今一番注目!情報セキュリティの士(さむらい)資格『情報処理安全確保支援士』(第4回)

2016年8月30日(火)
瀬戸 美月

情報セキュリティスペシャリスト終了のお知らせ

「既存のSC試験は2016年10月(平成28年度秋期試験)の実施をもって終了」

2016年6月27日、情報処理技術者試験の試験センターから発表された、「プレス発表“情報処理安全確保支援士”と現行の情報セキュリティスペシャリスト試験の位置付けについてhttp://www.ipa.go.jp/about/press/20160627.html)」で、情報セキュリティスペシャリスト試験(略称:SC)終了のお知らせがありました。

もちろん、情報セキュリティの国家資格がなくなるわけではなく、新しく『情報処理安全確保支援士』という士(さむらい)資格として、2017年4月(平成29年度春期)にスタートするために、既存の試験がいったん終了となるという話です。まったく独立した、新たな資格としてのスタートとなります。また、情報セキュリティの担当者向けの資格である情報セキュリティマネジメント試験は、今後も引き続き情報処理技術者試験として実施されます。

情報セキュリティスペシャリスト試験は、今までは情報処理技術者試験の高度区分9区分のうちの一つとして実施されていた国家試験です。ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリストと並んで、「スペシャリスト系」としてまとめられることも多いです。

名前の通り、情報セキュリティ専門家としてのスキルを試す試験なのですが、情報セキュリティという分野の特徴として、技術だけでは守れず、組織ごとの状況を意識して実効性のある対策を行う必要があります。そのため、試験にそれぞれの組織の情報が詳しく書いてあり、その内容を読み取って臨機応変に対応する必要があり、「情報処理技術者試験の中で一番国語力が必要な試験」とも言われています。

情報処理安全確保支援士は、今までの情報処理技術者試験として実施されてきた情報セキュリティスペシャリスト試験と、内容的には同等となる予定です。しかし、わざわざ独立させて新しい試験となっていますので、従来の試験とは、次の面で異なります。

  1. 情報処理安全確保支援士として、支援士登録簿に登録される
  2. 3年ごとに更新が必要で、更新のための研修を受ける必要がある
  3. 試験以外にも情報処理安全確保支援士になる手段がある

それぞれについて、その内容を見ていきましょう。

1.情報処理安全確保支援士として、支援士登録簿に登録される

情報処理安全確保支援士試験に合格すると、有資格者として『支援士登録簿』といわれる名簿に登録することが可能となります。この名簿は、情報セキュリティの専門家として、情報処理の安全確保を支援することができる資格を持つものとして、公開されるものです。

弁護士や中小企業診断士などと同様の士資格として、名簿に登録されるのです。情報公開のレベルは任意で設定できる予定ですが、この名簿をもとに、企業が専門家を探して依頼する、という使用方法が想定されています。

情報セキュリティの専門家としてフリーで活躍していきたい方、情報セキュリティを専門として就職/転職したい方は、積極的に試験に合格して、登録していくと有利です。また、試験に合格しても登録しないという選択もでき、その場合には情報セキュリティスペシャリスト試験と同様、単なる試験合格者として扱われます。

弁護士や中小企業診断士などと同様に、名簿に登録され公開されます

2.3年ごとに更新が必要で、更新のための研修を受ける必要がある

情報セキュリティ技術はどんどん発展しています。また、企業や官公庁に対するサイバー攻撃も日々進化していて、どんどん対応の難易度が上がっています。そのため、昔の情報セキュリティの知識は役に立たず、知識をリニューアルさせる必要があるのです。

しかし、情報処理技術者試験は、一度合格すると有効期限はありませんでした。そのため、情報セキュリティに関しては昔の資格を疑問視する人が多く、更新制の必要性が言われていました。情報処理安全確保支援士は3年ごとの更新制となる予定ですので、更新を行わないとその資格が失われます。

更新を行うためには、試験を受け直すのではなく、更新研修が用意されており、それを受講する必要があります。更新研修がかなり高額(数十万円程度)になるという噂がありますが、全国8カ所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、高松、広島、福岡)での開催となる予定のようです。

資格の維持には3年ごとの更新が必要となる

3.試験以外にも情報処理安全確保支援士になる手段がある

情報処理技術者試験の合格者は、試験に合格する以外になる道筋はありませんでした。午前免除など、一部の試験が免除される場合はありますが、試験を受けて合格し、合格証書を得ることがその資格の証明でした。しかし、情報処理安全確保支援士は、その試験に合格する以外にもなる方法があります。

その筆頭は、既存の試験の合格者です。すでに情報セキュリティスペシャリスト試験に合格している場合には、そのまま登録できます。取得後3年以上経過している場合には更新研修を受ける必要はありますが、登録は可能です。また、昔のテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)や情報セキュリティアドミニストレータといった、情報セキュリティスペシャリスト試験の前身の試験合格者でも登録が可能となる見込みです。

また、試験合格以外の方法では、試験合格と同等のレベルを持つと認定されるような実務経験を持つ人も登録できる見込みです。例えば、情報処理技術者試験委員のうちのSC試験問題作成従事者や、政府機関等へのサイバー攻撃を監視する業務等に従事する国及び独立行政法人等の職員などが想定されています。さらに、認定された大学院などで情報セキュリティを専攻した学生にも登録する資格が与えられる予定です。

新試験に合格する以外にも、支援士になる道がある

時代の流れに合った、今一番旬な資格

情報セキュリティは、IT関連の中で一番人材不足が叫ばれている分野です。そのため、この資格を取って就職や転職を狙うことは、時代の流れにも合っていてとても有効です。もちろん、向き不向きはあるのですが、自分に向いていて情報セキュリティの仕事をやりたい! という場合には、ぜひ挑戦していただきたい資格です。

前述したとおり、情報処理安全確保支援士には、現在の情報セキュリティスペシャリスト試験の合格者でも登録できます。そのため、来年の新試験開始を待たなくても、今年の秋の試験に合格するという手もあります。

時代の流れに沿った旬な資格、ぜひ受験を検討してみてください。

株式会社わくわくスタディワールド代表取締役

「わくわくする学び」をテーマに、企業研修やオープンセミナーなどで、単なる試験対策にとどまらない学びを提供中。また、情報処理技術者試験を中心としたIT系ブログ「わく☆すたブログ」や、ITの全般的な知識を学ぶサイト「わくわくアカデミー」など、様々なサイトを運営。 保有資格は、情報処理技術者試験全区分、高等学校教諭一種免許状(情報)他多数。著書は、『徹底攻略 情報セキュリティマネジメント教科書』『徹底攻略 応用情報技術者教科書』『徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書』(以上、インプレス)、『新 読む講義シリーズ 8 システムの構成と方式』『新 読む講義シリーズ 8 システムの構成と方式』『インターネット・ネットワーク入門』『新版アルゴリズムの基礎』(以上、アイテック)他多数。

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