ITを使うすべての社会人に向けての資格 ITパスポートと情報セキュリティマネジメント(第5回)
「ウイルスって失礼ですよね」
「ウイルスって、勝手に人のパソコンに入ってきて、失礼ですよね」
これは、近所の年上の知り合いの方が、「パソコンがなんか遅い」というので見せていただき、ウイルスに感染していることを発見したときに言われた言葉です。
人が面と向かって会話をするときには、礼儀正しく振る舞うのが普通です。また、顔見知り同士では、あまり失礼なことは行われないのが通常ではあります。
でも、インターネットは世界中とつながりますので、いい人とも悪い人ともつながってしまいます。確かにウイルスは失礼な存在ではありますが、インターネットにつながる以上、悪い人がいることも想定しておく必要があるのです。
現在の小中学校や高校などでは情報教育が行われ、ITについての基礎的なスキルは、学校でひととおり習うことになっています。しかし、40代以上の方だと、学校でそういった授業はありませんでしたし、身につけている方はだいたい自学自習です。
そのため、ITを使うときの基本的なスキルが身についていなかったり、知っていても偏りがあったりします。
また、学校で学んだからといってみんなが必要なスキルが身につけられているとは限りません。授業をそもそも聞いていないということもありますし、現実問題として、情報教育に関しては、学校間での格差がかなりあります。また、ITはどんどん進歩していますので、新しいことをキャッチアップしていくことも大切です。
一般の人に向けた情報処理技術者試験の資格
何かの知識について学ぶときに、その分野をまったく知らないと、「何について学べばいいのか」わからないということがよくあります。そんなときに指針となるものとして、資格があります。
IT関連の、技術者ではない一般の人、つまりすべての人に向けた資格として、情報処理技術者試験では、ITパスポート試験があります。ITパスポートは、その名前のとおり、ITを扱うためのパスポートで、この内容を身につけておくとITを扱う上で役に立つという知識をまとめた試験です。
また、平成28年度から新設された資格に、情報セキュリティマネジメント試験があります。こちらは、情報セキュリティに関する資格なのですが、技術者や専門家向けではなく、一般の人が対象です。すべての企業、すべての部門で守る必要があるのが情報セキュリティで、各部門でひとりは必要な情報セキュリティ担当者が取るべき資格として位置づけられています。
これらの試験は、ITの専門家に限らず、すべての人を対象にしておりますので、一般の社会人の方が勉強するのに最適です。また、技術者になろうとする人が、最初のとっかかりに使うのにもおすすめです。
技術に限らず、IT全般について学べる『ITパスポート』
ITを使うために必要なことは、実は技術だけではありません。ITを社会で活用するためには、それをビジネスで役立てるために、経営戦略などの基礎知識や、経営とITの関係、ITの活用方法などについて知っておく必要があります。また、ITは一度導入して終わりではなく、継続的に運用していく必要がありますので、マネジメントを行うことも大切です。
そのためITパスポートの試験では、「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」の3分野の試験があり、それぞれの分野での最低ラインも決められています。単にIT関連の技術を知っていればいいという試験ではないのです。
ITパスポート試験の勉強をすると、技術だけではないIT全般の知識が幅広く学べる、そういったバランスを大切とした内容になっています。
企業の利用者に必要な『情報セキュリティマネジメント』
情報セキュリティマネジメント試験は、企業の情報セキュリティ担当者向けの試験で、技術の専門家が取得するためのものではありません。一般の人が幅広く情報セキュリティを身につけ、企業の各部署で活用できるようにすることが本来の目的です。
今年できたばかりの試験なので、現在は技術者の方も数多く受験されていますが、本来は一般利用者の試験なので、技術的な専門知識がなくても、勉強すれば合格可能です。情報セキュリティについて学ぶときには、最初に何を学ぶべきかわからなくなりがちですが、試験を指針にすると、全般的に必要なことを身につけられます。
冒頭にもお話しましたが、今はパソコンを使う人は、一般の人たちでも数多くいます。インターネットにつながる以上、情報セキュリティ問題は避けては通れませんので、会社や家、自分を守るためにも、情報セキュリティについて知っておくことは必須です。
ひととおりの知識を身につけるのには、資格試験の勉強は最適
ITの全般的な知識をひととおり身につけるというときに、単に本を読んで勉強というだけでは、内容に偏りが出てしまうことがよくあります。1冊の本だけではカバーしきれないですし、専門書ひとつの分野だけを深く突き詰めますので、全体像がつかみづらいのです。
また、ITの全般的な知識を身につけるために、大学や専門学校で学ぶという方法もあります。専門家になるならそれもいいですが、利用者としての知識としては敷居が高いです。また、公開の講座などもありますが、内容的に全部をカバーするためには、かなり多くの時間がかかります。
資格試験の勉強は手頃な割に、全般的な知識を数多く身につけられます。ITパスポート試験の内容を全部学習すれば、ITの全分野の基本的なところは押さえられますので、効率的に基礎固めすることが可能です。情報セキュリティマネジメント試験の内容をすべて知れば、会社の情報セキュリティを守るために、何をすればいいのかが見えてきます。
もし、あなたが技術者で、そうでない方からITについて知りたいと相談を受けた場合には、ITパスポート試験の内容を紹介するという方法もあります。また、あなたがITについて知りたくて、何から学習していいか見当がつかない、という場合に、ITパスポート試験の内容をチェックしてみると、IT全般とはどういったものかの概要がつかめます。
資格試験、特に国が主催する国家試験の内容は、時間をかけてしっかり練られており、バランスよく構成されています。
うまく活用して、基本的なスキルをアップさせていきましょう。
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