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SaaSビジネスにおけるアジャイルの事例

2009年4月24日(金)
倉貫 義人

SaaSビジネスにおけるアジャイル開発のまとめ

 SKIPaaSでは、Amazon EC2というHaaS(Hard as a Service)をインフラとして活用して、SKIPのSaaSを提供しています。HaaSは、ハードウエア資源をインターネット越しにサービスとして提供します。時間や容量、転送量等に応じて課金される形でインターネット上のハードウエア資源を自由に使うことができます。そして、このHaaSを活用したクラウドコンピューティングは、アジャイル開発と非常に相性が良いです。

 アジャイル開発では、主にソフトウエア開発にフォーカスをあてて、変化に対していかに柔軟に対応していくかということに重点を置いていました。ただし、これはあくまでソフトウエアの部分であり、システムを構成するために必要なハードウエアの調達などについては触れていませんでした。よって、一般にシステムを導入するとなったら、いくらソフトウエア部分がアジャイルに対応していくとしても、ハードウエアの構成は買い増しやディスク増量などが柔軟にできないために、ある程度計画重視の進め方にせざるを得ませんでした。

 しかし、Amazon EC2のようなHaaSを使うことで、システムの稼働開始当時は必要最低限の構成で開始した上で、必要に応じてハードウエア資源を柔軟に拡張できるようになります。このことは、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアも含めてアジャイル開発を実践できるようにしてくれます。HaaSを使うと、小さくスピーディーにサービス開始できるといった点でもアジャイル開発と相性が良いと言えます。

 SaaSビジネスで大事なことは、ソフトウエアを完成させることではなく、サービスとして提供することです。サービスを提供し続けるためには、世の中の変化や、顧客の要望などを受けて、サービスを改善させていく必要があります。その際に重要になるのは、「計画」と「フィードバック」です。

 アジャイル開発に計画が重要だと言うと違和感を抱く方もいるかもしれませんが、計画がなければ、変化に対応するための変更なのか、迷走しての変更なのかわからなくなります。計画を作るのは重要ですが、その計画に従うだけでなく、見直していく必要があるということです。そのインプットになるのが、フィードバックです。フィードバックがあるからこそ、アクセルを踏みすぎたかどうかがわかるのです。また、その際の基準が計画になります。計画とフィードバックはワンセットで価値があるのです。

 アジャイル開発方法論の1つである「eXtreme Programming(XP)」では、アジャイルなプロジェクトを進めることを車の運転に例えて説明しています。最初に狙いを定めてアクセルを踏み続けるのではなく、目的地に向かって少しずつ進みながら、ハンドルを操作して道から外れすぎないように制御するのです。つまり、走りながら、計画の見直しをしていくということです。

★アジャイルの価値観(その4)
「計画に従うこと」よりも「変化に対応すること」を重視する。
(そのために、「計画を作って、直し続けること」が重要)

アジャイル開発についての総括

 アジャイル開発で大事なのは、単なる繰り返し型の開発手法ととらえるのではなく、ビジネス環境やユーザーのニーズなど、起こりうる“変化”をいかに乗り切るか、に重点を置いて考えることです。そのための最も重要なファクターとして、“人”であったり“コミュニケーション”“モチベーション”であったりといった部分に着目しているところが、これまでの開発との大きな違いです。この価値観を忘れてしまっては現場にアジャイル開発を定着させることはできないでしょう。

 これまで4回の連載で紹介したアジャイルの価値観をあらためて紹介しておきます。これらは、アジャイルマニフェスト(http://agilemanifesto.org/)として、XP(eXtreme Programming)のケント・ベックや、達人プログラマーのデイブ・トーマスら、それぞれの開発方法論の提唱者たちが集まり、宣言したもの(図3)を日本語にしたものです。

・「包括的なドキュメント」よりも「動くソフトウエア」を重視する
・「契約上の交渉」よりも「顧客との協調」を重視する
・「プロセスやツール」より「人と人との相互作用」を重視する
・「計画に従うこと」よりも「変化に対応すること」を重視する

 本稿が、皆さまの現場でアジャイル開発を導入するきっかけになれば幸いです。

TIS株式会社 SonicGarden

TIS株式会社にて、クラウドを中心とした新規事業を行うための「SonicGarden」を立ち上げ、代表カンパニー長をつとめる。また、2009年まで日本XPユーザグループの代表をつとめるなどアジャイルの普及を行ってきた。主な著作:バグがないプログラムのつくり方(2004,翔泳社)など。
Twitter:@kuranuki(http://twitter.com/kuranuki
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