連載 [第4回] :
  ChefConf 2017レポート

ChefConf 2017、GE Digitalにみるインフラ自動化の効果とは?

2017年7月4日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
ChefConf 2017で行われたGEによるインフラストラクチャーとアプリケーションの自動化のセッションを紹介。Habitatを使うことで、効率化が可能になったという。

Chefが開催した年次カンファレンスであるChefConf 2017で行われたGE Digitalのブレークアウトセッションでは、Chefによるインフラストラクチャーの自動化とChefが開発する新しいアプリケーション自動化のツール、Habitatを使った自動化における効果について、解説が行われた。今回はそのセッションの概略と、ChefConf 2017に併設されたパートナーブースの様子を紹介する。

すべての企業は「テクノロジーカンパニー」へ

GE Digitalのセッションでは最初に、「すべての企業が『テクノロジーカンパニーになる』」というGEのCEOのコメントが紹介された。GEが持つ様々なビジネスのうち、航空機のエンジン事業や列車製造、ヘルスケアなどを挙げて、すべてがテクノロジー、特にソフトウェアによって変革しつつあると語り、ソフトウェアとクラウドによってGE自身が競争力のあるテクノロジーカンパニーになっていると解説した。

そしてアプリケーションの開発に話を移して、「ステートレスなアプリケーションはDockerやKubernetes、MESOSなど様々なテクノロジーによって、より簡単に素早く開発ができるようになった。しかしステートフルなアプリケーションも企業にはたくさん存在する。そのようなアプリケーションを稼働させる際に、構成管理や運用、さらにリカバリーなどについて自動化を行うためにChefを使っていたが、構成が巨大になってくると管理のための仕組みが複雑になっていった。そこにChefのCTOであるAdamから新しいアプリケーション管理ツールの話を聞いて試してみることになった」と説明した。GE Digital、より具体的にはGEが展開するPredixというクラウドサービスの中で利用されるアプリケーションについて、検証を行っているという。そして新しいアプリケーションランタイムのフレームワークをBuffe(バッフェ)と名付けたと説明し、「なぜならBuffeの中にはChefがいて、レシピやナイフを使っているから(Chef、Knife、RecipeというChefが開発しているツールをすべて採用しているので)」というジョークで会場が爆笑するという一面もあった。

HabitatをChefと併用するメリットを紹介

またこのプレゼンテーションでは、Chefだけで構成管理を行った場合と、Chefに加えてHabitatを利用した場合の比較も行われた。

ChefとChef+Habitatによるランタイムの比較

ChefとChef+Habitatによるランタイムの比較

ここではChefとHabitatを組み合わせてELK Stack(Elasticsearch+Logstash+Kibana)というオープンソースソフトウェアを組み合わせたクラスターを実装するシステムを例にとって、ポイントを分けて解説を行った。

検証に使われたELK StackとChef+Habitatのシステム例

検証に使われたELK StackとChef+Habitatのシステム例

最初に挙げたポイントは、ELKを実装する際に必要となるコード量の違いだ。Chefのみの環境では、ELK Stackを導入するためにJavaなどのダウンロードやインストールなどを、依存関係に従って順番を間違えることなく行わなければならないのに対して、Habitatでは非常にシンプルに記述できるという例だ。

Habitatによる記述がシンプルであるという例

Habitatによる記述がシンプルであるという例

さらにELKを導入した後に、それぞれのソフトウェアの設定(IPアドレスなど)を行う必要があるが、Habitatの場合はスーパーバイザーがサービスディスカバリーを通じて行うことで構成管理が容易になると説明。Habitatがサービスディスカバリーを行うことで、稼働までの時間が短縮できたという。

クラスターの起動が10分から7分に短縮

クラスターの起動が10分から7分に短縮

またシステムに障害が発生した場合のシステムの切り替えも、Chefだけで行う場合はモジュールのダウンロードやインストールなどをゼロから繰り返すことになるが、Habitatであれば、すでに保存されているパッケージから素早く行うことができるという大規模クラウドを運営している企業ならではのポイントが紹介された。

そして3つ目のポイントとして、サービスを定義する際のコードの複雑さが解消されたという点を説明した。

また新しいアプリケーションのバージョンができた場合にも、一度にすべてを止めて更新を行うのではなく、Rolling Updateができる仕組みをHabitatが備えていることを高く評価しているという。

このように、アプリケーションが必要とするライブラリなどの依存関係をシンプルにできること、複数のスーパーバイザーがマスタースレーブの関係ではなく、シンプルなリーダー選出アルゴリズムを使って分散処理できることの利点を充分に活用したユースケースの解説となった。

パートナーのブースを紹介

最後に今回のカンファレンスに参加していたパートナーのブースや会場の雰囲気を紹介しよう。

休憩中はこんな感じ。賑わっている

休憩中はこんな感じ。賑わっている

色々なところに椅子とテーブル、それに電源が用意されている

色々なところに椅子とテーブル、それに電源が用意されている

レジストレーションデスクの後ろにはChefの顧客の名前が

レジストレーションデスクの後ろにはChefの顧客の名前が

なんとディズニーもブースを出していたが目的は求人だそうだ

なんとディズニーもブースを出していたが目的は求人だそうだ

Chefのブースはいつも人で賑わっていた。

Chefのブースはいつも人で賑わっていた。

JFrogも大人気

JFrogも大人気

縦長モニターでお馴染みのDataDogのクールなブース

縦長モニターでお馴染みのDataDogのクールなブース

キーノートにも登場したCapitalOneのブースも求人目的だろうか

キーノートにも登場したCapitalOneのブースも求人目的だろうか

会場の一角には、こんな遊びのスペースも用意されていた

会場の一角には、こんな遊びのスペースも用意されていた

グッズショップのようなDNSimpleのブース

グッズショップのようなDNSimpleのブース

2008年創業のベンチャーであるChefのカンファレンスは、盛り上がりのあるキーノートとホスピタリティにあふれたムード、そしてハンズオントレーニングや深い内容のブレークアウトセッションと、歴史の浅いベンチャーが主催したとは思えないような有意義なイベントであった。来年には、日本からの多くの事例発表が行われることを期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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