センサーを使ったロボットの自律制御

2009年6月10日(水)
軽部 禎文

一定間隔でタスクを実行する

 この問題を解決するために、光センサーの値を500ミリ秒間隔で表示しながらライントレースを10ミリ秒間隔で実行し、2つの処理を周期的に行うことを考えてみます。

 「光センサー値表示」タスクと、「ライントレース」タスクを分けて、タスクに優先度を付けます。ここでは、「ライントレース」の優先度を高くしました。さらに、それぞれのタスクの中で作られていたループ処理は取りのぞき、タスクを決められた時間間隔で実行するために、周期ハンドラを作成します。

 この周期ハンドラは単純にタスクを起動します。静的コンフィギュレーションファイルの中で決められた時間間隔で起動するようにします。こうすると、表示用タスクは、500ミリ秒間隔で表示されるようになり、ライントレース用タスクは、10ミリ秒間隔で実行されるようになります。

※ソースファイルについては、1ページ目でダウンロードしたzipファイルの中の「view_linetrace」を参照してください。

●view_linetrace.cfgから抜粋
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//周期ハンドラ0用の関数
void cyc0(VP_INT exinf) {

  iact_tsk(TSK0);
}

//タスク0用の関数
void tsk0(VP_INT exinf){

  //モニターを表示する
  ecrobot_debug1(ecrobot_get_light_sensor(NXT_PORT_S3),0, 0);

  ext_tsk();
}

//周期ハンドラ1用の関数
void cyc1(VP_INT exinf) {

  iact_tsk(TSK1);
}

//タスク1用の関数
void tsk1(VP_INT exinf){

  if(ecrobot_get_light_sensor(NXT_PORT_S3)     //明るいとき
    ecrobot_set_motor_speed(NXT_PORT_B, 50);
    ecrobot_set_motor_speed(NXT_PORT_C, 0);
  }else{
    //暗いとき
    ecrobot_set_motor_speed(NXT_PORT_B, 0);
    ecrobot_set_motor_speed(NXT_PORT_C, 50);
  }

  ext_tsk();
}
============

 これで、2つのタスクを処理できるようになりました。

ライントレースしてタッチで止まる

 さらに、「光センサー値表示」をしながら「ライントレース」を行い、タッチセンサーが押されると止まり、再び押 されるとライントレースを再開するというプログラムを作成しました。バンパーは、教育用レゴ マインドストーム基本セットの中の組み立て図を参考にして作成し、余っている部品を使って、ロボットの前面に付けました。

 タッチセンサーの反応を見るには、ecrobot_get_touch_sensor (入力ポート)という関数を使います。タッチセンサーが押されるとTRUEを返し、押されていないときはFALSEを返します。

 「タッチセンサーが押されると止まる」という処理を実現するために、タッチセンサーの状態を監視するタスクを作成します。このタスクの周期が長いとタッ チセンサーの反応が悪くなります。また、優先度が低いとほかのタスクを実行しているときにタッチセンサーを押しても反応しないことが考えられます。

 そのため、優先度は3つのタスクの中で一番高くし、処理を行うタイミングは10ミリ秒間隔としました。そのためタッチセンサーの反応は、必ず10ミリ秒 間隔で得ることができます。

※ソースファイルについては、1ページ目でダウンロードしたzipファイルの中にある「linetrace_touch」フォルダを参照してください。

■そのほかのセンサー

 ここまで、光センサーやタッチセンサーを使ってロボットを制御しました。標準のセンサー以外にも、ジャイロセンサーや角速度センサー、カラーセンサーや 方角センサーなど、さまざまな拡張用センサーを手にいれることで、さらにクールなロボットが作成できるでしょう。

 今回は、教育用レゴ マインドストームNXTを、nxtJSP(μITRON)の環境で一通り動かすこと、またその仕組みについて説明しました。

 次回は、ソフトウエアモデルと実装の関係や、教育を目的としたロボコンの紹介などを行っていく予定です。お楽しみに。

============

教育用レゴ マインドストームNXTやセンサーなどの拡張パーツは、教育用レゴ製品の正規代理店である(株)アフレル(http://www.afrel.co.jp/)で取り扱っています。

【参考文献】
社団法人 トロン協会『組み込みシステム 実践プログラミングガイド ITRON仕様OS/T-Kernel対応』株式会社技術評論社(発行年:2008)

「TOPPERSプロジェクト/JSPカーネル」(http://www.toppers.jp/jsp-kernel.html) (アクセス:2009/06)

株式会社アフレル
(株)アフレル所属。システム開発の経験を積んだ後に、ロボットを使った教育教材の開発や指導に従事。子供から大人まで、いかに楽しく学んでもらえるか悩みながら、日々、精進中。
http://www.afrel.co.jp/

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