連載 :
  インタビュー

APIマネージメントのKong、Mashapeからブランディングを一新して成長をアピール

2017年11月20日(月)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
オープンソースのAPIゲートウェイであるKongがMashapeから新しいブランディングに移行。来日したCEOとCTOにインタビューを行った。

Webベースのアプリケーションが、Googleなどの用意する外部のAPIを活用して機能を拡張するのは、すでに当たり前となった。しかしアプリケーションをトータルに考えれば、単に外部のAPIを使うだけではなく、API管理もしくはAPIゲートウェイというレイヤーを採用するのが正しいアーキテクチャーだろう。そのAPI管理ソフトウェアをオープンソースで提供するKongから、CEOとCTOが来日した。実はKongは2017年10月にブランディングを一新したばかりで、以前はMashapeという会社名でKongというソフトウェアを開発していたのだ。4月にインタビューを行った記事を参照してもらえば、Kongが提供するAPI管理ソフトウェアの概要が理解できるだろう。

参考記事:API管理を手がけるMashapeのCEO「来年には日本法人を立ち上げる」と語る

今回はCEOで共同創業者のアウグスト・マリエッティ氏と、CTOで同じく共同創業者のマルコ・パラディーノ氏にインタビューを行った。

CTOのパラディーノ氏(左)とCEOのマリエッティ氏(右)

CTOのパラディーノ氏(左)とCEOのマリエッティ氏(右)

まず御社のビジネスの現況を教えてください。

マリエッティ:2017年の10月に正式に会社名を変えて、新しくブランディングを行いました。名刺のロゴもWebサイトも新しくなっています。前回のインタビューの時には、「夏までにKongという名前にブランディングを変える」と言いましたが、少し遅れました。一方ビジネスは非常に順調です。本社もサンフランシスコのユニオンスクエアの側に移転しました。従業員も前回会った時は20名ぐらいでしたが、もうすぐ50名になろうとしていますし、売り上げも順調に伸びています。さらにKongのダウンロード数も拡大していますが、それよりもすでに30万台のノードでKongが稼働していることを知っていただきたいと思います。これは非常に重要な点です。これまでコミュニティ版を使っていた多くのエンタープライズが、Kong Enterprise Editionに移行しているということです。

好調なダウンロードの背景はなんでしょうか?

パラディーノ:エンタープライズにおいて、モノリシックなアプリケーションからマイクロサービスベースのアプリケーションに移行が進んでいることだと思います。そのような場合にAPIゲートウェイを使うと言う時は、外部に接しているエッジの部分の管理に使うというよりも、イースト~ウェスト、つまりシステムの内部にあるマイクロサービス間の通信の部分に使うことが多くなっています。これはよく考えれば当たり前で、モノリシックなアプリケーションであれば全ての機能は一つの大きなアプリケーションの中に実装されていますが、マイクロサービスになればそれぞれの機能がAPIの形でお互いを利用しあう、つまりマイクロサービス間の通信が増えるわけですね。このため、外部ではなくてイースト~ウェストの通信、つまりプロセス同士の通信の高速化に注目すると、古い世代のAPIゲートウェイではどうしてもレイテンシーが発生してしまうんですね。これはもともとそういう状態を想定して開発されていないからなのです。

一方KongはNGINXを使って実装してありますので、非常に軽量かつ高速に実行することができるのです。その辺りが、我々のソフトウェアが評価されている理由だと思います。もう一つの理由は、様々な実行形式が選べることだと思います。具体例を挙げましょう。マイクロサービス的にシステムを構築して、APIゲートウェイを実装する際、Kongは中央にあるサーバーのように実装することも出来ます。また、Kubernetesの実装の例にある「サイドカーデプロイメント」のように複数のPodを一緒に実行する方法を採用して、コンテナの側にNGINXのプロセスを実行してそこでKongを稼働させることもできます。これは、Kongそのものが軽量なNGINXの上で実装されているからこそ可能になるやり方なのです。Kongは、APIゲートウェイそのものがマイクロサービス的な発想で開発されており、それがKongの採用が進む大きな理由だと思います。

しかしエンタープライズのアプリケーション開発者は、モノリシックなアプリケーションをDockerやKubernetesで再構築することに注力して、まだAPIゲートウェイまでは意識が向いてないのでは?

パラディーノ:それはちょっと違うと思いますね。エンタープライズ、特に日本のエンタープライズはアメリカの企業よりも少し遅れていることを感じていますので、これから本格的に始まるのではないかと感じます。今回、日本で色々な人と話をする中で、Kongが本番環境で運用されている事例をいくつも知ることができました。これは過去に日本に来た時には感じることのなかったポイントです。デベロッパーは私たちやパートナーの助けがなくても、実際に本番のシステムにKongを採用しているのです。

もう一つ感じるのは、マイクロサービスのソフトウェアの領域では、すでにオープンソースソフトウェアがメインストリームであることですね。DockerもKubernetesもMESOSもKongも、オープンソースソフトウェアです。エンタープライズにおいてはボトムアップでオープンソースソフトウェアが採用されており、マイクロサービスを構築する際には避けて通れない状況になっていると言えます。今後は、これまでのクローズドなAPIゲートウェイやAPI管理ソフトウェアは、古い世代のソリューションということで徐々に減っていくと思います。

日本でのKongをもっと拡げるための計画は?

マリエッティ:日本はKongにとっても重要な市場であることは理解していますし、そのために私たちが年に数回は来日して、パートナーやお客様と直接話をする機会を設けています。前回お話したように、来年には日本に拠点を開けるように準備をしています。まずテクニカルなスタッフを用意して、すでに使っていただいているお客様のサポートから始めたいと考えています。その後にセールスやマーケティング、同時にKongを販売してくれるパートナーも同時に拡げていきたいと思っています。過去にKongのMeetupを開催した際には、100名を超えるエンジニアに申し込みをいただきましたので、それをもっと続けていきたいですね。ユースケースに関しても多くの顧客から支持をされていますので、順次公開していければと考えています。

Kongの新しいロゴと名刺。ゴリラがキャラクターであるのは変わらない

Kongの新しいロゴと名刺。ゴリラがキャラクターであるのは変わらない

Kongのアーキテクチャーの特徴や、すでにFortune 500の企業でも多く使われていることを語ってくれたKongのCEOとCTOであるマリエッティ氏とパラディーノ氏であったが、まだ多くの顧客から事例公表のネゴシエーション中であるということで「もう少しだけ待って欲しい。Webにはもう顧客のロゴを入れる場所は確保してあるんだから」と全速力で走っているベンチャーらしいところを垣間見せてくれた。日本でも大手のオープンソースソフトウェアに強いパートナーとの打ち合わせを続けており、今回も沢山のミーティングの合間に時間を作ってくれた2人であった。いつか機会があれば、サンフランシスコのオフィスを取材してみたい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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