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OpenStack Days Tokyo:ガートナーが予測する消えるエンタープライズデータセンターの衝撃

2018年9月11日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
国内最大のOpenStackカンファレンスOpenStack Days Tokyoにて、ガートナーのリサーチャーによるオンプレミスからクラウドへの移行に関する予想が示された。

IT系のカンファレンスではベンダーによるテクニカルセッションやユーザーによる導入事例など、作る側と使う側の双方からの意見を聞くことができる。さらにリサーチ会社によるセッションは、客観的かつ包括的な意見を聞けるという別のメリットがある。

2018年8月に開催されたOpenStack Days Tokyo 2018 | Cloud Native Days Tokyo 2018では、レッドハットやNECなどのベンダーによるセッション、NTTドコモ、デンソー、サイバーエージェントなどのユーザーセッションに加えて、世界的なリサーチファームであるガートナージャパンのリサーチャーである桂島航氏が、2日目のキーノートセッションに登壇した。

ガートナーと言えば、Hype Cycleというテクノロジーの流行の遷移を示すグラフの作成やMagic Quadrantという特定分野におけるリーダー企業を選定する調査を毎年行っており、IT業界では注目されている指針となる。その中で桂島氏は「Cloud Nativeが引き起こすグローバルで破壊的な変化」と題する講演を行った。

ガートナージャパンの桂島氏

ガートナージャパンの桂島氏

かつてVMwareでエバンジェリストを務め、次のJuniper Networksではマーケティングディレクターとして活動してきた桂島氏だけに、表層の数字やトレンドだけではないIT部門のリアリティが伝わってくるような内容となった。

冒頭で紹介したのは、IT部門が戦略的な方向性として考えるべき3つのポイントである。最初のトピックは「エンタープライズのデータセンターが消滅しつつある」という刺激的な内容だ。ガートナーが把握している状況として、エンタープライズのIT部門は自社が保有するデータセンターに対する投資を減らしたいと考えているという。また「クラウドファースト戦略」というのはITに投資を行うのであれば、何よりもクラウドレディ、クラウドネイティブなプラットフォームで稼働させることを考え、それができないのであればオンプレミスを検討するというように、これまでとは順番が変わっていると語った。

つまり自社のサーバーに投資を行うより、クラウドを優先するべきであるという内容だ。そしてその中で重要な技術的要因は「コンテナとサーバーレス」であるというのがこのスライドの内容だ。コンテナやサーバーレスは、サーバーの仮想化などのようにIT管理部門のコスト削減やIT資源の最適化という視点ではなく、デベロッパーがすばやくアプリケーションを実行できることを最優先するという発想で採用されていると強調した。ここではすでにITの運用部門ではなく、デベロッパーがビジネスオーナーと同じレベルでプラットフォーム選択をするべきというガートナーの提案であろう。

IT部門が考えるべき3つのポイント

IT部門が考えるべき3つのポイント

そしてデータセンターが消えつつあるという状況を表すものとして示されたのが、次のスライドだ。これはガートナーが行ったリサーチで、2016年から徐々にオンプレミスのサーバーで動くワークロードが減り、代わってパブリッククラウドベンダーのプラットフォームでの稼働が増えているということを表したグラフだ。この予想によれば、2022年にはオンプレミスとクラウドベンダーの比率が逆転し、大半のシステムがクラウド側で動くようになるということを示唆している。

エンタープライズにおけるワークロードの推移

エンタープライズにおけるワークロードの推移

また規模は小さいながらもコンテナの利用は進んでいるとして、ガートナーの顧客に対する調査から2016年には40%が本番環境においてコンテナが利用されていると解説した。ここで言う「本番環境での稼働」とは、実際には小さなアプリケーションでの利用が多いとはコメントしながらも、すでにコンテナの利用は拡大していると語った。

本番環境でも40%がコンテナを利用

本番環境でも40%がコンテナを利用

またコンテナ利用のパターンについても解説し、リフトアンドシフト、レガシーアプリケーションのリファクタリング、分散アプリケーションの新規開発の3つのパターンを紹介した。ただ既存のアプリケーションのリファクタリングというユースケースは実際にはそれほど多くないそうで、その理由は労力に比較して効果が少ないからだろうと解説した。

コンテナ化の3つのパターン

コンテナ化の3つのパターン

ここからわかることは、クラウドへのシフトは主に既存のアプリケーションをそのままコンテナ化しクラウドに移行する方法と、全く新しく分散型のアプリケーションをコンテナとオーケストレーションツールであるKubernetesを使って実装するという2つの方法が選択されているということだ。これは以前、インタビューを行ったCloud Native Computing FoundationのCTO、Chris Aniszczyk氏がよく使う例であるTicketmasterの例でも明らかで、古いインフラストラクチャーを必要とするレガシーなアプリケーションの場合、そのためのハードウェアやOSを運用するよりも、コンテナ化することで最新のハードウェアを使えるという利点が見込めるということだ。

それと同時に動いている古いアプリケーションを変えなくても良いというコストを抑える効果もあり、エンタープライズでは、クラウド化と言った時にはまず古いアプリケーションをいかにコンテナに収めて最新のクラウドインフラストラクチャーに持っていけるか? を考えるべきだろう。

参考記事:Japan Container Days、CNCFのCTOが語るクラウドネイティブへの道

また最後にガートナーからの提案として、デベロッパーとコンテナ化について議論を行い、いかにクラウドを活用できるかを検討すること、自社のIT資源のクラウドネイティブ化についてベンダーと議論を行い、自社に必要なセキュリティ、モニタリング、データの利用、アプリケーションライフサイクルなどについて何が必要か、そしてベンダーは何を提供できるのかを確認すること、などを示した。

ガートナーからの2つの提案

ガートナーからの2つの提案

ただ、桂島氏が意図的に言及しなかったと思われる日本の特殊な事情、ユーザー企業、つまり事業会社側にソフトウェアを開発するデベロッパーが少なく、システムインテグレーターの先に外注としてデベロッパーが存在し、社内には運用を行うエンジニアだけが存在するというという状況においては、「自社のデベロッパー」と議論するというのは絵に描いた餅になりかねないということは注意するべきだろう。

日本のシステムインテグレーターの未来を憂う議論は多いが、何よりもITを梃子にしてビジネスにイノベーションを起こすためには、ビジネスオーナーとデベロッパーが対等に議論のできる組織構成が必要であるという点にもう少し切り込んで欲しかったというのが正直な感想だ。ガートナーのリサーチャーとして日本ローカルではなくグローバルな担当というのが桂島氏のポジションだが、ベンダーサイドにいた経験を活かして、リアリティのあるデータを使った洞察を今後も期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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