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働き方改革はシステムよりも属人化した仕事の分割・細分化が重要――テレワークが成功しない理由はここにあった!

2017年10月3日(火)
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少子高齢化などの影響を受け、近年多くの企業で注目を集めている「働き方改革」。企業単位での取り組みはもちろん、「働き方改革実現会議」の開催や「働き方改革実行計画」の取りまとめなど、日本政府としても積極的な推進活動を行っている。こうした働き方改革に関する取り組みの中でも、特に重要施策として位置付けられているのが、時間や場所にとらわれることなく柔軟な働き方ができる「テレワーク」だ。

しかし、いざテレワークを実施しようと試みても、ノウハウ不足などによって失敗するケースも多い。そこで本記事では、日本全国に2000人を超えるテレワーカーが在籍し、企業のビジネスをサポートしている、株式会社イマクリエ 代表取締役の鈴木信吾氏にインタビューを敢行。テレワーク導入時のポイントやツール選定などについて伺った。

テレワークに感じた“新しい働き方”への大きな可能性

― まずは御社とご提供サービスの概要についてお教えいただけますか?

鈴木信吾氏(以下、鈴木):弊社のテレワークに関する取り組みは、2014年12月から2015年4月にかけて総務省が実施した「テレワークモデル実証プロジェクト」への参加に端を発します。当時はまだ「テレワーク」という言葉自体があまり知られておらず、環境も整備されていませんでしたが、そこに“新しい働き方”への大きな可能性を感じたのです。具体的には、職場を軸とした従来の働き方から、生活を軸とした働き方への転換、つまり時間や場所にとらわれることなく働ける環境作りですね。世の中には子育てや介護などに追われて、「働きたいのに働けない」という事情を抱えている方が増加し、一方で企業側も深刻な労働者不足に悩まされています。こうした両者の課題を解決できる方法として、テレワークに魅力を感じたわけです。

そして現在、このテレワークを基盤として、事務サポート/アウトバウンド/カスタマーサポートの各領域に対応した「アウトソーシング」やテレワークの環境構築および導入支援を行う「テレワーク導入サポート」といったサービスを展開しています。日本全国に在籍している2000人以上のテレワーカーが企業の“援軍”として活躍しているほか、これまで培ってきた経験やノウハウを活かし、皆さまのテレワーク導入に関する支援も実施しています。2017年7月24日に開催された「テレワーク・デイ」では、錚々たる大企業が名を連ねる中、イマクリエはベンチャー企業としてテレワーク実施特別協力団体として参加しました。

株式会社イマクリエ 代表取締役 鈴木信吾氏

― 御社のアウトソーシングサービスでは、実際にどのようなシステムが用いられているのでしょうか?

鈴木:弊社のテレワークシステムは、データセンター内に構築した仮想デスクトップ環境にテレワーカーがアクセスし、そこからVPN経由で本社やサテライトオフィス、そしてお客さまのシステムに接続する方式を採用しています。すべての作業は仮想デスクトップ上で行われるため、情報漏えいの心配がなく安全に業務を遂行できるわけです。万が一の場合を想定し、特に重要な情報を取り扱う管理系の業務ではシンクライアント専用端末を支給。また、一般業務に携わるテレワーカーの場合は個人所有のPCを使用していますが、こちらも事前に十分なウイルスセキュリティチェックを実施しています。

ツールの組み合わせにより柔軟性の高いシステムを構築

― 勤怠管理などはどのように行われているのでしょうか?

鈴木:弊社ではクラウド型の勤怠管理システムを使用しています。自宅やオフィスなど事前に指定した場所からアクセスすることで、打刻が行えるわけです。また、業務内容によっては喫茶店など外出先からの打刻にも対応しています。
この勤怠管理システムもそうですが、近年はテレワークに使えるツールが数多く登場しています。これらのツールを業務内容に応じて組み合わせることで、柔軟性の高い環境が提供できるわけです。

たとえば、業務に紐づくツールとして弊社が採用しているチャットボットが挙げられます。弊社では基本的にチーム単位で業務を遂行しており、不明点が出てきた際には各チームのリーダーに質問が寄せられます。しかし統計をとったところ、業務に関するクリティカルなものよりも、ツールの使い方など一般的な質問内容の方が遥かに多いことが分かりました。もちろん事前に解説用のドキュメントを用意しているのですが、ついチャットで質問してしまうケースが多いんですね。

一方で、リーダーも自分の仕事がありますから、回答に時間をとられればそれだけ業務効率が下がってしまいます。そこでチャットボットを導入し、一般的な質問に対してすぐに回答が得られる環境を作りました。これにより、リーダーの仕事が滞ることなく、メンバーの疑問が解決できるようになったのです。また、チャットボットの導入によって“即レスの習慣化”というメリットも得られました。テレワークではメンバー同士が地理的に離れているため、不安感を払しょくする意味でも返信の速度が非常に重要です。弊社ではチャットがきたらすぐに返信することをルール化しているので、距離を感じることなく業務が行えます。

― テレワークに使うツールの選択肢が多く、どれを選べばいいか分からない企業も多いと思うのですが、ツールを選ぶ際のポイントをお聞かせください。

鈴木:コストさえかければ、機能面で完璧なシステムを作り出すことはできます。しかしここで重要なのが、「そのツールを誰でも使えるか」という点です。テレワークのツールは、一部の人だけが使えるようなものでは意味がありません。難しいツールになるほど習熟度に差が出やすくなりますから、利用者全体のITリテラシーを考慮した設計が求められます。

たとえば、多機能なツールAですべての業務をカバーできても、使いこなすまでに相当な時間を要するのならば、単機能ながら使いやすいツールBとツールCを組み合わせた方が良い場合もあるのです。ツールは使われなければ宝の持ち腐れですから、いかに自社のテレワークに適したものを見つけられるかがポイントといえるでしょう。

属人化した仕事の分割・細分化でテレワークのメリットを最大限に引き出す

― テレワークを導入するにあたって注意すべきポイントについてお聞かせください。

鈴木:一般的にテレワークといえば、まずシステムありきという考え方が浸透していると思いますが、実はシステムの重要性は二の次です。あくまでも、「どのような仕事をするのか」「どうやって仕事を分割するのか」といった部分が一番重要になります。多くの企業では、仕事が特定の個人に付帯しているような状態です。この属人化している仕事を切り分け、細分化した仕事に対して人を割り振っていくことで、テレワーク本来の強みを最大限に引き出すことができるといえるでしょう。本当に個人の技に頼るしかない職人芸的な内容を除き、多くの仕事は分割・細分化が行えますし、たとえプロフェッショナルでも事務作業など専門外の仕事を切り分けることで、コア業務に注力できるようになります。

また分担を行う際は、人によって向き・不向きがあるという点も忘れてはいけません。これは知識やスキルの面だけでなく、「一人でコツコツと仕上げたい」「みんなでワイワイ取り組みたい」といったパーソナリティも大きく影響してきますから、こうした部分も考慮に入れた仕事配分が重要です。

使う企業の心理的な障壁をいかに取り除けるかが課題

― テレワークの課題があればお聞かせください。

鈴木:現在はインフラやサービスが充実していますから、システムとして求められる物理的なセキュリティの問題はすべてクリアできます。しかし、それでもテレワークに不安を感じる企業が多い理由の一つが、従来のオフィスと違い“目の届かない場所”で業務を行うという点です。見えないからこそ、頭の中で不安だけが膨らんでしまうんですね。こうした意味では、使う企業の心理的な障壁をいかに取り除けるかが、テレワークの課題といえるでしょう。
テレワークは、ライフスタイルを軸とした働き方で一人一人が輝ける社会を創造するとともに、事情により辞めざるを得ない人材を集められる貴重な手段です。こうした社会全体にとっても非常に大きなメリットを考えれば、心理的な障壁を払拭する価値は十分にあるはずです。

― 最後に、これからテレワークの導入を検討している方々にメッセージをお願いします。

鈴木:まずはあまり難しく考えないことが重要です。もちろん、従来の業務をそのままテレワーク環境へ移行しようとすると、どうしても無理が生じてきますから、各種ツール活用や業務の標準化などを行いつつ、1日単位や週単位でのテスト導入をしてみてください。テレワーク環境の整備を目的とするのではなく、どのように生産性を上げるかに焦点を絞れば、自然と答えは見つかるはずです。

― ありがとうございました。

ReadWrite編集部
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
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