CPUの仮想化
ハードウエアの仮想化とは?
ここ2、3年仮想化技術が注目を集めています。サービスやアプリケーションなどのソフトウエアから、サーバーやストレージ、CPUなどのハードウエアまで、さまざまな場面で仮想化がキーワードになり、それを利用したソリューションが提供されるようになりました。
本連載では、特にサーバーやPCで使われているハードウエアの仮想化においてキーとなるCPUによる仮想化をサポートする技術を紹介します。CPUの仮想化をサポートする技術を使うことで、1つのシステム上で複数のOSを起動することが簡単にできるようになります。なお、ここでのCPUはIntel系のいわゆるx86系CPUを中心に紹介していきます。
CPUの特権レベルとは何か?
仮想化について説明する前にCPUの「特権レベル」について説明します。これを理解すればCPUの仮想化というものが簡単に理解できます。
Intelの386以降のCPUは、特権レベルというものをサポートしており、OSが動作する時とアプリケーションが動作する時のモードを特権レベルで分けています。
X86系CPUでは4段階の特権レベルを持っています。図1に示すようにOSは特権レベルの一番高いレベル0で動作し、アプリケーションはレベル3で動作します。通常、レベルは「リング」と呼ばれており、OSはリング0で、アプリケーションはリング3で動作するという言い方をします。あるいはそれぞれ「カーネルモード」「ユーザーモード」と呼ばれることもあります。
リング0で動作するソフトウエアは、CPUが持っているリソースおよび命令にすべてアクセスすることができる「特権命令」を実行することができます。もちろんメモリーの全空間へのアクセス、IOなどのハードウエアへのアクセスなども可能です。
一方、リング3ではアクセスが限定されます。そのため、アプリケーションで何か致命的な問題が発生しても、OSまでは影響を受けず、システム全体の動作に影響が出ないようになっています。
なおアプリケーションを書くプログラマは、ハードウエアなどのリソースに関してはOSに任せてプログラムを作成することができます。アプリケーションがOSのシステムコールなどを呼び出した場合やハードウエアへのアクセスが必要となった場合、CPUはリング0での動作モードになります。またハードウエアを動作させるドライバーソフトもリング0で動くことになります。
次ページからは、本題である仮想化について説明していきましょう。