IoT×ブロックチェーンで業界常識を破壊する - ハッカソン最優秀賞「Cargochainプロジェクト」とは
- どういったことでブロックチェーンとIoTに興味を抱いたのですか?
シャイナー氏: 多くの人たち同様、2012年にビットコインについて知ったのがきっかけです。ビットコインの裏にあるコンセプトに興味をそそられ、私もなにかやってみたいと思ったのです。最初はビットコインの発掘をやっていましたが、その後スイスと英国でスタートアップを立ち上げました。昨年は、主にスマートシティとIoTやブロックチェーンを組み合わせて、パワフルな使い道を生み出せる分散的なプラットフォーム(IOTA)を作ることに専念していました。
私は、スマートシティが2つの中心的な要素で成り立っていると考えています。それは全員参加型のイノベーションとIoTです。どちらもブロックチェーンを使うことで可能となり、我々が取り組んでいることもそれに関することです。
- IOTAがどういったものか教えてください。これの主な用途はどのようなものでしょう?
シャイナー氏: 『IOTA』とは取引の決済やデータの転送に使える分散型の台帳です。IOTAはその特性(スケーラビリティ、軽量性、手数料無料)により、IoTにとって完璧なソリューションとなっています。我々は、IOTAが「マシンエコノミー」を現実のものにするバックボーンになると考えています。というのも、これまで不可能だった新しい機械のインタラクションを可能にするものだからです。マシン同士で決済ができるだけでなく、互いにやりとりし、分散型台帳を通してデータを安全に転送することもできます。
- ビットコインのブロックチェーンの例に見られるとおり、ブロックチェーンは遅く費用も高く付き、一般的なスケーラブルなデータベース技術の逆を行くものだと批判されています。では、IOTAの場合は何が違うのでしょうか? あるいは、これらの批判にどう答えるのでしょう?
シャイナー氏: IOTAの技術的イノベーションとは、『Tangle』という全く新しいブロックチェーンのデザインです。ブロックを除外し、有向非巡回グラフを利用します。(これについてのホワイトペーパーはこちらを参照。)
Tangleがコンセンサスを得る方法は完全に自動的なものです。つまり、ブロックチェーンのようにコンセンサスが分断することがないということです。このため、IOTAはスケーラブルであり、ブロックのために10分待たされるということもなく、なにより処理の手数料がかかりません。これらによりIOTAは、非常に少額の支払いを行う必要があるM2Mのやり取りにおける完璧なソリューションといえるのです。
さらに、IOTAの暗号化は量子コンピューティングの処理能力に耐えることができます。IOTAはそういう意味でも初の分散型台帳なのです。これは技術的にも大きな達成といえると思います。IOTAは、Ethereum以来、最もイノベーティブなプロジェクトでしょう。
- CargoChainのアイデアはどこから生まれましたか? また、どういった人たちがプロジェクトに関わっており、プロジェクトの段階はどの程度のものなのでしょうか?
シャイナー氏: 『CargoChain』の最初の構想を得たのは、上海ブロックチェーンハッカソンのためのリサーチを進めていた6ヶ月ほど前です。ブロックチェーンを使うことで解決できる問題を探すという作業をしていました。こういった取り組みに臨んでいるとき、ブロックチェーンが何に応用できるかを他者の観点から考えています。
国際取引で興味深いところは、それについて深く知るに連れ、その業界のやり方がいかに時代遅れなものか、そして、ブロックチェーンとIoTでそのやり方を根底から改善できることに気付かされる点です。
その後、このアイデアで上海ブロックチェーンハッカソンでは優勝しましたが、我々はIoTとブロックチェーンをどう組み合わせるかをより慎重に考え、国際取引のための新しいプラットフォームづくりに取り組むことになりました。また、我々は4月に行われたドバイのEmirates国際銀行でのコンペにも優勝し、先月もGTECで準優勝を獲得しました。現在、夏に我々のコンセプトを証明するためのパートナーを募っているところです。
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- 船舶輸送や製造業というのは大変古い体質の業界ですし、いうまでもなく紙の書類での業務が幅を利かせています。CargoChainというコンセプトをどう売り込むのでしょうか?
シャイナー氏: 今使っているものより10倍良いものを作る、ということでしょうね。現在は、自分たちのコンセプトを大規模な企業のサプライチェーンで運用するという戦略に注力しているところです。そうすることで実践的な知見が得られるだけでなく、認知度も上がります。我々の開発はフィードバックの繰り返しで成り立っており、自分たちのプロダクトが業界から多くを得て、取引に関わる人すべての問題解決に役立つものに出来ればと思います。
- 次に考えていることはありますか?
シャイナー氏: まずはIOTAに集中しています。というのも、CargoChainを含め、我々が考えているものの基礎となるからです。IOTAは、ひと月以内にリリースされ、これを通じてIoTとブロックチェーンの全く新しいユースケースのエコシステムを確立するつもりです。我々はこれを非常に楽しみにしており、より多くのスタートアップやその他企業がこのエコシステムを形作るのに加わってくれればと思っています。CargoChainについては、概念を実証するものを今年の夏に公開する予定です。
- ありがとうございます。
日本でもブロックチェーン技術の幅広い分野への適用可能性が期待されているが、もちろん課題もあり、そのひとつにその技術検証やビジネス実証がいまだ不十分であるというものがある。今回の取材では、この課題の解決の糸口が見えてきたと感じるがいかがだろうか。シャイナー氏同様、我々も全く新しいエコシステムの確立とCargoChainの概念の実証を楽しみにしたい。
ReadWrite[日本版] 編集部
[原文]
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