KongのCMO、Juliette Rizkallah氏が語る、API活用の最前線と日本市場におけるDX推進の展望とは
2024年6月20日、21日に開催された「AWS Summit Japan 2024」に合わせて来日したKong Inc.CMOのJuliette Rizkallah氏。 同氏に、Kongが提供するAPIプラットフォームの進化と「AI Gateway」の可能性、さらには日本市場での戦略的パートナーシップの未来について、お話しを伺いました。
Kongの概要と歴史
Kongは、APIの重要性がますます増すと予見し、イタリアの起業家であるAugusto MariettiとMarco Palladinoによりミラノで開発が始まりました。その後、2人はサンフランシスコに移り、2009年にAPIマーケットプレイス企業「Mashape」を設立。そして2015年、Kongというオープンソースプロジェクトを立ち上げ、社名もKongに変更しました。
Kongの成長と製品ポートフォリオ
KongはAPIゲートウェイとして始まりましたが、2018年にはAPI管理基盤製品「Kong Enterprise」をリリースし、サポートサービスも提供を開始。その後、Kubernetesを管理するランタイム機能を統合し、2020年にはオープンソースのKumaを発表し、Insomniaを買収することで製品ポートフォリオをさらに拡充しました。APIプラットフォームへの進化
KongのAPIランタイムは急速に成長し、2021年にはAPIプラットフォーム「Kong Konnect」をリリース。これにより、KongはAPIゲートウェイ企業からAPIプラットフォーム企業へと進化しました。このプラットフォームは、構築から運用、管理までのプロセスを一元化し、開発者の生産性を向上させるとともに、ビジネスのデジタル体験を強化し、イノベーションを促進するツールとなっています。
Kong Konnectの利点
Kong Konnectを採用することで、複数のチームが独立して仕事を進めながらも、一元的な管理が可能となります。2023年には、すべてのランタイムをプラットフォームに統合し、Gateway、Ingress、Meshなども含めたAPIプラットフォームを提供しています。また、同年には使用量に応じた課金モデルも導入し、アダプションが大きく増加しました。
AI Gatewayの導入と今後の展望
さらに、今後の注力分野として「AI Gateway」があり、AIの活用やデータガバナンスにおいてその力を発揮する機能をリリースしています。「Kong Gateway」上にプラグインとしてAI関連機能を追加することで、コードを記述することなく、既存APIと生成AIやLLMとの接続や切替えを、セキュアかつ効率的に実施できます。
Rizkallah氏に聞く:日本市場の動向とKongの戦略
Juliette Rizkallah氏にKongが採用されている業界や今後のフォーカスについて伺ったところ、「すべての業種で採用されており、特に特定の業種にフォーカスしているわけではありません。日本ではまだ20社程度ですが、金融と製造業に注力しています。コネクティッドカーをはじめとする『コネクティッド○○』の領域では、APIが不可欠です。また、テレコム、コマース、メディア・エンターテイメントも日本法人として注力しています」とのことでした。業種に偏りなく広く採用されており、今後もこの方針は変わらないようです。
また、「日本では現在デジタルトランスフォーメーションを進めている企業や、完全にクラウド化してAPIを活用しているデジタルネイティブなお客様がいます。日本のDX推進にはKongのAPIプラットフォームが不可欠です」と強調していました。
Kongの動作環境とその柔軟性
Kongの動作環境については「KongはAzure、AWS、GCPなどの主要クラウドプラットフォームで既に利用可能で、マーケットプレイスでも選択肢として提供されています」とのことで、動作環境の柔軟性が大きな差別化要因になっていると述べていました。
日本市場におけるKongの挑戦
特に日本市場に関しては「日本にはレガシーシステムが多く残っていますが、我々Kong Japanとしては、日本市場に対して啓蒙活動を進め、少しずつマイクロサービス化を支援していく必要があります」と述べ、日本市場に対するKongの自信を伺わせました。
AI Gatewayの活用とその課題
「AI Gateway」については、「最大の課題はデータのガバナンスとセキュリティであり、次にコストの問題が浮上しています。これらの課題をAI Gatewayで一元管理し、最適化することが可能ですので、ぜひ活用してほしい」とのことでした。
日本市場におけるパートナーシップの展望
最後に、日本でのパートナー戦略について伺うと「現時点でパートナー契約を結んでいるのは3社です。現在、リーガルプロセスに入っており、まだ名前は公表できませんが、大手4社のSIerともパートナー契約を進めています。早ければ7月、遅くとも8月にプレスリリースを出せる予定です(8月20日付でKongはNTTデータとのパートナーシップを発表)。グローバルではAWSやアクセンチュアなどがパートナーです」と、日本市場におけるパートナーシップの拡大に対する自信を示しました。
オープンソースコミュニティの重要性
また、Kongのオープンソースコミュニティ活動については「GitHubやフォーラム、ミートアップなど35のチャネルがあり、そこからのフィードバックをとても重視しています」とのことでした。
日本市場を重視する理由
最後に、日本市場を重要視する理由について伺うと、「理想的な顧客プロファイルに日本市場が非常に適合しているのが1つの理由です。しかし、適合するからといってそのサービスを提供するには、日本市場を深く理解しなければなりません。そのため、ジャパンクラウドとのジョイントベンチャーとしてサービスを提供しています」と述べ、日本市場での今後の展望を語りました。
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このように、KongのAPIプラットフォームを活用することで、日本のDXが加速し、さらなる成長が期待されます。今後のKongの活躍に注目したいと思います。
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