どうしてオランダ?起業の実際、成功する人・失敗する人
はじめに
「いつか海外で暮らしてみたい」そんな憧れを持つ人にとって、ヨーロッパの先進国・オランダは移住先として人気がある国の一つです。私も実際に住んでみて、歴史ある建築、美しい街並み、シンプルで家族を大切にする生活……などなど、ますますオランダに魅力を感じています。
そんなオランダは日本人が起業しやすく働きやすい国。一時期は労働許可がなくてもOKだったほどです。今回は、実際にオランダで起業・移住した人がどんな仕事をしているのか、またどんなメンタリティを持っているのかを紹介します。
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オランダが移住先として注目を浴びた理由
この記事を読んでいる人の中には、「そもそもオランダってどこ?どんな国?」と思う人もいるのではないでしょうか。オランダはヨーロッパ北西部に位置する立憲君主制の国。ドイツとベルギーに挟まれていて、面積は4万1,526平方キロメートル……九州ほどの大きさです。
チューリップと風車、ミッフィーちゃんや画家のゴッホが有名で、日本が鎖国していた時代に貿易を継続していた数少ない国の一つでもあります。
そんなオランダが移住先として注目を集めた理由は、100年以上前に結ばれた日蘭通商航海条約の見直しがきっかけです。長く忘れられていた条約だったのですが、2004年にオランダ人弁護士ステファン・ルーロフ氏の「この条約の最恵国待遇とアメリカ・オランダ間の友好条約を組み合わせれば、アメリカ人と同等の権利が与えられるのでは」という主張が認められ、アメリカ人と同様に起業が容易になりました。
ビザの取りやすさが注目を浴びる一番の理由かもしれませんが、他にも
- ワークライフバランス先進国であること
- 英語を話せる人が多いこと
- 子どもの幸福度が世界第一位であること
など、日本人に限らず移民が暮らしやすい点も魅力です。オランダはワークシェアリングが進んでおり、正社員の男性でも子供が生まれたら週休3日にして子供を保育園に送り迎えする、といった話もよく聞きます。仕事を人生の一部と考えているからか、国全体としてのんびりしていて、生活を大切にする雰囲気を感じます。オランダに赴任した駐在日本人の方が、オランダを惜しみながら帰国する、という話もよく聞きます。
オランダでの起業に必要な費用
比較的少額で起業できる点も魅力の一つ。オランダでフリーランスとして起業する場合は、70万円ほどあればビザを申請できます。下記はオランダで起業するための手順ですが、残高証明としてビジネス用の口座に4,500ユーロ(為替レートにもよりますが約60万円)が必要なだけで、実際にオランダの公的機関に支払うお金は15~20万円ほど。日本で法人を設立するよりも少ないかもしれません。
これらの諸経費+私の場合は途中で病気になって手続きが進まず移民弁護士さんにサポートしてもらったため、その費用がさらに15万円ほどかかっています。
<オランダで個人事業を起業するまでの手順>
- オランダ大使館(デンハーグ)で戸籍謄本の英語翻訳を依頼
- オランダ外務省でリーガライズのスタンプを押してもらう
- 移民局に書類を提出(パスポート、申請書類、ビジネスプラン、財産証明)
- 市役所でBSNナンバーの申請
- 銀行口座の開設
- 商工会議所でKNKナンバー発行
- 銀行でビジネス口座の開設
- 公認会計士にバランスシートを作ってもらう
- 移民局にバランスシート提出
- 移民局に滞在許可証を受け取りに行く
通常、これらの手続きが全て終わるまでに3ヶ月前後かかりますが、観光ビザの3ヶ月の期限が過ぎても仮滞在証明証を発行してもらえるので、実際には3ヶ月以上オランダに滞在できます。
オランダ起業して1年、いまの仕事は?
私の場合、オランダに来たのは2017年5月で、ビザが発行されたのは2017年10月です。オランダで起業してからちょうど1年。最初は日本のお客さんとのリモートワークが中心でしたが、最近はオランダでの仕事も少しずつ増えてきました。
とはいえ、まだ現地での仕事は2割ほど。これからもっと広げていかないといけません。
もともと私がしていた仕事は、下記の4つ。
- Webサイト制作
- Webサイト運用
- ライティング
- イラスト制作
どの仕事も在宅でできるので、「手に職をつけたい」と考えている人におすすめです。クライアントは複数持っていて、定期的に会議にもリモート参加しています。
日本にいた頃は、Webディレクションや企業に常駐してオンラインマーケティングなどの仕事を手広くやっていたのですが、オランダに来てからは良い意味で仕事の幅が狭まったと感じています。これまでは一つの仕事にじっくり取り組む機会が少なかったのですが、現在はライター業にどっぷり浸かっています。
また、いままではWebディレクターとして進行管理や営業などを行っていましたが、自分でWebサイトの提案や制作もするようになりました。オランダの剣友と一緒に、日本の剣道専門誌の英語版Webサイトの制作・運用を行っています。
オランダで活動するフリーランスとそのメンタリティ
私はそんなに知り合いが多い方ではないのですが、オランダで活動する日本人にはライター・翻訳家・通訳・エンジニア・美容師……様々な職種の方がいます。仕事は違っても、オランダで安定した生活をしている方々には共通点があるように感じます。
事業計画と強みがはっきりしている
文章が書ける、プログラミングができる、デザインができるなど、企業に雇用されなくても自力で生きていけるスキルを持っています。いくらオランダはビザが取りやすいとは言え、事業の見通しと稼ぐための強みがなければ移住は厳しいでしょう。私も最低限の収入の見通しは立ててからオランダに来ました。
英語、オランダ語が話せる
海外で起業するなら英語は必須です。「移住したいけど、英語が話せません」と相談されたこともあるのですが、逆に「なんで移住しようと思ったの!?」と聞き返したくなりました。海外移住を考えているのであれば、今は無理でも最低限、勉強する姿勢がなければ厳しいでしょう。オランダ人の多くは英語を話せるのでコミュニケーションには困りませんが、英語が通じると言っても役所から送られてくるドキュメントはオランダ語です。
移住先の人たちとコミュニケーションを取るためにも英語は必須です。移住している方の中には、その国に馴染むために英語だけでなく、オランダ語も積極的に勉強している方もいるほどです。
向上心と行動力がある
移住に成功した日本人フリーランスの方からは、向上心と行動力を感じます。また、みな明るくオープンな雰囲気があります。日本で働いていた時も「フリーランスは常に向上心を持つことが大事」とよく言われていましたが、企業のような研修制度もなく、チームで動くことも少ないためどうしても成長が鈍化するからです。海外であればなおさらではないでしょうか。
また、言葉も文化も異なる国での暮らしには想定外のことも多く発生します。そんな時にトラブルや想定外の出来事も楽しめる、あっけらかんとした明るさのようなものがないと、やっていけない気がします。
移住がうまくいかないケース
逆に、相談を持ちかけられた時に「これはうまくいかないのでは……」と思うケースもあります。アドバイスしても、その後「オランダに来ました!」と連絡が来たことや、オランダで再会したこともありません。
他人に頼りすぎている
私もオランダに来て1年半が経ち、たまに相談を持ちかけられることがあります。新しく知り合いができるのは嬉しいのですが、中には調べればわかることも「全くわからないので教えてください!」と質問攻めにあうことがあります。
移住サポートサービスもあるくらいなので、もしどうしても情報が見つからない場合は有料サービスを活用したほうが良いでしょう。私も移住サポートサービスを提供している方と移住弁護士さんに助けてもらいました。もちろん、お金を支払っています。
それでも、時には自分一人で解決しなくてはいけないことも出てきます。誰も助けてくれない異国の地で暮らすのであれば、他人に頼らず、ブルドーザーで荒野を切り拓くような気持ちを持ったほうが良いでしょう。
スキルや商品がない
形だけ事業計画書を出して、「これからどうしよう……」と途方にくれている人もたまにいます。ビザが発行されても、具体的な事業計画や収入の見通しがないのであれば、オランダで生活していくのは厳しいように感じます。
「とりあえずビザを取って現地企業に雇用してもらおう」と考えている人もいるようですが、よほどのことがない限り難しいのではないでしょうか。企業側からすれば英語とオランダ語も話せるオランダ人を雇用した方が良いですし、日本人とはいえ移民をそこまで信用してくれるとは思えません。
おわりに
オランダはビザが取りやすいとはいえ、事業の申請から引っ越し、安定した生活を送っていくことは簡単ではありません。しかし、そういったことも含めて楽しめるのであれば、海外でフリーランスとして生きていくことには向いていると思います。
私も仕事に生活に大変なことはたくさんありますが、不思議と後悔はありません。次回以降は、オランダでの仕事の実際について詳しく紹介していきます。
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