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  インタビュー

ローコード/ノーコード開発市場で存在感を放つ ーOSSローコード開発ツール「プリザンター」を提供するスタートアップ、インプリムのこれから

2022年3月15日(火)
吉田 行男

「プリザンター」とは

OSSローコード開発ツール「Pleasanter」(プリザンター)を開発する株式会社インプリムは、2021年10月にアプリ開発を強力にサポートする「Pleasanter SDK」を提供開始しました。

このSDKは、年間サポートサービスのミニ、ライト、スタンダード、プレミアムのいずれかのプランを契約しているユーザに提供され、プリザンターを使って自社システムやエンドユーザ向けシステムなどを行う開発者にとって効率改善に役立つツールが揃っています。また、OSSとして公開されている「Community Edition」では、テキスト、ドロップダウン、チェックボックスなど6種類の項目をそれぞれ26個まで配置できますが、サポートユーザ向けに提供される「Enterprise Edition」では、項目数を最大900個まで拡張できます。大規模なシステムへの採用も増えており、Enterprise Editionの項目数の拡張と合わせて、今回リリースされたSDKにより大規模開発の大幅な効率改善が期待されます。

具体的には、ローカルPCに保存されたスタイルやスクリプトなどのコードをアップロードする機能や、開発環境から本番環境などへ移行する際にサイトIDの変更などを気にする必要のない環境移行サポート機能、サイト設定の変更履歴をJSONファイルでダウンロードする機能などの便利な機能が提供されています。大規模な開発になると複数のスクリプトをVisual Studioなどでコーディングし、それをプリザンターにコピー&ペーストで転記するという作業が大量に発生するためトラブルの原因になっていましたが、人為的なミスにつながる作業のほとんどをSDKでカバーできるため開発効率の向上と合わせてトラブル防止にも繋がります。

プリザンターではプロジェクトの工程管理も効率化できる

プリザンターの一覧表示。必要な情報がひと目で確認できる

当初、プリザンターはExcelで管理している業務をWebアプリケーション化することを目的に開発されていましたが、現在ではローコード/ノーコード開発の流れもあり、ITの専門部署の担当者ではなく、それぞれの現場で簡単にWebアプリケーションを構築することで業務の効率化を行うためのツールとして発展しています。また、.NETの技術をベースにしているところも特徴で、Windowsが稼働する担当者のPC上でも試せるなど、簡単にシステムを構築できるなど大掛かりなシステムが必要ないことも導入の敷居を下げることになります。Excel業務の移行といったチーム数人での運用から始まり、基幹システムに足りない機能をプリザンターで補完したり、周辺システムとのデータハブとして活用したり、といった大規模な運用まで幅広いケースに対応できるのもプリザンターの強みと1つと言えます。

プリザンター開発者が語る
インプリムのこれから

さて、インプリムは、2017年にメーカー系子会社に勤務していた内田太志さんが設立した会社です。前職で勤務していたころに個人的に開発していたプリザンターでのビジネス化をめざし独立しました。プリザンターは「マネジメント快適化」というコンセプトを掲げており、非生産的な管理業務を効率化し、本来取り組むべきクリエイティブな仕事に集中できる環境をPleasanterで実現したいという内田さんの強い想いが込められています。

こうして設立されたインプリムですが、設立当初からプリザンターの評価は高く、2018年には特定非営利活動法人ASP・SaaS・IoTクラウド コンソーシアム(略称:ASPIC)が主催する『第12回 ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2018』で『ベンチャー大賞』を受賞するなど、順調に滑り出しました。また、認定パートナーもすでに40社を数え、事例も着実に増えてきており、まさにこれからの飛躍が期待されています。

ここまで順調に成長してきたインプリムですが、設立から5年が経ち、ビジネスも順調に推移している中でSDKの公開をはじめとして、経営陣の強化などさまざまな取り組みを行っています。そこで、今後インプリムがどのような方向性をもって進化しようとしているのか、内田さんに聞きました。

株式会社インプリム 代表取締役 内田 太志さん

株式会社インプリム 代表取締役 内田 太志さん

まず、今回の経営陣の強化の目的について教えてください

  • 内田:当社の原点かつ成長要素であるプリザンターは、今はまだ少数のエンジニアによって開発されている状況であり、プリザンターの機能強化を加速させるためには、私が中心となってプロダクトに集中できる環境をつくることが近道であると考えました。その実現方法として、会社経営の経験者を外部から登用し、セールス、マーケティング、管理領域を分担する経営体制を構築しました。新体制によりプリザンターの成長スピードを加速できたことで、以前から要望の多かった審議申請などのワークフローを実現するプロセス機能や自動採番機能を当初の予定を前倒しして実装できました。プリザンターを、より魅力的に成長させることでパートナー企業やユーザの輪を広げ、当社が目指す「ソフトウェアのチカラで人間が本来持っている想像力をフル活用できる社会」の実現につなげて行きたいと考えています。

SDKの公開などはOSS開発ベンダーとしてのメリットを生かすための施策のように思いますが、他にも同様な取り組みを考えていますか

  • 内田:当社がプリザンターをOSSとして公開している理由として、多くのひとに使っていただきたい、という想いがあります。今回のSDKのように、実際にエンドユーザやSI企業がシステムを導入する際や運用されているフェーズにおいて、利便性の高いツールを提供することがプリザンターユーザの広がりにつながっていると考えており、SDKの機能追加や関連ツールの開発やマニュアル類の充実なども進めています。また、OSSであるプリザンターに蓄積されたデータの更なる利活用につなげられるソフトウェアの提供や、プリザンターの利用者、開発者にメリットをもたらすサービスなどを検討しています。

ビジネスの発展にはパートナーの協力が必要だと思いますが、パートナーの支援として具体的にどのような対応を進めていくことを考えていますか

  • 内田:「DX」や「ローコード/ノーコード」といったワードが目立つ今日現在、プリザンターの認定パートナー企業は40社を超え、毎日多くのお問い合わせをいただいています。これは、今の時流で求められているコトを実現する方法として、プリザンターが適合していることを意味しています。パートナー企業への支援としては、多くの販売機会につながるようなニーズに応じたプリザンター機能強化の推進と併せて、パートナー企業の顧客提案力につなげられるよう勉強会やトレーニングメニューの充実、プリザンターに興味を持つファン層(=顧客候補)との接点づくりなどを考えています。当社は、オープンソースのローコード開発ツールのデファクトスタンダードを目指して、多くのパートナー企業の協力を得ながらエコシステムを構築していきます。

おわりに

調査会社のアイ・ティ・アールによると、2025年度にはローコード/ノーコード開発市場がマーケット全体で1,539億円の売上規模になると予測されています。経済産業省のDXレポートで指摘された「2025年の崖」への危機感もあり、企業におけるDXの推進にあたり、多様なニーズや変化するビジネス環境に迅速に対応する必要があるため、ローコード/ノーコード開発へ注目が集まっています。ローコードであるプリザンターもその例外ではなく、今後ますますエンタープライス企業での活用が進んで行くように思います。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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