開発者はお金よりも”好奇心”を満たせるものが欲しい
開発者たちはかならずしも我々と同じことを考え、行動するとは限らない。あなたは自分の空き時間を何に使うだろうか? たとえば、鳥小屋を作ったり、SNSを見つめていたり、ドラマのFriendsの再放送を観たりするかもしれない。その一方で、開発者たちはその時間をApple Watch上でWindows 95を起動させる(これは成功した)ことに費やしたりするのだ。
こういった”モノいじり志向”は、IoT開発者たちの間で特に目立つものである。先日、VisionMobileが発表したIoT開発者4400名を対象に行った新しい調査結果によると、IoT開発者には8つのセグメントがあり、そのうち1/3が仕事としてIoTプロジェクトに携わっているという。他の市場の場合、この割合は50-70%ほどになる。つまり、IoT開発に携わる人々の多くは、金銭のためではなく、単に楽しみや勉強のために開発を行っているということだ。
この事実は、自分たちのハードやサービスの拡充のために開発者を囲い込みたいIoTプラットフォーム企業からしたら耳が痛い話だ。スティジョン・シャーマン氏は、これに関して次のように言う。「IoT市場のキープレイヤーたちは、販売されている状態の商品からそれ以上のものを作り上げることができる開発者ありきで、その戦略を建てるのだ。」
しかし、IoT開発者たちにとっての最高のモチベーションが金銭でないからといって、彼らがビジネス目的の人たちに多大な利益をもたらさないわけではない。企業における問題は、そのプラットフォームを魅力的なものにするために、開発者の喜ぶ別のモチベーションを用意できるかなのだ。
楽しさを求めるホビイストたち
モンティ・パイソンのコメディ映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』に出てきた王子のように、ただ遊びたいだけの開発者たちもいる。VisionMobileが最近発表したIoT開発者セグメントレポートによると、多くの、というよりほとんどのIoT開発者たちは、単なる楽しみ、あるいは、勉強や自らの能力開発のために開発に携わっているという。そして、全体の22%は金銭的なことに全く興味がないと言い、21%はこれといった目的はないが単にそのテクノロジーを試してみたい、と理由に挙げている。
何より興味深いのは、2016年時点でのIoT開発者の大多数を楽しさ優先のホビイストたちが形成しているということだ。なんとその約2/3を占めているという。これは、モバイルやクラウド開発といった他のセクターと比べるとかなり高い数字だ。世のIoTを牽引しているのは、Raspberry Piやその他のハードを使ってとんでもなくかっこいいものを作ってしまう開発者たちのように思える。
今後そうではない開発者も増えると考えられるが、今のところ金銭的見返りを望むIoT開発者たちの数は割合的に低いものである。とはいえ、金銭報酬を望むIoT開発者たちにとっても、創造的な活動や開発コミュニティに属しているという感覚は、モチベーション的に金銭よりもずっと大きなものだろう。
IoTでスラムドッグ・ミリオネアのようなことはありえるのか?
ここで言いたいことは、IoT開発にはお金が必要ないということでも、楽しみのために活動する開発者たちがビジネスをする人にとって役に立たないということでもない。まず、彼ら開発者たちを早い段階で引きつけておくことは非常に重要なことであるだろう。なぜなら、彼らの約1/3は、どこにも所属することなくおもむろに開発を始め、その3年後にはその数はたったの10%になってしまうためだ。また、同じく約1/3は、IoTでどのように収益を上げるかということをよく理解しないまま始め、やはり3年後に10%にまでその数を減らしている。
以上、VisionMobileのレポートが明らかにしたように、IoT開発者の2/3近くはホビイストや探究心旺盛な人たちであり、金銭よりも個人的な興味の追求を開発の目的としている。彼らは、ある技術を他のものより人気のあるものにし、それを後のプロフェッショナルキャリアに活かすことで、IoT技術の進歩に影響を与えることになる人物だろう。そして、レポートはこう続く。「IoT市場はまだまだ未成熟であり、新しい技術がもたらす刺激や楽しさが、金銭や未開拓な市場におけるビジネスの成功よりも重要だ。」
まとめると、IoT開発者たちを調達することは不可能ではないが、そこに生じる問題の原因は”彼らにいくら払うか”という部分ではないのだ。もちろん金銭は発生するだろう。しかし、何よりもプラットフォーム提供者が考えるべきは、「この初期段階にある市場において、開発者たちにどのような機会を与えられるか」についてである。
また、本当にIoT開発者を集めたいと考えているならば、ツール類を容易に入手できる環境とドキュメントの明確さを保証し、彼らが軽い気持ちで触ってみることができるよう準備する必要がある。彼らの探求心や知的好奇心をのびのびと育てられるような環境である。Raspberry Piなどは、開発者に対して簡単で安価に使える実験場を提供するという意味において成功した、古典的かつ完璧な例だ。
IoT開発者たちの”好奇心”にアピールできるものがあれば、そのモチベーションを将来ビジネスに転換できるすることは難しいことではない。彼らの力を借りたいと思うのであれば、もっと彼らをよく知る必要があるだろう。
ReadWrite[日本版] 編集部
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