSANバージョン6.5まではマルチキャストを利用していましたが、バージョン6.6からはユニキャストとなり、よりシンプルな構成となります。マルチキャストを利用していた時は、IGMP SnoopingやIGMP Querierの設定などで複雑化していましたが、ユニキャストを用いることで、そういった設定も不要となります。また、ユニキャスト化に伴い、CPU使用率と通信が効率化されます。

マルチキャストからユニキャストへ

マルチキャストからユニキャストへ

vCenter Server から独立した耐障害性管理

vSANの管理は、vCenter Serverから実施します。そのためvCenter Server障害時は管理ができず、vCenter ServerをvSAN上で稼働させる場合は障害時の運用について注意する必要がありました。しかしバージョン6.6からは、ESXiのHostClientからvSANのステータスの確認と設定変更が可能となり、障害時の管理性が向上しました。これは、ユーザーにとっても待望の機能追加ではないでしょうか。

障害時の管理性向上

障害時の管理性向上

ESXiのHostClientからvSANの設定が可能に

ESXiのHostClientからvSANの設定が可能に

リアル タイムの通知と推奨のサポート

バージョン6.6から新たにvSAN Cloud Analyticsという機能が追加され、リアルタイムの通知と推奨のサポートが可能となります。「健全性チェック」機能を利用時にVMware社の持つ情報と照合し、推奨設定や既知の不具合に関するナレッジを通知されます。このようにクラウドに蓄積されたデータをもとにナレッジを利用することで、ストレージ管理の負荷を軽減させることが可能となります。

vSAN Cloud Analytics

vSAN Cloud Analytics

富士ソフト株式会社 エグゼクティブフェロー
富士ソフト株式会社でICTプラットフォームの提案から導入までを担当。同社の上級スペシャリストで「技術に裏付けされた提案・設計」により企業にとって最適なICTプラットフォームの提供を行っている。最近ではVMware社のNSX、VSAN、Horizon、AirWatchやその他OpenStackやコンテナ技術に注力している。VMwareのアワードであるvExpertを5年連続受賞し、導入経験・知見を活かしセミナーや記事寄稿なども行っている。vExpertを2012年から5年連続受賞。最近ではNSX スペシャリストtop100(vExpert NSX)に選ばれる。

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