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IT基盤を刷新する レガシーマイグレーション入門
IT基盤を刷新する レガシーマイグレーション入門

第2回:ノンストップ稼動メインフレーム資産のマイグレーション 〜 大手鉄鋼会社の事例
著者:新日鉄ソリューションズ   荒木 義史   2006/6/7
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製鉄所全体最適化への取り組み

   A製鉄所が目指したのは、個別機能・工場単位の部分最適となっているメインフレーム中心のシステム構造を全般的に見直し、全面オープン化を念頭に製鉄所全体で新たな「全体最適化」を指向する体系へ再編することであった。

   図1にA製鉄所が目指す製鉄所全体最適化の方向性を、EA(Enterprise Architecture)における4階層のアーキテクチャモデルの枠組み(業務体系、データ体系、適用処理体系、技術体系)によって表現したものを示す。
A製鉄所の全体最適化の方向性
図1:A製鉄所の全体最適化の方向性


データ中心構造への設計方針の変更

   図1のうちA製鉄所の再編方針のキーポイントとなったのは、データ体系の整理である。現行システムの保有ステップ数とファイル・データベース数の増加推移を時系列に調査したところ、ほぼ比例関係にあることが判明した。

   当初の管理項目は製造に関する項目が主体でファイル構造も計算機の制約・性能確保に配慮する構造であったが、その後に工場の設備増強だけでなく、品質管理・操業管理の高度化により、情報の質・量が大きく変化していた。

   システム開発案件における他システムへの影響度合いを調査する波及調査の大部分は、この多岐に渡るファイルとデータベース間のデータの整合性、一貫性の維持検証にあることもわかった。

   次期の将来システムでは情報要求の高度化・加速化に耐え劣化が起こりにくいシステムをいかに作るかが一番の課題である。そこで環境変化に対して普遍的、安定的なデータ基盤を先行設計した。そして必要性・緊急性に応じてアプリケーションを順次開発する方式を理想として、データモデリングをベースとしたDOA(Data Oriented Approach:データ中心)アプローチによりデータベースの再構築に取り組んだ(ある操業系サブシステムでは、約700あったファイル群を約200テーブルにまで集約した)。

   データに着目したこの作業により、システムの全体像の構造的な把握ができ、全体最適化の視点からの整合性を保った個別業務システムの切り出し(マスタープラン)の策定が可能となった。

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新日鉄ソリューションズ株式会社 荒木 義史
著者プロフィール
新日鉄ソリューションズ株式会社   荒木 義史
入社以来、製鉄所生産管理システムに対して、企画〜設計〜開発〜保守のソフトウェアライフサイクル全般に渡る業務に従事。現在は鉄鋼システムでの知見をもとにレガシーシステムを中心としたコンサルティング業務を担当。

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