最新版Ubuntu登場

2008年6月5日(木)
小林 準

Ubuntuの開発プロジェクトとその継続性

 Ubuntuの開発プロジェクトは、南アフリカ出身の実業家で、セキュリティ企業を興して成功したマーク・シャトルワース氏により開始されました。

 そして、シャトルワース氏がリーダをつとめるコミュニティによって開発され、無償で提供されています。

 Linuxディストリビューションの開発には、さまざまなコストがかかります。なぜ、無償で提供されているUbuntuが、多くのユーザに支持されるほど高い品質のものを、期日どおりにリリースできるのかは、誰もが疑問に思うところでしょう。ここで、それを可能にしている2つの理由を紹介します。

 第1の理由は、Ubuntuはオープンなプロジェクトであり、多くのボランティアによって支えられているということです。Ubuntuに魅力を感じた世界中の人々が、さまざまな形でUbuntuの開発や普及に協力しています。多くのフリーソフトウェアと同様、開発をオープンにすることで世界中の優秀な開発者の協力を得ることができ、その結果として品質の高いディストリビューションが作り上げられています。

 第2の理由は、シャトルワース氏が設立したCanonical社により支援されているという点です。Ubuntuの大部分はボランティアによって作られていますが、それだけでは必要な作業がリリース日までに行われるという保証はありません。そこで、やる人がいなければ必要な作業は、Canonical社の社員によって行われます。これにより、Ubuntuは必要な機能を備えた状態で、遅れることなくリリースを行うことができます。

フリーで最高のOSを!

 Ubuntuは今後も継続的に開発されていくのかという点も、サーバOSとして採用する立場からは気になるところです。Canonical社が突然Ubuntuの開発から手を引けば、開発がストップしてしまうのではないか、あるいは、買収されればUbuntuが有償になるのではないか、と考える方もおられるでしょう。

 まず、Canonical社はシャトルワース氏がUbuntuの開発を始める際に興した企業です。そして、シャトルワース氏は「フリーソフトウェアで最高のOSを作る」ということを目標に掲げ、自らの資金を投じています。Ubuntuプロジェクトを維持するためには、将来的に利益を上げることは必要ですが、短期的に利益を上げることを目指しているわけではありません。

 第一の目標は、Ubuntuを世界中で使われるOSに育て上げ、フリーソフトウェアをより広く普及させることです。そのため、同氏が急に手を引いたり、買収に応じるといった判断を行う可能性は極めて低いと言えるでしょう。

 また、もしCanonical社やシャトルワース氏がUbuntuの支援をできない状況に陥ったとしても、シャトルワース氏により1,000万ドルの創業資金で設立されたUbuntu財団が、Ubuntuの開発を引き継ぐこととされています。

 以上の通り、Ubuntuはどんな事態が起こっても開発やサポートを継続できるよう対策がとられています。Ubuntuの継続性は、一般的な企業の製品よりも信頼できるレベルにあると言ってよいでしょう。その点においては、安心してUbuntuを利用していただければと思います。

 次回からはいよいよUbuntu 8.04 LTSの実践的なインストールや使い方を解説してきますので、お楽しみに!

Ubuntu Japanese Team
Ubuntuプロジェクトのオフィシャルメンバーで、Ubuntu Japanese Teamの代表として活動している。最近は、業務でUbuntuをサーバOSとして利用することも多くなってきた。著書に「独習Linux」(翔泳社、2007年1月)がある。http://junkobayashi.jp

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