第2回:Oracle Application Serverの特徴とOracleが目指す方向性 (2/3)

Oracle Special Interview
第2回:Oracle Application Serverの特徴とOracleが目指す方向性
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−現在、Oracle RACが注目されていますが、この理由はどういったものでしょうか

杉氏: データベースサーバやアプリケーションサーバには、障害やトラブルに対応するために多重化するという発想があります。しかし単純に多重化しただけでは、待機系のハードウェアコストが非常に高くなるというデメリットがあります。また大規模サーバを使ったシステムでは、簡単にリソースを追加するということは、まずできません。

Oracle RACの場合は、パフォーマンスを担保するために中規模のサーバを複数台用意していただき、もし1台にトラブルが発生すれば他のサーバが自動的に担保できます。パフォーマンスの面でも、必要なだけサーバを追加するといった発想ができます。

こういった耐障害性とパフォーマンスの負荷分散という2つを一挙両得できることが、Oracle RACが支持される理由であると考えています。

−実際にどういった用途で利用できるのでしょうか
杉氏: パフォーマンスアップだけなら様々な手段がありますが、実際には必ずコスト削減という課題が発生します。Oracleとしては、今動いているハードウェアにまず目を向け、それを有効活用する手段としてグリッドが思い浮かびます。

日本オラクル株式会社 システム製品統括本部 営業推進部 Fusion Middlewareグループ 担当シニアマネージャー 杉 達也 3つのサービスを展開する際に、大規模サーバをそれぞれに3台あるいは待機系を含めた数だけ用意します。しかしグリッドでは中規模のサーバを5〜8台用意して、それを複数のシステムで共有するといった形を取ることができます。

A、B、Cの3つのシステムを持つ企業で8台の中規模サーバでグリッドを構成した場合、システムAの負荷がピークになる時間帯は7台をその処理に充て、システムB、Cは残った1台をうまく切り分けて使います。システムAのピークが終わったら、分散を等分化します。

こういった動的な構成変更を行い、CPUやマシンといったハードウェアリソースを有効に無駄なく使える点が、グリッドの最大のメリットでしょう。また、ハードウェアリソースの有効化によって、ハードウェアコストの削減にもつながります。
山本氏: 例えば、経理システムを作られたお客様が、次の年にはまた別の文書管理システムを作るという場合、これまではコスト・予算は別枠で、導入する側としてもその時々のシステムに必要な要素を考えてサイジングし、構成を提案していました。

しかしその構成には待機系の無駄なリソースも入っています。待機系は、何かトラブルがあったときに必要なものとなりますが、会社全体から見れば余剰リソースとなるケースもあります。そこで現在は、リソースを有効活用できるグリッドを含めた提案をしているという形になります。
杉氏: 既存のハードウェアを無駄なく利用するための機能が、RACには備わっています。同時に同様の機能と考え方を基盤として取り込んでいるのがOracle Application Serverなのです。

このように、Oracle Fusion Middlewareには、グリッド機能をデータベースだけでなくアプリケーションサーバも含めて利用できる環境が整っています。
山本氏: 現在多数の問い合わせをいただいておりますし、お客様の関心が、昔のような1つのシステムを構築するというものから、企業・業態の資産全体への投資を見直すという点に移ってきています。それに対する答えとしてOracleのグリッドテクノロジが適合するという評価をいただいています。

−こういう流れのなかで、企業システムはどのように変わっていくのでしょうか
杉氏: まず、SOAという大きな流れがあります。SOAは仮想化に非常に近く、既存の複数のアプリケーションを仮想的に1つに見立てるといった考え方です。実はこの発想は、名前は違いますが、グリッドにものすごく似ていると思います。

SOAを実現するにあたって、実際に動かし、かつ高信頼性を求めるには、グリッドのテクノロジーが有効に使うことができます。SOAとグリッドを強いつながりによって結びつけ、これからの様々な企業のソリューションへの導入を進めていきたいと思います。
日本オラクル株式会社 システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ 担当シニアマネジャー 山本 哲也 山本氏: 今後キーになるのは「標準化」だと考えています。現在、標準化と言えば、いわゆるJ2EEやSOAといった流れのような業界標準という形で使われています。もちろんそれも重要ですが、Oracleはさらに基盤やそこに配置されるコンポーネントの標準化が必要だと考えています。

今まさにセキュリティの確保は直近の問題です。もし基盤やコンポーネントの標準化が行われていない場合、どこに危険が潜んでいるかを判断するにはすべてのリソースをチェックする必要があるでしょう。
−それはどのような形で実現できるのでしょうか
山本氏: 標準化されたバージョンに全体が適応し、パッチレベルもすべて統一されるようなイメージを考えています。そこまでの標準化が進めば、セキュリティホールの無い状況を容易く実現できるでしょう。

もちろん組織、企業間の壁があり簡単に実現できるテーマではないかもしれません。そこはテクノロジのレベルで進めていき「もう対応を済ませました」といった形で手をあげていくことで、流れが加速すると思います。
杉氏: グリッドやSOAはソフトウェアベースの仮想化テクノロジですが、今後は各ハードウェアベンダーがハードウェアレベルの仮想化を行う製品が続々と登場すると思います。

そこで、同じ仮想化を目指したハードウェアとソフトウェアのバランスという点が今後の課題になるでしょう。それぞれの分担がはっきりとするまで5年くらいかかるのでは、と考えています。
日本オラクル株式会社 システム製品統括本部 営業推進部 Fusion Middlewareグループ 担当シニアマネージャー 杉 達也  システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ 担当シニアマネジャー 山本 哲也 山本氏: 現在、セキュリティやコンプライアンス、さらにコストなどが重要視されるようになりました。今後はもっと組織の上位が導入を決定するというスタンスが求められると思いますし、そういった形に構造が改善されていくでしょう。その中で基盤部分はグリッドとSOAの組み合わせという形が見えてくると思います。

結果に達するまでどの程度のスピードで進んでいくかはわかりませんが、インフラ基盤を支えるグリッドと、その上で動作するSOAという2つの要素を持っているOracleが明らかに強みを増してくると考えています。

日本オラクル株式会社 システム製品統括本部 営業推進部 Fusion Middlewareグループ 担当シニアマネージャー 杉 達也

日本オラクル株式会社
システム製品統括本部 Fusion Middlewareグループ
担当シニアマネージャー
杉 達也

1996年4月に入社。Oracle Fusion MiddlewareのSOA/Java関連マーケティング業務を担当する。

日本オラクル株式会社 システム製品統括本部 営業推進部 Grid Computingグループ 担当シニアマネジャー 山本 哲也

日本オラクル株式会社
システム製品統括本部 Fusion Middlewareグループ
担当シニアマネージャー
山本 哲也

2000年2月に入社。Oracle Gridおよび運用管理ツール関連のマーケティング業務を担当する。


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