フリー系OSを比較検討する

2009年7月24日(金)
大村 幸敬

自由に使える「フリー」なOSとは?

前回まではやれライセンスだ、サポートだと堅苦しく書いてきましたが、今回はフリー系のOSということで、少し肩の力を抜いて書きたいと思います。

フリー系という書き方をしましたが、これらはLinuxのようにOSのソースコードが公開され、改変の自由があり、自己責任ながら自由に使えるOSたちを指すため、具体的にはオープンソースのOSといったほうがよいかも知れません。無償のOSといわれることもありますが、単に無償なのではなく自由に使用できるという意味で、ここでは「フリー系OS」と呼んでいます。

フリー系OSをサーバーOSとして使用する場合、その最大の特徴は2点あります。1つは優れたオープンソースソフトウエア(OSS)をベースプラットホームとすることで、工夫次第で高機能・高信頼なシステムを安価に作れる点です。もう1つはサポートや保障が提供されず基本的に自身で問題を解決しなければならないという点です。これらの特徴はいずれも技術者の視点から見ると自身のスキルを向上させるために有意義であることがわかります。それぞれの特徴を順に見ていきましょう。

今日のシステム開発において、OSSは重要な位置を占めます。ApacheやJBoss、MySQLといったエンタープライズクラスのミドルウエアが存在するほか、RubyやPHPといった言語系OSSによるシステム開発も盛んに行われています。最近ではHinemosなどOSSによる運用監視も行われるようになりました。当然ながらこういったOSSはフリー系のOS上で最初に実装されることがほとんどです。そのためOSSを中心に据えたシステム構築であればフリー系のOSを選定することが自然でしょう。

単にOSSを使うだけであれば商用のLinuxでもよいのですが、商用Linuxではディストリビュータがリリースした構成しかサポートされません。一方フリー系のOSであれば自己責任の範囲において徹底的にカスタマイズし、安価に利用することができます。技術力さえあればどんなシステムでも作れてしまうことがフリー系OSの魅力です。

もう1つの特徴であるサポートについては、開発プロジェクトの方針・安定性についての目利きが必要となります。

サーバーOSとして利用するからにはOSの安定が必要ですが、フリー系のOS開発プロジェクトの方針はさまざまです。中には新しい機能を早く取り入れることに特化したものや、クライアントとしての使い勝手に特化したものなどもあり、すべてがサーバー用途に適しているわけではありません。安定した機能の提供やセキュリティーパッチの対応をきちんと行っているOSを見極める必要があります。

フリー系OSのプロジェクトはボランティアベースで行われていますので、開発者のモチベーションが下がってしまったり、中心的な開発者がほかのプロジェクトに移ったりすることで、開発が停止してしまうこともあります。開発が停止してしまうとセキュリティーパッチなども提供されなくなってしまうため、フリー系のOSを使用する場合はプロジェクトの安定性についても見極めが必要です。

ここまで利用する側から見てきましたが、フリー系のOSを使う上でぜひ知っていただきたいのは、ここまでプロダクトを作り上げてきた開発者に感謝し、自身も開発に貢献するというオープンソース的な考え方です。カスタマイズの自由度の高さは自身の貢献によってよりよいプロダクトにすることができる、という意味でもあり、サポートはないがソースコードがあるということは、スキルがあれば障害発生の原因を自分で徹底的に調べ、品質向上に役立てることができる、ということを指します。個人的な思いですが、フリー系のOSを利用する場合は、単に無償で便利なOSであるというだけでなく、オープンソースの精神を少しでも理解して利用してほしい、と願っています。

カーネル pkg管理 名称 特徴
Linux RPM CentOS RHELクローン
RPM Fedora RHELの開発版の位置づけ
RPM openSUSE SLESの開発版の位置づけ
deb Debian GNU/Linux 完全にフリーであることに注力
deb KNOPPIX Debianベース。CDブートに特化
deb Ubuntu Debianベース。使いやすさに注力
pkgtool Slackware Linux黎明期に人気高し
BSD ports FreeBSD x86主体のBSD
ports OpenBSD セキュリティーに特化したBSD
ports NetBSD 高移植性に特化したBSD
Solaris SVR4/IPS OpenSolaris 商用のSolarisがフリー化

表1:主要なフリー系サーバーOS

インテック
株式会社インテック ITプラットフォームサービス事業部所属。社内のLinux/OSS事業立ち上げに参画後、金融機関を中心に大規模システム基盤の提案・構築・運用サポートを担当。
Linuxから仮想化を経て、現在はクラウドの中身が気になる日々。
http://www.intec.co.jp/

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