コンテンツ管理は本当に必要か?
ミドルウエアとしてのECM
ここまで、ファイル管理や情報の入れ物としての「文書管理」、プロジェクト単位での情報管理や日々の業務の一部となる「コラボレーションツール」に触れてきたが、「エンタープライズコンテンツ管理(以下、ECM)」というエリアも思い出していただきたい。
ECMとコンテンツ管理との大きな違いは、容量や遠隔地などから見た大規模利用や、ほかシステムとの連携できる拡張性、また専門性の高い要件に応えられる要素技術の完成度の高さである。主な製品にEMCのDocumentum、IBMのFileNet、OracleのUniversal Contents Managementがあげられる。
例えば、J-SOX対応の証憑(しょうひょう)管理、ローン審査、製造現場での安全基準管理のためには、業務に必要な情報に過不足なくアクセスできる必要がある。専用のシステムを作るには、システム開発を1からコーディングをすることも可能であるが、実はECMをバックエンドのミドルウエアのようにして使用することで、開発コスト削減とバージョンアップのメンテナンス性を向上できる。
ECMは、アクセス権、情報の分類、BPM、レコード管理などの機能をシステム開発のパーツとして使用し、表向きはカスタマイズした専用アプリケーションのように扱うことができる。しかも、カスタマイズはコーディングではなく、コンフィグレーションでできる。これは導入時だけでなく、アップグレード時にも効率性が高まり、互換性がある同じ機能はバックエンドのECMのバージョンを上げるだけで利用が継続できるのである。
高価と思われるECMが1からのシステム開発よりもコストを抑えられるのは、多様な機能の有無や導入時の開発費だけの比較ではなく、それを大規模に使用できることやシステムの長期的なメンテナンス性にある。
ECMで、何ができるのか?
ECMの主な機能の1つにBPM(Business Process Management)がある。このBPMに象徴されるようにECMの大きな特徴は、静的なコンテンツと動的な業務をつなぎ合わせることであると筆者は常々考えている。例えば、ナレッジワーカーの究極である医者が、どんな症状の患者にどの薬を処方するのかを、総合的な状況を見て判断するのと同じように、どの情報をいつ使用するのかを支援するのがコンテンツ管理システムの最大のミッションであるだろう。
また、どの患者にどのような処置をしたのか記録が残ることも重要である。ECMでは、監査証跡やレコード管理の機能によって、システムが自動的に記録を残し保管してくれるおかげで、人手を介すことなく、システム自身が情報の妥当性を証明してくれる。ヒューマンエラーを減らすだけでなく、担当者が管理業務から開放されてほかの専門業務に集中できることが、業務プロセスの最適化の目的の1つである。
さて、この連載の最終回では、さまざまなデータが混在するファイルサーバーをさらに活用していく方法について考えてみた。コンテンツ管理を議論することは、情報の保管から活用への視点の切り替えることでもある。その先の業務改善に近道はなく、その悩むプロセスが非常に重要なのであって、悩んでいるのは自分の会社だけではないと安心していただきたい。
既存システムであっても新規導入であっても、ちょっとした運用のコツを意識することで、みんなが好んで使うようになり、情報の新鮮さが保たれ活発なコミュニケーションを促すことができる。システムが使われない、運用がうまくいかない、と悩んだら、紹介した4つのコツを思い出して、どうすれば改善できるか頭をひねってほしい。