iPhoneアプリとデータベースサーバの連携
iPhoneでデータをダウンロード
iPhoneのプログラムについては、今回と次回に分けて解説をしましょう。残念ながら、スクラッチから作る手順を解説すると多大なページを必要としますので、 XcodeやInterface Builderについての使い方については説明しません。たくさんの解説書がありますので、そちらを参考にしてください。
本稿では、ダウンロードしたサンプルのプロジェクトが存在する前提で解説をします。プロジェクトは、iPhone SDK 3.2で作成をしていますが、 プログラム自体はもっと古いSDKでも稼働できると思います。
プロジェクトの中にあるClassesグループに、RentalDB.m/RentalDB.hというソースのセットで、RentalDBクラスの定義が行われています。 このクラスに、サーバーからデータを取って来たり、あるいはデータをサーバーに送るという処理をまとめてあります。
サーバーからのデータは原則として、1レコードがフィールド名をキーとしたNSDictionaryで表現し、 複数のレコードがある場合はNSDictionaryを要素とするNSArrayで管理するとします。NSDictionaryは古くからあるObjective-C特有のやり方で、 最近のAPI解説ではNSDictionaryよりもクラス定義を使う方がいいような書き方をしている場合もありますが、サンプルは伝統的な方法で行います。
なお、サーバーのplantrental.phpファイルとplantimegesフォルダへのURLは、RentalDB.mの最初のところでSERVER_URLとIMAGE_ROOTというマクロで定義をしています。 デフォルトでは筆者のサーバーで運用されてるURLで外部からのアクセスも可能なはずです。
ただ、何人かが適当に予約を入れたりすると、おそらくデータがむちゃくちゃな状態になっていると思うので、 可能な限りご自分のサーバーでテスト運用してください。また、このURLでの運用は永続的には行わないかもしれませんのでそのつもりでいてください。
通信処理とXMLパースの実現
RentalDBは、PHP側のAPIごとにメソッドが用意されています。一方、その結果はGUI処理側から呼び出されるのですが、 通信そのものを非同期で行うため、通信してデータが得られた場合に呼び出し元への通知が必要です。その通知時に、 データベースから取り出した結果を得られるようにします。
通知はメソッド呼び出しで行いますが、RentalDBに対するメソッド呼び出し時に、(CallOnFinish*)型の引数で、 ダウンロード終了後の呼び出し先のオブジェクトを指定しています。このCallOnFinishは、CallOnFinish.hに定義したプロトコルです。 「プロトコル」 とは本体のないクラス定義で、Javaで言えばinterfaceで定義するクラスです。
つまり、このプロトコルで「呼び出し方法」という部分だけを定義しているということです。 従来はこうした仕組みはクラスをワイルドカード的に参照するid型を利用していましたが、Javaっぽくプロトコルを使ってみました。
いずれの通信処理も、RentalDBクラスのstartDownload:メソッドから始めます。通信処理を行うクラスはNSURLConnectionです。 このクラスのインスタンスを初期化すると、非同期に通信が始まります。通信中はフレームワークから初期化時に指定したオブジェクトへメソッド呼び出しが行われます。
ここでは現在のオブジェクトを指定していますので、呼び出されるメソッドはRentalDB.mに記述します。 データを受信したときに呼び出される connection:didReceiveData:、エラーが発生したときのconnection:DidFailWithError、 通信終了時のconnectionDidFinishLoading:を組み込んでいます。
正しく通信が行われたとき、そのデータをユーザーデフォルトに記録します。 NSUserDefaultsクラスのシングルトンインスタンスにメソッドを送れば、デフォルトの読み出しや書き出しは簡単に行えます。 通信エラーがあったときには、逆にデフォルトから読み出します。
この辺りの処理はあまり細かく記述していませんので実用システムではもう少しさまざまなエラーの可能性を考慮すべきでしょう。 なお、Webで認証をする場合の組み込み方法は、「URL Loading System Programming Guide」というドキュメントを参照してください。
RentalDB.mの最後の方は、受信したXMLの解析部分です。iPhone OSは標準ではDOMモデルの処理クラスはありません。 ライブラリとして入手できるものもありますが、ここではデータベースから得られたフラットなXMLだけしか扱いませんので、 iPhone OSに含まれているイベントドリブン(SAXモデル)のパーサで処理を組み立てています。