ETロボコンを仕事に役立てる
組み込み技術を競い合うETロボコンとは
ETソフトウエアデザインロボットコンテスト(愛称:ETロボコン)のチャレンジャーは、今年もすでに日本各地で熱い活動を繰り広げています。ETロボコンは、組み込みソフトウエア分野の技術教育をテーマにしたロボコンで、すべてのチームが同じハードウエア(車体)を使うことで、ソフトウエアの優劣を競います。競技の優劣だけではなく、分析・設計にUMLなどを用いて作成したモデルも審査するという点が大きな特徴です。
2002年にUMLロボコンという名前で誕生してから9年がたち、当初20チーム100名だった参加者は、2009年には354チーム1700人にまで成長しました。2010年は、さらに実施規模が拡大し、札幌、金沢、那覇でも地区大会が開催されるそうです。また、参加者に対しては、「モデリング入門トレーニング」「モデリング実践トレーニング」「モデル実装トレーニング」といった公式トレーニングが提供されるほか、各地区が独自の勉強会やセミナーを開催しています。
これらの教育支援もあって、高校生、専門学校、高専、大学、からIT企業、ET企業まで、幅広い層からチャレンジャーが集まるコンテストになっています。
2010年のETロボコンでは、2009年と比較して、走行体・コース・難所が変わっています。どの様な変更があったのか見てみましょう。走行体は、教育用レゴ マインドストームNXT[*1]を使った2輪倒立振子ロボットなのは変わりないのですが、2009年の走行体と比べるとタイヤの位置が内側から外側に代わっていて、安定性が増しています。筆者の所属するアフレルでは、チャレンジャー向けにETロボコン用の部品を調整したキットを販売しています。
図1:新しくなった2010年の走行体 |
競技は、黒線が描かれた走行コースをリアルタイムで検出しながら自律走行するライントラッキングレースですが、昨年と比べて難所と呼ばれる部分が変更されたようです。
アウトコースには「ショートカット」に代わって「シーソー」が、「トレジャーハント」に代わって「階段」が新設され、インコースには「ミステリーサークル」と呼ばれる2つの円形コースが設置されました。立体的なコースを走ることになり、チャレンジしがいのあるコースになっています。見学する側も盛り上がること間違いなさそうです。詳しい競技規約については、ETロボコンの規約ページを参照してください。
図2:ETロボコン2010コースの様子(クリックで拡大) |
ETロボコンから何を学んでいるのか
ETロボコンに多くのチャレンジャーが集まってくるのはなぜでしょうか。ETロボコン2010のWebサイトには、チャレンジャーの参戦記のページがあります。ここに掲載されている次のようなコメントには、ETロボコンのどんなところが良いと感じているのかを教えてくれています。
- モデリングを学べる。
- ものづくりのプロセスを学べる。
- プロジェクトを進めるためのノウハウが身に付く。
- オブジェクト指向界の第一人者からコメントをもらえる。
- 社外の人たちとの交流から、思わぬ気づきや学びがある。
- 参加することによって、知識の広がりを感じる。
このようなコメントから、チャレンジャーにはETロボコンをこれからの仕事に役立つ経験をする疑似的なプロジェクトと考えている人がいるのがわかります。実際の仕事ではいきなり導入できないような、新しい技術や手法を試す機会として活用しているのでしょう。
また、企業によっては、新入社員がチームを組んで出場し、新入社員教育の総仕上げとしているところもあります。
チャレンジャーの目標も、完走を目指すこと、モデルの質の高さを目指すこと、最速を目指すことなど、さまざまです。チャレンジャーごとに目標は異なり、自分たち自身の目標や目的を設定して、チャレンジできるというのも魅力の一つでしょう。
多くの仲間を見つけ、コミュニケーションできる機会があり、ほかのチャレンジャーから多くの刺激を受けることができる。また、実際の仕事現場ではなかなかできない体験ができる良い場になっていることが感じてもらえるのではないでしょうか。