第4回:個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント (1/4)

リスクマネジメント
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント

第4回:個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
著者:プライド   三澤 正司   2006/9/5
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はじめに

   前回まではコンプライアンスについて説明してきたが、今回より個人情報保護/ISMS(Information Security Management System)に着目して、関連するリスクアセスメント手法を説明する。

個人情報保護とISMS

   個人情報保護とISMS、どちらもその保護対象である個人情報/情報資産を保護することが目的である。個人情報保護については表1の経緯があり、ガイドライン、認証制度、規格、法律が整備されている。

1989年
経済産業省は、「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOEDC理事勧告」(1980年)と「個人データ処理に係る個人情報の保護及び当該データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の指令」(1995年)を基礎としてガイドラインを策定。
1997年
上記経済産業省ガイドライン改定。
1998年
経済産業省ガイドラインを基準とした第三者評価認証制度であるプライバシーマーク制度の創設。
1999年
経済産業省ガイドラインでは、経済産業省の管轄する関係業界に限られるおそれを懸念し、業種業態を超えた取り組みとしてJIS化。JIS Q 15001:1999「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項」
2005年
「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)の施行。
2006年
JIS Q 15001:1999の改正。JIS Q 15001:2006「個人情報保護マネジメントシステム−要求事項」

表1:個人情報保護法の経緯

   また、ISMSについては表2の経緯があり、規格、認証制度が整備されている。

2000年
英国規格BS7799-1を国際規格としてISO化。ISO/IEC 17799:2000「情報技術−情報セキュリティマネジメントの実践のための規範」L
2002年
ISO/IEC 17799:2000をJIS化。JIS X 5080:2002「情報セキュリティマネジメントの実践のための規範」
2002年
ISO/IEC 17799:2000とBS7799-2「情報セキュリティマネジメントシステム−仕様及び利用の手引き」を基にしたISMS認証基準(Ver.1.0)を本格運用開始。
2003年
2002年BS7799-2の改訂に伴いISMS認証基準(Ver.2.0)に改訂。
2005年
ISMS認証基準として国際規格ISO/IEC 27001:2005が発行され、ISMS認証基準はこの規格に移行。
2006年
ISO/IEC 27001:2005をJIS化。JIS Q 27001:2006「情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティマネジメントシステム−要求事項」

表2:ISMSの経緯

規格番号のコロン「:」以下は発行年をあらわす。JIS番号の「Q」「X」はJISの分類をあらわしており、「Q」は「管理システム」、「X」は「情報処理」である。

   個人情報保護についてはすでに施行されており、法律上の義務として経営判断の前提として優先される。そしてJIS Q 15001:2006「個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」は、プライバシーマーク認定制度の適用規格であるとともに個人情報保護法や各省策定のガイドラインへの対応を補完する役割を持っている。

   ISMSについては、JIS Q 27001:2006「情報技術-セキュリティ技術-情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項」がISMS認証の適用規格であるとともに、企業があらゆる 脅威から情報資産を守るために体系的なマネジメントシステムを構築するための枠組みである。

   JIS Q 15001:2006「個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」、JIS Q 27001:2006「情報技術-セキュリティ技術-情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項」どちらもマネジメントシステムであり、経営者のツールとして位置付けられる。

   個人情報保護とISMSを認証という観点で整理すると表3のとおりとなる。

  プライバシーマーク
(個人情報保護)
ISMS認証
目的 社会法益 経営者利益
適用範囲 全社的取り組み 受審機関が決める
適用規格 IS Q 15001:2006 JIS Q 27001:2006
保護対象 個人情報 情報資産
有効期限 2年間 3年間(1年以内にサーベイランス)

表3:個人情報保護とISMSにおける認証

   個人情報保護は、「社会法益」つまり法によって保護される社会生活上の利益を守ることが目的である。それに対しISMSは、「経営者利益」つまり情報セキュリティマネジメントシステム構築により自社、取引先等の情報資産を守ることが目的である。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社プライド  三澤 正司
ITコーディネータ
プラント会社勤務時に、情報システム分野およびシステム開発方法論に興味を持ち、株式会社プライドに入社。主としてプロジェクト支援、標準化支援、教育に従事するが、ここ数年は、情報セキュリティ、管理業務に関わる支援の比重が大きくなってきている。


INDEX
第4回:個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
はじめに
  ISMSにおけるリスクアセスメントの位置付けと要件
  リスクアセスメント手法の適用
  リスクの数値化
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント
第1回 リスクアセスメントの範囲の策定
第2回 内部統制に対応するリスクアセスメント
第3回 コンプライアンスに対するリスクアセスメント
第4回 個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
第5回 個人情報漏洩のリスク評価
第6回 プロジェクトマネジメントにおけるリスクアセスメント

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