中小企業のサーバー管理・監視体制

2009年7月14日(火)
藤崎 正範

管理者は、最初は1人。

 こんにちは。ハートビーツの藤崎と申します。本連載第2回は、サーバー管理の実態から具体的な運用のポイントをご紹介したいと思います。

 意外に思われるかもしれませんが、中小企業で「サーバー管理担当者って実は私1人なんです」ということがよくあります。特にベンチャーともなると開発者 がサーバーの管理や監視を兼任していて、専任が1人もいないということもザラです。

 今回は自社サービス提供用のサーバーを想定して、具体的な例を出しながらサーバー管理・監視のポイントを明確にしていきたいと思います。

 立ち上げたばかりのプロジェクトではサーバー管理者は当然1人です。サーバー管理を1人でやるにあたり、押さえておきたいポイントは、以下の4点が挙げられます。それそれのメリットと注意点については、図1-1を参照してください。

1)情報の管理
 管理するべき情報は多く、項目によって用途やデータの意味もさまざまです。表計算ソフトなどをうまく使い、管理するべき情報の整理を心がけます。その資料を見れば、必要な情報を入手できるというレベルまで落とし込みましょう。

2)作業の自動化
 サーバー管理は細かい作業が多く、1人だとなかなか手が回らないことが多くなります。そこで、普段から自動化できるものはできるだけ自動化して工数を減らしておきましょう。いざという時のために余裕を作っておくのもサーバー管理者としての役割です。

3)キャパシティーの把握・チューニング
 サービス立ち上げ当初は、どれくらいのアクセスがくるか想像もつきません。しかし、サーバー管理者として、どの程度のアクセスに対応可能かの把握は重要です。
 JMeterなどを使い、事前に負荷テストを行い、どれくらいの規模まで対応できるか把握しておくことをお勧めします。

4)変化の把握
 サーバーのリソースは有限です。さまざまな要因によりCPU負荷やトラフィック量が変わります。その変化を把握し、現在のリソースで今後安定したサーバー運用が可能かどうかを判断していきます。


 基本的にサーバー管理者のタスクとしては、短時間でこなせるものが多く、作業が煩雑になりがちです。その中でも、重要なポイントを押さえて時間配分を考えていきましょう。

 案件が大きくなるにつれてサーバー環境も徐々に変わっていきます。技術も日々進歩しますので、日ごろからどんどん空き時間を勉強に割くことをお勧めします(楽しいですしね!)。

ポイント メリット 注意点
1)情報の管理 ・一目で情報が確認できるので、障害時にも状況把握が的確に短時間で行える。
・打ち合わせの資料作成が楽になる
・常に最新の情報を把握できるよう、資料の更新を怠らないようにする。
・二重管理となる情報のないよう留意する。
・ドメインやSSL証明書、ホスティングの契約更新作業など、忘れてはいけないものについてはリマインダーを設定しておく。
2)作業の自動化 ・本来の目的ではないルーティンワークから開放され、ほかのやるべきことに時間を割くことが可能。 ・自動化したものは終了時に成功・失敗まで判定し、通知されるように実装する(これを忘れるとまったく管理していないのと同様になってしまうので要注意)。
3)キャパシティーの把握・チューニング ・ボトルネックを事前に発見し、対処できる。
・事前に回避できる事象を把握できる。サービス開始後にあわてることも少なくなる。
・改善作業についてはどうしても開発チームに依存しなければいけない場合がある。改善内容について的確に説明できると開発チームとの信頼を築ける。
4)変化の把握 ・プログラムのバージョンアップなどに起因する負荷上昇なども把握が可能。 ・定期的にリソース変化のチェックを行うようにする。
・システムの規模・種類によるが、急激に伸びているサイトではない限り、1週間に1度程度を目安に行う。

図1-1:1人でサーバー管理を行うときのポイント

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やっておくと良いこと メリット 注意点
1)開発チーム・企画チームとの連携 ・システム特性を把握することで、どのような障害が想定されるか事前に把握できるようになる。
・いざ障害になったときにもプログラム側かインフラ側かなど、障害切り分けをするときの材料にもなる。
・開発者と会話をするために、システム開発についても事前に勉強しておく必要がある。システムについて把握・改善する姿勢と技術力をうまくアピールし、頼られるサーバー管理者になろう。
2)ビジネスレイヤを意識したキャパシティー・プランニング ・アクセス数の把握だけではなく、売り上げを意識した数字をチェックすることで、経営側に重要な指標を提示できる。 ・なにが本当に重要な数字かをしっかり確認した上で実装しよう。
3)サーバー運用経験者のアサイン ・判断に悩んだときに相談できる相手がいるというのはとても安心できる。 ・コストが発生するので、費用対効果をしっかり理解・説明できるようになった上で社内稟議(りんぎ)を通す必要がある。

図1-2:サーバー以外に気にしておくといいこと

株式会社ハートビーツ
電気通信大学の学生時代に運用管理から業界入り。MSPベンチャーの立ち上げを手伝う。その後、2年間フリーのサーバーエンジニアを経て、2005年 株式会社ハートビーツ設立、代表取締役に就任。現在に至る。メインPCはUbuntu。オープンソースをこよなく愛す。福岡県北九州出身。http://heartbeats.jp/

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