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色が引き出す感情効果とは

2008年12月17日(水)
大澤 かほる

色彩は背景によって見え方が変わる

 色調は、空間全体のイメージを決定する重要な要素ですが、効果的に色調をコントロールするためにも、知っておくと便利な知識があります。それは色彩の対比効果です。

 私たちの身体と心には、今ある状況で安定を得るために、その状況(刺激)に心と身体を慣れさせようとする働きがあります。このことを逆側から言えば、その状況に慣れることによって、その前の状況(刺激)に対する感性を鈍らせ、新たな変化がはっきりと認識できるようにする働きです。この「慣れ」を「順応」と呼びます。

 例えば、友人の家を訪問した時、その家のにおいを感じることがあります。けれどしばらくすると、そのにおいを感じなくなります。この現象はそのにおいに「順応」したからです。光の色についても同じことが起こります。

 例えば、お酒を飲む場所のインテリアでは、ムーディーな紫系の光などを照らしています。そこに足を踏み入れた瞬間は「紫」という印象を持ちますが、そのうちに紫を感じなくなってしまいます。これは決してお酒のせいではありません。このような色彩に対して順応する働きを「色順応」と言います。

 では色順応を体験していただきましょう。図2-1の赤いハートの中心の黒丸を1分間注視してください。そのまま右の白いスペースにある黒丸に視線を静かに移し、しばらくじっとしていてください。白いはずのスペースに色がついて見えたでしょうか。これが、色順応が引き起こす「残像現象」という現象です。

 赤色を注視していたために、「赤」という刺激に順応させて、無色透明に感じさせるために赤の補色である「青緑」が目の中に作り出されたのです(※加法混色では補色同士を混ぜると無色になります。さらに詳しく学習したい方は、カラードリームネット(http://www.colordream.net/)を参照)。

 私たちはいつも何気なく色彩を見えていますが、私たちの目の中には常にこのような現象が起きています。つまり、前に見えた色の補色が、今見えている色にかぶって見えているということです。色彩にかかわる仕事をする人は、色彩を正しく検討するために、ときどき、注視することをやめて、目を遊ばせてあげることが大切です。

明暗対比、彩度対比、辺縁対比、膨張収縮

 図2-2を見ると、中心のグレーは左右同じ色ですが、黒を背景にしたグレーの方が、白を背景にしたグレーよりも明るく見えます。このように背景色によって明度が違って見える現象を、「明度対比」と呼びます。

 もし、地色(背景色)を変えても、図(文字や柄など)の明るさを同じに見せなければならない場合、図の明るさの調整が必要になります。また、このような見え方があることを知っていれば、同じ色でも、背景を変えて、図を明るく見せたり、暗く見せたりすることができます。

 図2-3を見ると、中心のオレンジは左右同じ色ですが、明らかに鮮やかさが違います。どちらの方が鮮やかでしょうか。灰色っぽい方の地色を背景にしたオレンジ色の方が鮮やかに見えているはずです。このように、色の強さに対して見え方が変わる現象を、「彩度対比」と呼びます。もし注目させたい部分を、より鮮やかに見せたい場合は、背景色の彩度を落とせば、より鮮やかさが増します。

 図2-4は、色と色が接する縁の部分に注目してください。色と色とが接している縁の色が暗くなったり、明るくなったりしています。暗い色に接している部分は本来の色よりも明るく、明るい色に接している部分は本来の色より暗く見えているので、結果として、デコボコして見えます。このような現象を、「辺縁対比」と呼びます。

 図2-5は、同じ大きさでも、地色と図色(背景色に囲まれた色)の関係次第で、大きさが変わって見えます。おおまかに言えば、明度では明るい色(高明度色)の方が、色相では暖色系の方が膨張して、前の方に出てきているように感じます。このような現象を、「膨張収縮」もしくは「進出後退」と呼びます。

 このような私たちの色の見え方を知って色を調整することは、伝えたいことを、伝えたい人に、直感的に分かってもらうための1つの技術と言えます。

財団法人日本ファッション協会
日本有数の温泉地、長野県諏訪市に生まれる。東京造形大学彫刻科を卒業後、求人情報会社で営業を担当。彫刻家の助手をつとめた後、飲料、食料の市場調査会社にて「色のイメージ調査」を担当。広告代理店にて経理を担当後、現職(社)日本流行色協会(現・財団法人ファッション協会流行色情報センター)へ。現在は、カラートレンド情報に関する情報発信、講演、執筆、インターカラー日本代表、カラー戦略策定等のコンサルティング、色彩有識者のネットワーク作り、色彩教育等、「色事すべておまかせ!」をモットーに日夜仕事に励んでいる。http://www.jafca.org/

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