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  インタビュー

API管理のベンチャーMashapeが日本市場参入を表明

2016年12月15日(木)
松下 康之
2016年12月7日、サンフランシスコのベンチャーでAPI管理に特化したMashapeのCTO/Co-Founder、マルコ・パラティーノ氏が来日し、記者向けブリーフィングを開催した。

古くて新しいAPI管理という技術

API管理はメインフレームの時代からアプリケーションのモニタリングなどに使われてきた技術だが、Webネイティブなアプリケーション全盛の今になって、新たにWebにマッチした疎結合のシステムを構築する際にその仲介役としての役割が拡大していると言えるだろう。Webネイティブな企業としてよく引き合いに出されるUberやAirbnbなどが多くの機能を自社で用意せずに、Google MapsやTwilioなどの外部サービスと連携してユーザーエクスペリエンスを最適化していることはよく知られている。その際に認証や応答時間の管理、ロギングなどを一元的に行うためのサービスとして、API管理はより重要な存在となっている。レガシーなAPI管理であるIBMやCAなどのベテランと、Googleに買収されたApigee、TIBCOに買収されたMasheryなど、新旧のベンダーが入り乱れている状況に、パブリッククラウドのリーダーであるAWSやMicrosoftがクラウドサービスとしてAPI Gatewayを提供するなど、今まさに群雄割拠の時代だ。

Mashapeは2010年の創業という最後発でありながら、Amazonのジェフ・ベゾスやGoogleのエリック・シュミットなどが出資者として名を並べている辺りが注目されている要因の一つだろう。また非常に短い期間で、製品の導入数やコミュニティが急成長している点も注目に値する。

MashapeのCTOであるパラティーノ氏は、Mashapeが開発するAPI GatewayであるKongについて「完全なオープンソースソフトウェアであり、ベースとなっているのは軽量なWebサーバーであるNGINXである」と説明した。このKongのコアはNGINXとその上にバンドルされるOpenResty、そしてクラスタリングのためのソフトウェアとしてHashicorpのSerf、データストアは分散環境の場合はCassandra、単一サーバーであればPostgreSQLで構成されるという。それとは別に開発者用ポータルであるGelato、さらにアナリティクス用のGalileoという2つの追加のソフトウェアで構成されているものを、エンタープライズ向けのパッケージとしてサブスクリプションの形式で顧客に提供するのが、Mashapeの基本的なビジネスモデルだ。

完全なオープンソースソフトウェアであるコアコンポーネント(Mashapeの場合はKong)とコミュニティが開発提供する大量のプラグインというのは、オープンソースソフトウェアではよくある形態だ。そしてそれを検証し、エンタープライズ版としてパッケージング、さらに24時間×365日のサポートサービスを提供することでマネタイズするというのは、想像通りであるといえる。

ユニークな課金体系を採用

ただしここで筆者が注目したのは、その課金体系だ。よくあるサブスクリプションでは、利用したトラフィックやリクエスト数、インストールしたサーバーのCPUコア数など様々なメトリックスで課金が行われる。しかしMashapeの場合、それに関する質問の回答は「管理者の数」であるというのだ。これは「トラフィック数やサーバー数など、予め予想しても実際の数値がわからないものを使って課金するのではなく、管理者の数であればどの企業でもすぐに答えることができるから」だという。

例えばAWSのサーバーレスサービスであるLambdaでは、リクエスト数そしてサービスが利用した時間で課金が行われる。しかし開発したアプリケーションがどれだけのリクエスト数そしてコンピュート時間を使うのか、事前に正確に予想できるプログラマーや運用管理者は稀だろう。そういう意味では、複雑なAWSの利用料金に対してより現実の運用を見据えて、ビジネスサイドのオーナーにとっても分かりやすい料金体系と言えるだろう。

前述の通り、ソフトウェア的にはNGINXとOpenResty、Serf、Cassandra/PostgreSQLというオープンソースで構成されていることによって、パブリッククラウドやオンプレミスなど様々な利用形態で活用できる辺りが、パブリッククラウドのサービスとしてのAPI Gatewayとは一線を画すポイントだろう。日本でも、「IoTサービス創出支援事業」の実例として、総務省により実証実験が行われている「会津若松スマートウェルネスシティ IoTヘルスケアプラットフォーム事業」のフロントエンドとして、AWS上で稼働しているという。

今回のブリーフィングでは、日本市場向けに株式会社ブリスコラが国内初のパートナーとなったことが発表され、同社の代表取締役社長である末貞慶太郎氏も同席した。ブリスコラは、Mashapeソリューションのコンサルティングや日本語によるサポートなどを始めるという。

ブリスコラの末貞氏(左)とMashapeのCTOパラティーノ氏

ブリスコラの末貞氏(左)とMashapeのCTOパラティーノ氏

将来的には「Kong」がブランディングの中心に

なお現在は会社名が「Mashape」で、コアコンポーネントが「Kong」、さらにエンタープライズ向けに開発者向けポータル(Gelato)とアナリティクス(Galileo)をバンドルした「Mashape Enterprise」というのが主なソフトウェアになるが、「これからブランディングをKongという名前中心に変えていく予定」であるという。将来的には「Kong」を全てのブランディングとして利用するという考えだ。

ちなみに「マスコットのゴリラに名前はあるのか?」という質問には「このゴリラの名前はJSON(ジェーゾン)です」と笑って答えてくれた。

Kongのマスコットはゴリラの名前はJSON

Kongのマスコットはゴリラの名前はJSON

将来の計画として、WAF(Web Application Firewall)をプラグインとして提供する予定もあるように、モニタリングや分析などの他にセキュリティ的な方向も目指しているようだ。元々のビジネスであるAPIのマーケットプレイスは「会社の将来には優先順位が低い」と言うように、次のステップに向けての準備を急速に始めていると言えよう。まだ総勢25名という小さなベンチャーだが、今回の日本市場参入をきっかけに大きく成長することができるだろうか? 今後の動きに注目していきたい。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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