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de:codeに黒船襲来!? 日本とMicrosoftはDevOpsでどう変わるか

2016年7月4日(月)
高橋 正和

5月に開催された日本マイクロソフトのエンジニア向けイベント「de:code 2016」において、DevOpsに関するパネルディスカッション「黒船襲来! 世界DevOpsトップ企業×マイクロソフトによるトークバトルセッション」が開かれた。

HashiCorp社のMitchell Hashimoto氏、Chef社のJames Casey氏、Mesosphere社のAaron Williams氏、Microsoft社のSam Guckenheimer氏、日本マイクロソフトのDevOpsエバンジェリストの牛尾剛氏という豪華メンバーが揃い、会場が早々と満席になる人気セッションとなった。モデレーターはクリエーションライン株式会社の鈴木逸平氏。

左から、牛尾剛氏(日本マイクロソフト)、Sam Guckenheimer氏(Microsoft)、Aaron Williams氏(Mesosphere)、James Casey氏(Chef)、Mitchell Hashimoto氏(HashiCorp)、モデレータの鈴木逸平氏(クリエーションライン)
左から、牛尾剛氏(日本マイクロソフト)、Sam Guckenheimer氏(Microsoft)、Aaron Williams氏(Mesosphere)、James Casey氏(Chef)、Mitchell Hashimoto氏(HashiCorp)、モデレータの鈴木逸平氏(クリエーションライン)

Hashicorp、Mesophere、Chef、Microsoftからパネリストが集結

まずは改めて各自とその企業の自己紹介から。

Sam Guckenheimer氏はMicrosoftのPartner PM ManagerとしてDevOpsを展開している。DevOps歴は約6年で、実際の取り組みは約3年だという。

Aaron Williams氏はMesosphereで「DC/OS」を開発している。Williams氏は、ITインフラがメインフレームから物理サーバー、仮想化へと進んだことで複雑になった歴史を挙げ、それらを単一のハイパースケールインフラとして管理するのがDC/OSだと説明した。現在、PayPalやNetflix、Verizonなどが導入している。「DC/OSを動かすのが目的ではなく、ITインフラを効率化するのが目的。Mesosphereはそのお手伝いをしていきたい」と語った。

Mesosphereの考えるインフラの変化
Mesosphereの考えるインフラの変化

James Casey氏は、Chef社のVP of Partner Engineering。「DevOpsでは、ほぼ最初から関わっている会社」として、AmazonやEtsyなどのイノベーターとともに歩み、中心となるプラクティスを提案してきたと語った。DevOpsは、開発プロセスだけではなくクラウドやオートメーション、カルチャーまで“いかに早くしていくか”というためのものだとし、Chefはインフラやポリシー、プロセスなどをコード化して、コラボレーションにも役立てるものだと説明した。

Chefの「Infrastructure as Code」
Chefの「Infrastructure as Code」

Michell Hahimoto氏はHashicorpの創設者でCEO。Hashicorpの開発しているVagrantやPacker、Terraform、Nomad、Consulなどは、Write、Package、Deploy、Schedule、Monitorといったフェーズごとに作られたソフトウェアを組み合わせるようになっており、必要なものだけを選んで使えるという。会社のミッションを「Infrastructure for software」と定め、「水道から水が出るのと同じようにインフラを使えるようなソフトウェアを開発する」と語った。

Hashicorpの製品群
Hashicorpの製品群

変わらなかった日本に黒船がやってきた!?

自己紹介の後、セッションの狙いについて日本マイクロソフトの牛尾氏が説明した。

牛尾氏はソフトウェア開発プロジェクトでのアジャイルの普及率が米国で95%なのに対し日本では31%であるという数字や、アジャイル導入の問題ごとに該当度を国別に比べると日本がトップの項目が圧倒的に多いという調査結果を示した。

ここで牛尾氏がもちだしたのが、江戸時代の日本だ。西洋で産業革命が進む中で、日本では鎖国により昔のままのライフスタイルを続けていた。牛尾氏は、その様子をメインフレーム時代の文化にたとえ、侍のチョンマゲを「ウォーターフォール」に、刀を「Excel方眼紙」に、和服を「スーツ」にたとえて、文化の変わらない様子を皮肉った。「同じときにアメリカでは、DevOpsやマイクロサービス、ギーク文化が広がっている」(牛尾氏)。

一方で牛尾氏は「変わろうとしているところもある」として、楽天やKDDI、NECソリューションイノベータの事例を挙げ、「日本は変わろうとしている」と語った。

「約200年前の幕末に黒船がやってきて、日本人はこのままでは勝てないと気付いた。そして外国の新しいものを学んで、どんどん成長した」と牛尾氏は再び江戸時代のたとえに戻り、「今日ここに4人の黒船が来た。新しいものを学んでほしい」と、セッションタイトルに込めた意図を説明した。

鎖国時代のような「ウォーターフォール」「Excel方眼紙」の文化
鎖国時代のような「ウォーターフォール」「Excel方眼紙」の文化
一方アメリカでは、DevOpsやマイクロサービス、ギーク文化が広がる
一方アメリカでは、DevOpsやマイクロサービス、ギーク文化が広がる

“黒船”により全社にDevOpsを普及させたTarget社

モデレーターの鈴木氏が提示した最初のお題は、「日本はまだDevOpsの最初のフェーズだが、一般的なエンタープライズ企業はDevOpsについて何に気をつければいいか、どういう準備をすればいいか」だった。

パネリストたちからは、「DevOpsは導入して終わりではない」「カルチャーを変える必要がある」「組織変革が必要であり、難しい」「かけ声だけでは変わらない」「経験を積んだ人のガイダンスを受けるのがよい」といった意見が語られた。

ここで挙げられたのが、小売チェーンのTarget社の事例だ。組織横断で「DevOps Dojo(DevOps道場)」を作り、実際のプロジェクトを30日間Dojoに持ち込み、コーチも招いてDevOpsの導入を学んだ。その成果を現場に持ち帰ることで、全社にDevOpsを普及させたという。

MicrosoftのGuckenheimer氏は「Target社は3年前にクレジットカード情報漏洩でCEOやCIOが更迭されるという事件があった。狙われているという“黒船”がトリガーになって抜本的な変革ができた」と分析した。

またMesosphere社のWilliams氏は、「組織と同時に個人のレベルでも、外のエコシステムを構築することが大切。このようなイベントを通じて、個人レベルで社外に積極的に出ていったほうがいい」と語った。

DevOps導入は「まずは体験する」

次のお題は「どのような方法でDevOpsを導入すればいいか」。

HashicorpのHashimoto氏は、「事例を見せることが重要」として、百貨店のNordstromの事例を挙げ、「最初はバグが出ていたが、非常に早く修正できた。大きな収益化のチャンスとなった」と紹介した。

ChefのCasey氏は、「経験を優先して、まず正しいやりかたを会得する。毎週チームがデモを見せる場を設けて、4〜5回やるとほかの人も参加して学びたいと思うようになる」と語った。

MesosphereのWilliams氏は、「スピードも重要。DevOpsでは、突然Dockerが登場して人気になったように、いろいろなことが速いサイクルで変わる。それは良い面と悪い点があるが、継続的に導入していく必要がある」と述べた。

MicrosoftのGuckenheimer氏は「CI(継続的インテグレーション)をやっていなければ、すぐにやりましょう。見える化やリリースオートメーションは、神秘的なブラックボックスではなく、簡単です」とアドバイスした。

そのほか「ローカルチームでやっても意味があるし、それなら許可はいらない(笑)」「後から『ごめん、成功しちゃった』でいいし(笑)」といった会話もなされ、「まずは体験する」という意見が趨勢となった。

オープンソースとコミュニティが重要に

3つめのお題は「製品ありきのIT市場から、DevOpsではモデルが変わるが、それをお客様にどう見せるか」。ここでは各自「オープンソース」と「コミュニティ」を核にして、製品中心ではなくソリューション中心であると回答した。

ChefのCasey氏は、「DevOpsのモデルでは、ソフトウェアはロットではなく、次々とリリースされる。それがRFPありきの製品とは違うところだ。そのため、オープンソースを使ってもらうことを歓迎する」と述べた。

MesosphereのWilliams氏も「それに同意する」とし、「コミュニティを認識することが重要。活発なコミュニティが日本でも生まれると信じている」と語った。

HashicorpのHashimoto氏は、自社のビジネスモデルについて「Hashicorpはユニーク」とし、「オープンソースソフトウェアがHashicorp製品の入口となり、スピードを上げたいといったときに呼んでもらう。プロセスを鈍化している部分はどこかなど、効果が及ぶところを識別する」と説明した。

それを受けてMicrosoftのGuckenheimer氏と牛尾氏は、Microsoftのビジネスの変化について触れた。「クラウドの世界では簡単に仮想マシンを複製でき、ハードの納品を数ヶ月待つということはない。これによって利用側も変わり、数分で入手、うまくいかなければまたやればいいという、繰り返しから成功例を見出すモデルに変わった」とGuckenheimer氏。牛尾氏も「MicrosoftはOSSコミュニティの世界に入ってきている。顧客はサーバーではなくクラウドを選ぶかもしれない。その声に耳をかたむける」と語った。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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