突然のコロナ禍に見舞われた社会人2年目エンジニア、テレワークのリアル

2020年9月10日(木)
皆川 依璃(みながわ えり)

突然始まった週5日テレワーク

新型コロナウィルス感染拡大に伴い、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令される約1ヶ月半前、2月下旬から所属部門グループ長の判断のもと、徐々にテレワークへの移行が始まりました。会社に行く必要性が低い社会人2年目の私は、突然の週5日のテレワークとなりました。

それから、すでに半年以上が経ちました。これほど長い期間、終日テレワークを続ける状態になるなんて想像もできませんでした。本稿を書くにあたって、この半年間を思い返してみると、新型コロナウイルス感染症の流行の前後で、心境の推移や毎日の工夫など、様々なことがありました。

2019年4月に入社して1年、慣れない社会人生活のために実家から通い続けていた私の生活は新型コロナウイルス感染症の影響でガラリと変わりました。毎朝6時に起きて、7時過ぎには電車に乗り、満員電車ではどこの席が空くのか、心理戦と椅子取りゲームをしていました。そこからテレワーク生活が始まってからは、朝9時の始業に間に合うように起床し、身支度も簡単に済ませる、今までの生活を疑ってしまうほど、朝の時間に余裕ができました。仕事終わりもパソコンを閉じたその瞬間には家にいるのです。最初はとても不思議な感じでした。

そんなある日、近所の本屋さんへ行くと、「テレワーク特集」というコーナーを見つけました。今はどこでも需要があるだろうテレワークに関する書籍をはじめ、ZoomやTeams、Slackといった各種ツールの書籍が並んでいます。「この機会に」とテレワークに関する書籍を2冊購入してみました。

以降では、社会人2年目を迎えたなったばかりの私が、2冊の本を参考に試行錯誤したテレワークの実際について紹介していきます。

テレワーク、試行錯誤の幕開け

私がテレワークを実施するにあたって、特に気を付けたのは、以下の3点です。

  • ①環境の整備:静止画を脱する
  • 作業スペースの確保:徘徊から遊牧へ
  • 仕事スイッチ:オンオフを切り替える

① 環境の整備「静止画を脱する」

【ネット環境】
テレワークで最も重要な要素は、何と言ってもネットワーク環境でしょう。実家にWi-Fiはあるもののなかなか安定せず、いざオンラインミーティングに参加してみると画像や声が途切れ途切れになってしまいました。ミーティング中に画面の中の人が全員止まって見えるときは、きっと全員からは私だけが止まって見えていたのでしょう。画面の中で私だけが静止画なのです。これは非常に困った事態でした。

そこでLANケーブルを購入し、有線で作業をするようにしました。それからは嘘のようにネット環境が改善されました。有線なので行動範囲は狭まりますが、オンラインミーティングのときだけ有線で繋げば良いので問題なしです。

また、1階にWi-Fiを設置しているため、電波が弱い2階でも作業ができるように、新たにWi-Fi中継器を設置しました。それからは2階のネット環境も快適になりました。

【ディスプレイ】

ネット環境の次は、PC周辺機器の整備です。この半年間で社内の研修やセミナー・イベントも全てオンライン開催に変わりました。ここで必要となるのがディスプレイです。資料や説明を参照しながら手元で作業しなければならないため、ディスプレイがもう1台必要でした。会社では自分の席にディスプレイがありましたが、家にはありません。そこで先輩や家族に相談して、テレビをディスプレイ代わりに使ってみることになりました。

PCとテレビを繋ぎ、即席ディスプレイの完成です。もちろん会社で使っていたものに比べれば大きすぎて見づらく、簡単に移動できないので使い勝手は悪いです。しかし、ディスプレイがあるとないとでは比較にならないほど仕事がはかどるようになりました。

その後パソナテックでは、従業員の働く環境を支援する一環で、社員へのディスプレイの貸し出しが始まり、テレビディスプレイ生活も終わりを迎えました。

② 作業スペースの確保「徘徊から遊牧へ」

次に私が目をつけたのは、作業スペースの整備です。

作業スペースの整備とは、つまり「自宅オフィス」を獲得することです。自宅で仕事をする上で「人の目があった方が良いだろう」と思い、最初はリビングのダイニングテーブルで仕事をしていました。確かにサボることもなく集中できるのですが、どうにも椅子が合わず長時間座っていられません。長時間座っていても疲れないオフィスの椅子は良い椅子なんだなと、ダイニングにある固い椅子と比べてしみじみと実感しました。

さらに困ったことがもう1つありました。出社もしない、外出もできないとなると、1日の行動範囲がひどく狭くなり、運動不足を感じるようになりました。実際にスマートウォッチを見ると1日の歩数が数百歩だったりします。そこで椅子をバランスボールへ変えてみることにしました。スポーツ用品店へ探しに行くと、1200円ほどで買えました。人気も高くユーザーも多いゲーミングチェアの購入も考えましたが、バランスボールよりかなり高額になるため、手っ取り早くバランスボールを選んだのでした。

さて、これで椅子の固さと運動不足からは多少解放されましたが、バランスボールもまた長時間の作業には向いていませんでした。足のやり場に困り、あまり集中できないのです。これは椅子と交互に使うのが良さそうだと、椅子とバランスボールを行き来するようになりました。ウェビナーなど視聴するだけの作業ではバランスボールを、手を動かす作業では椅子と使い分けるのです。

そうこうしているうちに、家の中をあちこち移動しながら仕事をするようになりました。家族で一番早くテレワークになった私でしたが、次に母が、最後に父がテレワークへと切り替わりました。我が家は珍しく両親共にSEのため、1つ屋根の下に3人の在宅ワーカーが揃うことになりました。父はリビングの隣の部屋を独占して自分の城を築きましたが、母と私はしばらくリビングに同居しました。ミーティング時間が被ったときは、どちらかが移動します。玄関に行ったり和室に行ったり、ネット環境が一番安定しているダイニングの椅子には長居できないので、座卓を出して床に座ったりと工夫しました。

前述した和室でのテレビディスプレイ戦法も作業内容によって重宝しますが、なにぶんテレビは移動ができません。畳に座り続けるのも腰が痛くなるので、テレビディスプレイは必要なときだけ使用しました。

そんな風に試行錯誤しながら家の中を徘徊していると、意外とこれが自分にはぴったりな働き方であることに気づきました。環境を変えるとリフレッシュした気分を保てて、継続して集中できます。というのも、書籍の中に「遊牧」という言葉を見つけたのです。家の中で移動しながら働くスタイル=「遊牧」スタイル、この言葉がしっくりきました。同じ場所に留まらず、部屋を変えたり座り方を変えたり、作業スペースを定めず変化させたりすることもまた1つの手段だと新たな発見がありました。

③ 仕事スイッチ「オンオフを切り替える」

ざまざまな環境を整えたことで、自宅でも集中して仕事ができるようになってきましたが、居住空間で仕事をする上では、いかに「オンオフを切り替えられるか」が重要になることを肌で感じました。ここまではオンのための環境作りを中心に書いてきましたが、オンへの切り替えを意識的に実行したように、オフも工夫できるのではと、ふと思ったのでした。

書籍でも紹介されていましたが、最後に自己流の「仕事のオンオフを切り替えやすくする環境を取り入れる工夫」について取り上げます。

デスクまわりの工夫

【香り】
1日の始まりやランチタイムの後、夕方の追い込みなど、場面ごとに好きな香りを取り入れたり、お気に入りの香りを作業スペースに置いて仕事モードに切り替えたり、楽しく簡単に仕事のお供にできそうです。ちなみに、私は無印良品のインテリアフレグランスを愛用しています。

【音】
ラジオや音楽を流すことで集中できる人もいるようです。道路が近く車など外の喧騒を避けるために歌詞のない音楽を流したり、逆に生活音がある方が良かったりは人それぞれです。私の家の周りは畑や森ばかりなので、自然と鳥や虫の声が音楽代わりになっています。

【飲み物】
朝はホットミルク、日中から夕方にかけてコーヒーを、夕方以降はカフェインの少ないほうじ茶を。飲み物も工夫することで仕事にもメリハリがつきます。会社ではペットボトルの飲み物を買って1日中同じ物を飲んでいましたが、家ならマグカップで都度、好きなものを淹れられます。デスクを立って、カップにコーヒーなどを入れている時間はちょっとしたリフレッシュにもなります。

日々の習慣における工夫

【片づけ】
仕事を終えたら道具類を出しっぱなしにせず、1日ごとにデスク周りを片付けるのもオンオフの切り替えに良いそうです。パソコンを閉じて、書類や筆記具などはまとめたり、机の上を綺麗にするしたりすることで、次の日も気分良く仕事を始めることができます。

【身支度】
「家にいるから」と1日中ノーメイクや部屋着で過ごすのもオンオフが曖昧になる原因です。私はお気に入りのワンピースやアクセサリーを引っ張り出して身につけていました。そうすることで、気分にもハリが出ます。

【適度な運動】
小学生のとき以来、久しぶりにラジオ体操をするようになりました。できるなら朝8:40のラジオ体操をしてから仕事に取り掛かる、できなければ昼休みにラジオ体操をします。小学生の夏休みには毎日公園に集合していたことを思い出しました。やってみるとこれが意外とお気に入りの習慣となり、できない日もありますが、朝スッキリと体が起きてくれるので今でも続いています。

このように、テレワークの長期化に合わせて、時間をかけて上記のような工夫することで、メリハリをつけて仕事に臨んでいます。私の遊牧スタイルはまだまだ続きますが、今では自宅が一番お気に入りの作業スペースです。自分の好きなものに囲まれながら仕事ができるのはとても嬉しいことです。

臨時対応からニューノーマルな日常へ

自粛生活が始まってから、新しい生活への対応に随分と時間がかかってしまいましたが、この状況はもう「臨時」のものではないのかもしれないと思うようになりました。そうして気づけば半年が経ちました。これを「新しい日常」と捉えて、これからの生き方を考えていかなければいけないのかも知れません。時間ができたときのワクワクも、行動に制限のある苛立ちにも少しずつ慣れて、今では落ち着いて考えられるようになってきました。

これからの働き方

これから日本の働き方はどうなるのでしょうか。大勢で集まることが難しくなったので仮想空間やオンライン会議の需要が伸びています。また、学校や塾が休校になった影響で授業がオンライン学習に切り替わるなど、これまでになかった変化が起きています。

世の中のこうした需要の変化は、会社での働き方にも大きく影響してくると感じています。「働き方改革」という言葉とともに、業務改善の一助としてノーコード・ローコード技術やRPA等、IT技術の活用が再び注目されてきています。世の中の動向に敏感にアンテナを張りながら、私も問題解決に対応できる技術力を磨くべく、新しい領域を学んでいます。

私がこの半年間の試行錯誤で見つけた「自分らしい働き方」が、これからの当たり前の働き方になっていくのかもしません。家の中だけでなく「多拠点生活」というスタイルも注目されています。東京のアパートで1人暮らしをしていた友人は、地方の一軒家に引っ越しました。今までの固定観念にとらわれず、一人ひとりが自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる社会の実現に向けて、ますますITの力が重要となってくるでしょう。

社会人になってから教えていただいたことがあります。「会社のためじゃなくて、自分のために仕事をするんだよ」。就職活動に疲れて、当たり前だったはずのことも忘れていました。個人の生活や時間を仕事で犠牲にするのではなく、仕事によって叶えていくのです。これからこの言葉は、もっと現実的になっていくのかもしれません。そうであることを願って、次はその実現に向けた旅に出ます。

著者
皆川 依璃(みながわ えり)
株式会社パソナテック DX戦略本部 デジタルテクノロジーグループ
2019年にパソナテック新卒入社。UiPathを主としたRPA開発に従事し、若手向けに研修講師や新卒育成を担うなど教育面にも注力。現在はRPAからさらに視野を広げ、Microsoft Power Platformなどのローコード・ノーコードやAI領域を学び、活躍の場を広げている。
パソナテック
https://www.pasonatech.co.jp/biz/

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