Withコロナ時代のコミュニケーション課題を解決する ーバーチャルオフィスの活用
はじめに
パソナテックには、全国4ヶ所にある開発拠点「Lab(ラボ)」があり、アプリ開発やAI導入支援、クラウドインフラ構築など、各拠点の特徴を活かしながら、連携してお客様の課題を解決していくソリューションを強みとしています。なお、それぞれのLabのエンジニアはリモートワークが前提となっています。
【参考】第6回 パソナテックが展開する新たなソリューションと付加価値を提供する開発拠点「Lab(ラボ)」とは
また、各自治体のリモートワーク推進事業にも参加しており、2018年11月には、通勤ラッシュ回避を目的に時差出勤を推進する東京都の事業「時差Biz」において、オフピーク通勤や時差Bizの普及啓発に積極的に取り組んでいただいた企業として「時差Biz推進賞」にも選定されました。
そのため、コロナ禍に入ったタイミングでも、エンジニア以外の社員も含め、比較的スムーズにテレワーク勤務環境に移行できたので、リモートワークにおける大きな課題はないと考えていました。
全く心配していなかったメンバーの
モチベーションが落ちていた
2020年4月に緊急事態宣言が発出されてから、テレワーク勤務が中心になり半年が経過した頃、これまでコミュニケーション上問題のなかったメンバーからのメール返信や、依頼したことの対応が遅くなっていることに気づき、マネージャーが定期的に実施しているオンライン1on1面談で、フォローを実施しました。
すると、テレワークでほとんど自宅にいるため、社員と直接コミュニケーションを取る機会がなくなったことでモチベーションが低下してしまい、体調不良につながる寸前であったことが分かりました。そこで、「コロナ禍のリモートワークにおける課題解決のために何ができるか」について、各チームのマネージャーが集まり議論しました。
【参考】日経BPコンサルティング「Cprporate Communication Lab.」
1500人緊急調査「コロナで変質した企業内・企業間コミュニケーション」とは
調査結果:図1「新型コロナの影響による、企業内のコミュニケーション課題」(複数回答)
バーチャルオフィスという選択肢
上記の課題に直面する前から、エンジニアメンバー同士のコミュニケーション活性化を目的に、いくつかのバーチャルオフィスサービスを試験利用していました。3次元型のサービスなども含めて様々な検証をした結果、最終的に開発マシンで作業しながら利用しても比較的負荷が少ないブラウザベースの「oVice (オヴィス)」という仮想オフィスサービスが良いのではという意見が出ました。そこから本格的な検証を進めることになりました。
バーチャルオフィスのメリット
バーチャルオフィスを活用する前の課題と、活用後に解決できた内容としては以下が挙げられます。
■活用前の課題
- チャットだけでは相手の気持ちが図りづらい
- メンバーの体調や忙しさなど相手のペースを意識できず、仕事の割振りなどが難しい
- 雑談ができない。ちょっとした雑談をするにもわざわざオンライン会議システムを設定しなければならずハードルが高い
- 簡単な話はオンライン会議システムを使用せず電話を使っていたが、資料を見せながらの会話ができないため相手に説明しづらく伝わらないことがあった
- 別のエリアにいるエンジニアの状況がよく分からず、連絡にはお互い気を遣ってしまい、予定を押さえるのにも時間を要していた
■活用後に解決できたこと
- 相手の状況が分かる
バーチャルオフィス内のアバターの位置により「今、声をかけてもいい」ということが分かり、必要なときにすぐに声をかけられるようになった。また、普段忙しい上司にも話しかけやすいメリットがある - 負担が少ない
上司や同僚にちょっとしたことを相談したいときに、電話よりも負担が少なくオフィスにいる感覚で会話できる。また会議設定は不要で、カメラのオン/オフも自由、資料の共有も可能で、すぐに打ち合わせができる - 雑談ができる
バーチャルオフィス内に雑談ゾーンをつくることで、そこにいる人たちで気兼ねなく雑談できる - バーチャルオフィスをフロアごとに契約可能
実際のビルやテナントのようにフロアごとに契約できるため、実際に階段でフロアを行き来するようなイメージで別の部署に顔を出してコミュニケーションが取れる。現在は1Fに島根Lab、2Fに博多Labを設置し、Lab間の連携がリアルに近い感覚でできている
■今後の活用について
- コミュニティやイベントでの活用
社内外におけるイベントや勉強会での活用も検討中です。各地でエンジニアのコミュニティを運営していますが、新型コロナウィルス感染症の影響によりリアルなイベント開催が難しくなり、現在はオンラインでイベントを実施しています。
ただし、オンラインの場合は全国の方が参加可能というメリットがある反面、できるコンテンツが限られることや、コミュニティ運営で一番大事にしていた「エンジニア同士の横のつながり」を作りづらいという課題があります。
そこで、オンラインイベントや勉強会にバーチャルオフィスを組み合わせることで、少しでも「リアル」感が出せないかを現在検討しています。
現状はオンラインでの朝礼・定例会議・歓迎会・飲み会などをバーチャルオフィスで試している段階です。 - お客様とのコミュニケーション
現状は社内の開発チームがコミュニケーションの場として利用していますが、例えばお客様の業務対応専用チームを作り、一定期間の契約を結び開発を行う「ラボ型開発」の場合に、お客様により安心感を持ってもらうためバーチャルオフィスに参加していただき、リアルタイムにコミュニケーションを取れるようにしたいと考えています。
ちなみに、私はお客様とのオンライン会議中にバーチャルオフィスを画面共有して「こんな感じで使っているのですよ、次回はバーチャルオフィスにもお越しください」と宣伝しています。
- 勤怠管理ツールとしても
テレワーク勤務で一番課題となる労務管理の方法ですが、ここでも有効に使えると考えています。コロナ禍が落ち着いたとしてもリモートワークは継続していくでしょうし、働く場所にとらわれない多様な働き方はもっと広がっていくと思います。チャットで毎朝「勤務開始します!」と報告を受けるより、バーチャルオフィス上で視覚的に「お、いるな」「おっ、帰ったな」と確認するほうが自然に感じます。
カメラやPCの前にいるかどうかで勤怠管理をするシステムもありますが、個人的には出来るだけ自由で裁量を持った働き方を推奨したいと思っています。ここは様々な意見がありますし、全メンバーに利用を必須とするかどうかはこれから見極めていくつもりです。 - 全国や海外拠点でも
前述したとおり、バーチャルオフィスは、ビルのように階層に分けることができます。現状は博多Lab、島根Labと東京の一部のエンジニアの部署で利用していますが、もっとたくさんの拠点や事業部で利用を広げたいと考えています。
例えば東京本社にいる役員に気軽に地方拠点の社員が話しかけたり、普段チャットとメールでしか連絡できないバックオフィス部門の社員にエンジニアが直接話しかけたりと、生産性UPだけでなくバーチャル環境で気軽に話せることで社員同士のコミュニケーションも活性化できると思います。
相手の予定表を確認し社内のオンライン会議システムを設定して打ち合わせをするというアクションよりも、近くの席にいる社員に気軽に話しかけたり、階段を降りて別のフロアにいる社員に話しかけるといったアクションの方が、相手を身近に感じられるのではないでしょうか。 - コスト削減
新型コロナウィルス感染症をきっかけに脱東京、脱オフィスの流れが進んでいますが、バーチャルオフィスは都市部での一極集中や密を避けることに加え、コスト削減にもつながっています。
全国のLabでは通年で積極的にエンジニアを採用していますが、博多Labではコロナ禍に入ってからも順調に採用ができている反面、仮にテレワークを導入せず全員が出社していた場合は席数に余裕がなく、本来であればオフィスを増床する必要がありました。
バーチャルオフィスをうまく活用していることで、コロナ禍後もリモートワークを組み込んだ働き方が実現できており、オフィスを増床する必要がなくコスト削減にもつながっています。
おわりに
バーチャルオフィスは、相手の状況を把握でき、コミュニケーションがとりやすいツールとして注目されています。一方で、テレワークを取り入れる企業が増えてきている中、社員同士のコミュニケーション不足といった問題が出てきています。
新型コロナウィルス感染症の影響により、希薄になったコミュニケーションの問題を解決するツールの1つとして、設備費などの初期費用を抑えられるバーチャルオフィスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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