フリー系OSを比較検討する
FreeBSDを比較検討する
FreeBSDはLinuxとは異なり、企業からの協力を受けることが少なく、そのため知名度に欠ける感があります。しかし実際は米Yahoo!が全面採用していて、2000年の少し前くらいからPC-UNIXを触っていた人にはよく知られているOSです。筆者も最初に触ったのはFreeBSD 2.2.8でした。FreeBSDは日本国内で広く普及していたNECのPC-98シリーズで動作したことから、古参の日本人開発者が多くいることも特徴です。
コミュニティーが派生せず、日本人開発者が多いためか、オフィシャルサイト(http://www.jp.freebsd.org/)には「FAQ」「ハンドブック」などの良質なドキュメントがそろっています。筆者も最初に触りだしたころはよくお世話になりましたが、基本的な知識を一通り押さえるためには今読んでもよいドキュメントです。1つのプロジェクトで長い間運営を続けており、情報の蓄積が多いことがFreeBSDのよい点といえるでしょう。
現在の最新バージョンは7.2-RELEASEです。FreeBSDには-STABLEと-CURRENTという2つの開発ブランチ(枝)があり、-STABLEは安定版、-CURRENTは新しい機能を取り込んだ開発版という位置づけです。正式なフルリリース版である-RELEASEは-STABLEブランチからリリースされます。FreeBSDはリリースのマイナーバージョンが奇数のほうがより安定しているとされ、リリースに対するセキュリティーサポートもマイナーバージョンが奇数のものと、そのメジャーバージョンの最終版に対しては特別にリリース後24ヶ月のサポートが提供されています。6.x系では奇数番リリースの6.3と最終版の6.4がこれにあたります。
Debianにdebとaptがあったように、FreeBSDにはpackagesとportsという仕組みがあります。packagesはバイナリパッケージを導入するための仕組みです。FreeBSDにはsysintallというシステム設定変更用の簡易GUIがあり、packagesと連動することでカテゴリ分けされたパッケージツリーから指定したものを導入することができます。インストール元としてCDやDVDのほか、FTPサイトなども指定できます。
一方、portsはソースコードを自動的にダウンロードしてコンパイル、インストールまでを一括して実施してくれるツールです。aptなどに似ていますが、バイナリではなくソースコードをダウンロードする点が異なります。一見するとソースコードをコンパイルする手間がもったいないと思えますが、一般的なオプションでコンパイルされたpackagesと異なり、そのシステムに最適なコンパイルを行うことで、より高速なコードが生成されるといったメリットがあり、玄人好みのツールといえます。
2000年ごろ、高負荷時の性能はLinuxよりFreeBSDのほうが上、といった話をよく聞きました。Linuxも2005年ごろからカーネル2.6の採用により高信頼・高性能を実現していますが、FreeBSDの最新メジャーバージョンである7.0のベンチマークではLinuxを上回ったという報告もあります。高速、高信頼なフリー系OSが必要な場合はFreeBSDの採用も視野に入れてみるとよいでしょう。
No. | 評価ポイント | 評価 | コメント |
---|---|---|---|
(1) | 業務系アプリケーションの対応状況 | ★☆☆☆☆ | 商用のアプリケーションは正式対応していない。OSSでも再コンパイルが必要なものもある。 |
(2) | 既存運用・構築経験への適合度 | ★☆☆☆☆ | 以前はSun Solarisのユーザがよく利用していたが……。Linuxからの移行は慣れが必要。 |
(3) | ハードウエアの対応状況 | ★★☆☆☆ | 多くのハードメーカが非公式ながら動作確認情報を出している。 |
(4) | 運用系ソフトウエアの対応状況 | ★★★★★ | Linux用バイナリのみの提供で動作しない場合が多い。SNMPによる監視は可能だが……。 |
(5) | OSのサポート期間 | ★★☆☆☆ | リリース後2年間のサポートが提供される。 |
(6) | 仮想化への対応状況 | ★☆☆☆☆ | FreeBSD jailというFreeBSD上でFreeBSDを動かす仕組みあり。XenのホストOSへの対応はまだ。 |
表3:FreeBSD 7.2-RELEASEの評価ポイント
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