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  インタビュー

自ら情報を集め、意思決定し、動く。LegalForceが考える魅力的なエンジニアとは

2021年7月2日(金)
工藤 淳
急成長を続けるスタートアップに最も必要な人材像の1つとして「自走型」が挙げられる。リーガルテック(法務×技術)の分野で注目を集める株式会社LegalForceも、そうしたエンジニアを求める企業だ。同社が提供しているクラウドサービス「AI契約審査プラットフォーム LegalForce」は、AIが契約書をレビューし、リスクの洗い出しや条文の修正案などを提示するというものだ。すでに1,000社を超える企業の法務部門や法律事務所に利用されているという。リーガルテック分野における人材の動向や、同社の求める人材およびスキルについて、執行役員CROと採用部門のリーダーのお2人に伺った。

コロナ禍の影響で問題解決/
社会貢献系サービス志望者が急増中

「契約書レビュー」業務というものを耳にしたことがあるだろうか。法務部は事業部門や研究開発部門などから、取引先等の企業から契約を締結する際に、契約書の作成や、契約書の内容が適切なものかチェックを求められる。企業にとって契約書のレビューは、その企業の利益や権利を保障するために不可欠の業務であると同時に、ひとつ間違えば大きなリスクにつながりかねない。LegalForceはそうした契約書に潜むリスクの検知から参考条文のリサーチ、修正案の提示や解説など知見の共有までをAIが支援。見落としなどの人的なミスを減少させるとともに、レビューの作業時間を飛躍的に短縮する画期的なクラウドサービスだ。

このLegalForceを開発するエンジニアも、AIなどの最先端技術に加え、法律の知識や契約書の書式といった特殊な知識が要求されるのではと考える人も多いだろう。だが、基本はWebシステム開発であり、フロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニア、クラウドインフラエンジニア、SREなどのWebアプリケーションの開発人材が必要とされるという点では他の業種とそう変わらないと、執行役員CRO(Chief Research Officer=最高研究開発責任者)の舟木類佳氏は言う。

「Web開発に関わるエンジニアを多く募集していますが、その他、弊社特有の職種を挙げるとすれば、機械学習やデータ基盤、検索技術のエンジニアも募集しています。また、エンジニアとは別に、デザイナーやサービスの企画を担当するプロダクトマネージャーといった人たちも幅広く採用しています」。

株式会社LegalForce 執行役員CRO 舟木類佳氏

同社は顧客企業の契約書を扱うことから、セキュリティ人材も必要だ。またリーガルテックに欠かせない人材としては、弁護士や法務業務経験者、パラリーガルと呼ばれる法律事務所で弁護士の業務をサポートしていた経験を持つ人たちがいる。LegalForceは契約書の内容をAIでチェックするサービスなので、機能開発にあたっては、彼らもその法務知見を活かしサービス開発に携わっている。

「またAI開発には多くの学習データが必要なので、アノテーションを担当するアノテーターも必要です」。

もう少しスコープを広げて、業界全体の人材動向はどうだろうか。同社で採用責任者を務める川口氏は、社会課題の解決などの業務に関心を持つ人が急増していると明かす。

「コロナ禍の影響からか、社会課題の解決や社会貢献といった領域を志望する人が非常に増えている印象です。また今後の成長や持続性という点でも、LegalForceのような社会課題の解決を担うサービスへの期待が高まっていると思います」。

株式会社LegalForce 採用責任者 川口氏

技術者を率いて新たな価値を創り出せる
テックリード人材を求む

では、そんなLegalForceでは現在どのような人材を採用したいと考えているのか。舟木氏は、常に自身の専門領域だけでなく、周辺領域も含めた新しい技術に関する知識について自ら貪欲に吸収していける人材が望ましいと語る。

「広い視野を持って、ここはこう設計した方が良いとか、ここではどのような技術選定をすべきかというアドバイスや判断をチームに対して主体的にできる人=テックリードのような人材を採用したいと考えています。そしてシステムを立ち上げたら、それをビジネスとして価値創出に貢献するところまでデリバリーしていける人が理想です」(舟木氏)。

一方、川口氏は、会社全体の採用ポリシーとして「自ら判断し、スピード感をもって動ける自走型人材の採用・育成」を挙げる。スタートアップで思考を放棄していては、ビジネスや組織の成長スピードに追いつけない。

「弊社は現在、中途採用が中心です。経歴は様々であるため、それぞれが持っている知識や技術も異なります。そのため、自分から進んで必要な情報を取りに来て、即座に行動に移せる人材が、これまで以上に必要になっています」(川口氏)。

さらに、今後世の中で必要性が増していくと考えられる人材について尋ねたところ、法務ドメインに特化した知識が必要とされるシステムを手がけるスタートアップの視点から、舟木氏は「この先、ビジネスとテクノロジーの仲介役を務めるビジネストランスレーターのような人材の需要が高まると見ている」とのこと。新しいサービスの開発では、ビジネスとテクノロジーの双方の視点に立って引き合わせていく取り組みが欠かせないからだ。

「ただし、そのために新たな役職を設けるというよりは、より多くの開発者がそうしたビジネストランスレーター的なマインドを持つ方が重要です。そうすることで、エンジニアという領域から周囲に“染み出して”コミュニケーションを拡げることで、新しいサービスを創り出すことができると考えています」(舟木氏)。

新入社員を対象に会社の全体像を学ぶ
オンボーディング研修を実施

では、LegalForceではどのような人材教育・育成の体制を整えているのだろうか。舟木氏は、新入社員に対するオンボーディング研修が非常に充実している点を強調する。

「入社後すぐに3営業日くらいをかけて、全体研修を行います。ここでは職種を問わず全員に弊社の企業や事業に対する理解を深めてもらいます。各事業部門の責任者が講師となって、直接参加者に説明を行っています。この他には開発や営業、管理部門など部門別の研修も用意されています」(舟木氏)。

これだけオンボーディングに時間と労力をかけるのは、入社した時点で企業の基本方針や戦略、ビジネスモデルなどを理解し、その中で自分がどのような役割を担うかを知ってもらうのがねらいだ。その結果、現場に配属されてからの仕事への熱意や関心が格段に高まると川口氏は説明する。

「全体のビジョンや組織が見えないまま配属部門だけで仕事をしていると、自分の仕事が事業や会社にどのように繋がっているのかが、わからなくなってしまいます。入社時の研修で会社や仕事の全体像をつかんでもらうのは、目の前の仕事をただこなすだけでなく、その意味や目標、自分が担う役割を理解した上で仕事に臨んで欲しいという、会社からのメッセージでもあります」(川口氏)。

研修のほかに、専門分野の研鑽を支援する制度も用意されている。その1つが語学の学習補助制度だ。これは福利厚生の一環として用意されている。そのほか、技術に関する研修や学会への参加や書籍購入の補助は、各人が上長に申し出て認められれば費用が支給される。

「会社が提供している制度以外にも、有志が社内で定期的に勉強会を開催したりしています。また、社員から自分が講師役でこんなことをやりたいと申し出があれば、進んでやってもらっています」(舟木氏)。

足りないものがあれば会社にあれこれ注文や不満を言う前に、自分たちで動いて始めてしまうというあたりは、やはり自走型人材が集まっているLegalForceならではといえよう。

リモート/出社を併用して
社員同士のコミュニケーションを活性化

スタートアップ企業への参画を目指す人たちの重要な関心事の1つが、どのような働き方をするかだろう。LegalForceのワークスタイルの根本には「コミュニケーションを大切にする」というコンセプトがあると舟木氏は明かす。組織の一員としての意識や仲間と一緒に働く一体感を感じてもらうことが大切だと考えているためだ。この考え方は、昨年来のコロナ禍におけるリモートワークのあり方にも大きく反映されているという。

「コロナ禍にあっても、コミュニケーションをどう築いていくかを重視して、弊社ならではのワークスタイルを考えています。現在(2021年5月時点)は東京都に非常事態宣言が発令されているため、ほとんどのエンジニアはリモートワークですが、今後新型コロナ感染症の流行が終息した後には、リモートワークと出社のバランスを見ながら、両者を併用していきたいと考えています」(舟木氏)。

また同社は現在、急速に社員数が増加しており、オフィスに出社していろいろな人と対面で会話する機会を設けるのは、新入社員が会社になじむ上で必要なことが挙げられる。

「現在、リモートワークと出社の比率は部署やチームごとでそれぞれですが、新しく入社した方は、上司やチームメンバーとの関係を構築し、会社や業務に早くなじむために最初のうちはリアルなコミュニケーションを希望することが多いですね。もちろん、リモートワークであってもチームや他部署のメンバーと気軽にコミュニケーションがとれるよう、Discordでの雑談や相談、slackで各自が自由に発信する分報など社内には色々な工夫があります。弊社は『各人が最も成果を上げることができる働き方を選択できる』ということを大事にしており、コアタイム無しのフルフレックス制度の導入や、条件付きではありますがフルリモート可能な制度を新たに設計するなど様々な取り組みを行っています。このような状況下だからこそ、出社をした際には快適に仕事ができるよう、疲れない椅子や広々としたデスクの提供、モニターの複数支給、健康を意識した置き型社食など、オフィス環境の整備にも力を入れています。働き方については、今後もLegalForceにとって最適な形を模索し続けていきたいと思っています!」(川口氏)。

こうした一連の取り組みの背景には、単純にリモートワークか出社かという二択ではなく、社員のエンゲージメントを高めつつ、全員がしっかりと成果を創出するために、最適かつ多様なワークスタイルを可能にしようという同社の人材活用・福利厚生のポリシーがある。社員全員の自発性を育てようとするなら、多種多様な個性や考え方を受け止められるだけのフレキシブルなワークスタイルを会社として提供できなくてはならないからだ。

「LegalForceでは法務の世界を一緒に変えていく仲間を鋭意募集中です。法務はまだまだ技術によって大きく変わる可能性を秘めています。今まだその道の探求中ですが、皆さんの知恵によりきっとより良い法務の未来を切り拓いていくことが可能だと思っています。ぜひ、皆さんからのご応募をお待ちしています」(舟木氏)。

リーガルテックの先頭を走るLegalForceで、 “自走型” エンジニアとして活躍したい人は、ぜひ一度話を聞いてみてはどうだろう。

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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