Railsに変えてよかった!:iKnow!の場合

2008年11月25日(火)
真武 信和

BtoBからBtoCへ、そしてPC/Mobile中心からWebへ

 iKnow!を立ち上げる以前から、Cerego Japanでは独自の学習エンジンを元に英語学習アプリケーションを開発していました。しかし、それは企業向けに有料で提供されるもので、現在のようなオープンな無料サービスではありませんでした。

 導入した企業から、学習エンジンについて高い評価を得て事業が順調になる一方、時代は確実にデスクトップアプリケーションからWebアプリケーションへ、クローズなものからオープンなものへと動いていることに

 そして2006年末、ついにわれわれは「時代に取り残さる前に」自社のサービスを無料かつオープンなものにすることを決心しました。

.Netからの脱却、迷いの時代

 BtoB向けに学習アプリケーションを提供していたころ、われわれは.NetやSQL ServerをはじめとするMicrosoft製品を利用していました。しかし、Webアプリケーションに移行する際に、われわれは自社の開発環境も同時に変革することにしました。

 Microsoft製品は、ライセンス費用や開発環境にかかるコストが高かったということもその理由の1つですが、最も大きなファクターはオープンソースにより大きな魅力を感じたからでした。つまり、今後会社が成長していくなかで、オープンソースを選択した方がベターであろうと考えたのです。オープンソースに期待した理由は、オープンソースコミュニティには、優秀なエンジニアが多く参加していることがありました。

 さらに、われわれがiKnow!の開発に利用するフレームワークを選択する時、主に以下の3点について考慮しました。

・オープンソースであること
・テスト(特にUnitテスト)環境が容易に利用できること
・リファクタリングがやりやすいこと

 当時の社内にはPHPの開発経験者が多く、最初のころはPHPを検討していました。またPythonも非常にメジャーでかつ活発なコミュニティを持つことから、非常に魅力的な存在でした。

 しかし最終的に、Sam Josephというハワイ大学の研究者からのアドバイスによって、われわれはRuby on Railsを選択することにしました。

 Samは偉大な研究者でもありながら、優秀なJava/PHPエンジニアであり、われわれは学習エンジンの開発で協力しあっていました。そして、SamがわれわれにRailsの魅力を教えてくれたのです。Samからのアドバイスは、われわれにとって非常に衝撃的なものでした。

 当時Samが所属するハワイ大学では、大学内SNSの開発が進められていました。それはPHP で書かれたもので、10人以上がその開発にあたっていたそうです。開発から1年程が経過した時にSamがそのSNSのソースコードを見たところ、コードはスパゲティ状態で、必要な機能は半分程しか実装されていませんでした。それを見たSamは、開発途中のPHPのシステムをすべて捨てて、以前より魅力を感じていたRuby on Railsで作り直すことを選択したのです。

 それから3ヶ月、わずか3名程度のエンジニアチームで、彼らはPHPで実装が完了していたレベルに追いつきました。またコード量はPHPの1/5以下にまで削減されており、よりシンプルな構成も実現できました。

 Samからこの話を聞いたわれわれは、その後Ruby on Railsについてより詳しい調査を行い、Railsがリファクタリングやテストを容易に行える環境を提供してくれること、scaffoldなどにより非常に短期間でサービスの立ち上げが行えること、既に使いやすく便利なプラグインやgemが豊富に提供されていることなどを知り、Ruby on Railsの採用を決定したのです。

 現在では、もともとはJavaで実装されていた学習エンジンもすべてRubyに置き換えられており、モバイル版iKnow!や10月にリリースしたiKnow! APIもRuby on Railsで実装されています。

 では、Ruby on Railsの採用後の実際の開発について、最後に紹介しましょう。

セレゴ・ジャパン株式会社
学生時代からドリコムで Rails エンジニアとして働いており、現在はセレゴ・ジャパンの数少ない日本人 Rails エンジニアの1人。iKnow! と iKnow! API に関わる一方で、iKnow! のヘビーユーザーとして日々英語を勉強中。http://www.iknow.co.jp/user/matake

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