留学経験なし!ゼロベースからの海外移住で苦労した6つのポイント

2018年10月19日(金)
佐藤 まり子

はじめに

30歳を過ぎて、独りで始めたオランダ移住。私はもともと海外志向が強く「いつか海外で仕事をしたい」という気持ちがありました。そんな行動力が強みですが、失敗することも多々あります。オランダを移住先に選んだきっかけも「日本人はビザを取りやすいから」と、わりと浅い理由でした。

「海外に住んでみたい」という憧れの気持ちから始めたオランダ移住。留学経験も現地でのコネもない私が1年半暮らしてみて、仕事・語学・人間関係・生活において大変だったこと、どうやって克服したかをまとめました。

オランダでの仕事

移住する際にまず考えなくてはいけないのが仕事です。私の場合、現地の企業とのコネクションはゼロだったので、日本のクライアントとのリモートワークをメインにしました。

現在でも仕事の8割は日本のクライアントとのリモートワークです。ただ、仕事内容はかなり変わりました。日本でフリーランスをしていた時は単発のWebサイト制作や企業に常駐してマーケティングの仕事をしていましたが、完全リモートになった今はライターとしての仕事がメインです。

アムステルダム駅徒歩5分の好立地にあるコワーキングスペース。自宅作業が集中できないときはここで作業しています

最近は日本でもテレワークの動きが進み始めていますが、完全リモートでもヨーロッパのように最大8時間(サマータイムの時期は7時間)も時差があると、さすがにディレクションの案件は厳しいと感じます。今までライターとして仕事をしたのは新卒の2年間だけだったので、「今からライター業をメインにするのか……」と正直迷った時期もありました。

しかし、ヨーロッパにいるからこそ伝えられることがあるはず。これからの私の課題は現地の人たちに入り込んで取材をすることです。具体的には、オランダ人の働き方や価値観について。日本人と真逆の性質を持っているらしいので、オランダ人から学んだことをメディアへの寄稿や自分のブログを通して発信していけたらと思っています。

もう一つ頑張りたいことがあります。海外の剣道をWebの記事と動画で発信することです。私は13才から20年剣道を続けており、オランダでも継続しています。現地にいるからこそ、ヨーロッパの人たちが「なぜ剣道をするのか?」「なぜ剣道を続けているのか?」を身近で感じて伝えられることがあると思います。

オランダは九州ほどの面積に約30の道場があって、剣道の歴史も長いです。毎年8月には名門の筑波大学から八段の先生と学生さんがセミナーに訪れて指導をしてくださいます。オランダ主催の国際大会もあり、近隣諸国から100名以上の参加者があることも。オランダの他にフランスやベルギー、ドイツ、ポーランドも強いです。

幸いにも、日本の雑誌「剣道時代」の英訳版Webサイトを制作・運用する機会をいただきました。せっかく剣道を続けて来たので、なんらかの形でなぜ日本文化(武道)が愛されるのか、海外でどんな新しい文化が生まれているのかを発信していきたいと思っています。

雑誌「剣道時代」の英語版Webサイト

英語とオランダ語

基本的な英語力があれば、海外生活は思ったほど大変ではありません。これは良い意味ではなく、楽に過ごそうと思えば楽に過ごせてしまうという意味です。

私の場合は特に、日本文化の一つである剣道を続けてきたことで現地でもすぐに友達ができました。同じオランダ人でも「日本文化をもっとよく知りたい」という強いモチベーションを持っている人たちが周りにいるので基本的なコミュニケーションは難しくありません。

中には日蘭ハーフの人もいて、日本語でもコミュニケーションができてしまいます。現地には日本人のフリーランス仲間もいるため、日本語で生活情報を得ることもできます。

所属する剣道道場「錬心塾」でのビュッフェパーティ。年に数回、区切りの季節には稽古後にパーティをします

これは大変心強いことである一方、それに甘んじていれば成長が止まります。私も移住前に心に誓った「語学力をアップさせる」という気持ちが薄れていると危機感を抱きました。

オランダは移民が多く、様々な国籍の人が暮らしています。その中で「きちんと英語でコミュニケーションが取れて、自分の意見が言えること」はとても重要です。また、せっかくオランダに住んでいるのだから、オランダ語も勉強するのが礼儀だと感じます。その割に学習スピードはものすごく遅いのですが……!

また、他国の移民の人々は、自国語+英語+オランダ語+もう1ヶ国ほど話せます。これはヨーロッパが陸続きで言語が比較的似ていることもありますが、英語だけで四苦八苦している自分には衝撃でした。もっと頑張らなくてはと、とても刺激になります。

孤独との付き合い方を学ぶ

本連載のタイトルは「30歳からの海外移住」ですが、実は私がオランダに移住した時は31才。正直、この年齢まで孤独を感じたことはありませんでした。

会社員時代に、チームビルディング研修で「ストレングスファインダー」を使って自分の強みを診断しました。そのTOP5は「ポジティブ・最上志向・社交性コミュニケーション包含」。ほぼコミュニケーション系の資質が上位を占めています。

もともと人と話すことが好きな上に、ずっと横浜・東京に住んでいたので独りになることが全くなく、本気で「孤独ってどんな感情?」と思っていたほどです。

そんな私が知り合いもいないオランダに来て直面したのが「孤独問題」でした。慣れない土地での暮らしも少なからずストレスでしたが、一番辛かったのは「話す相手がいないこと」です。英語はそこそこ話せますが、日本語ほど気軽に会話はできません。日本との時差は8時間あるので、仕事が終わって一息つく時間帯は日本の深夜~明け方。しかもオランダは18時をすぎると観光地のアムステルダムでもカフェは閉店し、東京に比べてかなり静かです。冬は16時には外が暗くなり、シーンとした部屋で独りパソコンに向かって仕事していると、今まで経験したことのない寂しさのような感情を味わい、「これが孤独か……!」とやや苦しみました。

オランダの剣道友達とアムステルダムのCorner Bakery(コーナーベーカリー)にて。ドーナツとクリームが乗ったシェイク

しかし、孤独も悪いことばかりではなく、自然と自分と向き合う時間が増えました。特に私の場合は、これからの自分の仕事について考えなければいけない時期だったので、自分のことに集中するためには、このような環境も必要だと感じています。

また、日本にいた時は心のどこかで「誰かに褒めてほしい」という気持ちがありました。仕事で人と関わって「ありがとう」と言われる機会も多いからです。オランダに来てからは褒められたり、ありがとうと言われたりする機会はぐっと減りましたが、「自分で自分を認める機会」は増えました。誰に褒められなくとも、自分がやるべきことをやろうと考えられるようになったのは小さな成長だったと感じます。

そんな感じで、最初は「イヤだな~」と思ってた孤独にも「ま、これも悪くないかな」と慣れてきました。15歳でウクライナからオランダへ移住してきた剣道友達も「孤独って慣れるよね」と言っていたので、今何かで孤独を感じている方はそのうち慣れると思います。

オランダの食事

食事が合うか、合わないかも移住をするにあたっては重要です。ヨーロッパに駐在経験がある方に「イギリスとオランダはご飯が美味しくない」と散々言われました。すごくまずいという訳ではないのですが、「自分は食が豊かな国にいたんだな」と痛感しました。たまに無性に日本食が食べたくなることがあります。

オランダにも日本食のレストランやラーメン屋さん、お寿司屋さんがありますが、日本に比べるとやはり高く、ある程度ローカライズされています。そして蕎麦はほぼ見かけません。

神田の名店「やぶそば」。
オランダにはラーメンとうどんはあっても、蕎麦屋さんはありません。帰国した時は蕎麦が無性に食べたくなります

ちなみに、オランダのスーパーにも色々な調味料が置いてありますが、どうやって使うか以前に「そもそもこれは何なのか?」という問題に突き当たることがあります。オランダ経験が長いフリーランスの先輩方は使いこなしているみたいなので、自分も日本食材店に頼らず現地の調味料も開拓したい!と思っています。

熱があっても診察してもらえない

オランダにはホームドクター制度があり、その地域を担当するお医者さんがいます。まずそのホームドクターに診察してもらい、必要であれば大きな病院を紹介されるようです。

しかし、オランダは基本的に「病気は寝て治す」というスタンスらしく、お医者さんもあまり治療をしてくれません。37.8度の熱を出した時には「平熱だから大丈夫」と言われ、何も処方してもらえなかったこともあります……。

日本では手厚く診察してもらえて薬も必ず処方されるので、これは衝撃でした。無駄な医療費がかからないというメリットもありますが、デメリットもあります。

2018年2月の最終週から3月の最初の週は寒すぎて、1週間の死者数が第二次世界大戦以来の数になったそうです。原因は寒さとインフルエンザの流行。死者数は3,887人にも上りました。

2018年の年始は寒すぎて運河が凍りました。写真は運河でスケートするアムステルダム市民の皆さん

しかも、死者の半分は80才以上のお年寄り。こんなに寒くてインフルエンザまで流行ったら、お年寄りには厳しすぎる冬です。お年寄りの皆さん、ちゃんと病院に行ったのかな……とニュースを見ながら心配になりました。

自分で決めれば後悔しない

このように、移住をする上でたくさん苦労しましたが、オランダに来たことを後悔したことは一度もありません。移住や独立は人生における決断としては大きいものですが、私は持ち前の行動力と軽い気持ちでポンと飛び込んでしまいました。ただ、もし失敗したとしても、その失敗すらも良い人生経験に思えると信じています。第三者の方の意見や世間の意見も判断の材料としてはとても大切ですが、何かを決断するときは自分で決めたほうが後悔しないと思います。

私自身、「○○さんが言ってたから…」といった理由で物事を判断したら、失敗してしまったときに愚痴っぽくなってしまうし、そんな時の自分は好きではありません。物事もややこしくなると感じます。

普段の生活の中でも私たちは自分で選び、決める機会が数多くあります。ちょっとしたことでも「自分で決めること」はすごく大事だと思います。

また、ビザが下りるまでは「ビザをちゃんと取れるだろうか」と不安な日々を過ごしましたが、終わってみれば「案外簡単に許可が下りたかも……」と感じました。コワーキングスペースで知り合ったアメリカ人フリーランスの女性に聞いたのですが「日本人とアメリカ人は優遇されている」そうです。日本人として信頼してもらえるのは先代の人たちが一生懸命働いて信頼を築いてくれたからだと、とても有り難く思います。

おわりに

ビザを取得した後は「税金の申請をどうしたら良いのか」「オランダにいることで始められる事業はなんだろう」と、いろいろ試行錯誤しました。

次回は、そんなオランダでの実際の仕事についてご紹介します!

フリーのライター&Webディレクター。2017年5月にオランダに移住しWeb構築やライティングなどを中心に活動中。オランダでは剣道用品の販売も。持っている資格は剣道五段、TOEIC880点。趣味は旅行と読書と寝ること。https://1design.jp/
Twitter:https://twitter.com/mariko_cabin442
Facebook:https://www.facebook.com/mariko.cabin442

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