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リポジトリ管理による各種分析
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「静的判定」は各資源類、具体的にはプログラム/COPY句/マクロ/データベース定義/画面帳票定義などの関連付けを整理し、どこにも紐付かない資源を不要と判定しているが、その関連付けの整理結果はリポジトリとして保有することが望ましい。
各資源間の関連をリポジトリに格納しておくことで、例えば、データベースの定義情報やレコード定義とそれらを使用しているプログラムとの関連(リレーション)から、あるデータベースを作り直した場合に影響するプログラムをすぐに検索できるようになるからである。
あるいは大規模システムの分割移行を考える場合に、データベースを中心としたプログラム群の結合状況からデータ境界をシミュレーションし、他への影響をミニマムにするような移行単位の抽出検討も可能となる。
その意味で、先に述べた通りシステム資産の棚卸を行う意義は不要資産を判定することだけではないといえる。現行システムの分析や移行プロセスを設計するにあたっての基礎情報を取得するという意味で、レガシーマイグレーションには必須の作業といえよう。
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システム稼動状況の棚卸の必要性
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システム資産の棚卸について、ソフトウェア上の資産は棚卸ツールを用いた作業が中心となるが、他にも計算機本体やネットワーク・端末などのハードウェアの構成、また利用状況についても実態調査を行っておく必要がある。当社ではこれを「稼動状況の棚卸」と呼んでいる。
ネットワーク・端末などのハードウェアの構成はドキュメントを通じて把握するが、他にも計算機の稼動統計情報から把握する事項としては、CPU負荷状況/トランザクション状況/バッチ件数や処理時間/オンライン応答時間/ディスク容量/バックアップ量やバックアップ時間/帳票の種類/出力先・出力量などがある。
これらは新基盤のマシン能力の算定や運用スケジュール立案のバウチャー(証拠書類)として用いる。例えば現行のオンラインの応答性を保証するためには、ピーク時の負荷をカバーする処理能力を持っておくことが必要となる。あるいは1時間ごとのCPU負荷状況を把握した結果、バッチ処理の時間帯の能力に余力があることが判明した場合にはバッチスケジュールの見直しを行い、バッチ処理終了時刻を早めるなどの施策案を検討テーマにすることができる。
また、トランザクション件数やバッチ件数・処理時間とCPU負荷の相関を把握しておくことで、処理件数の予測から必要なCPU処理能力を算定する参考値を導き出すことができる。例えば、「トランザクション件数が100万件でCPU負荷が50%ならば150万件では75%、バッチ処理時間がx分であればyMIPSのCPU能力が必要」と想定することができるようになる。
ディスク容量/バックアップ量やバックアップ時間/帳票の種類や出力先および出力量についても、それぞれ、新基盤のディスク装置の容量、バックアップ処理装置の構成検討、プリンタの各スペック算定のベース値として用いる。
新基盤のサイジング要件は、これらの情報からだけで決まるものではないが、現行システムの稼動分析による現行性能特性の抽出は、新基盤構成を検討する上での重要な確認事項である。
それら稼動情報の大部分は、計算機の持つ稼動統計データから抽出し整理することによって把握する。メインフレームを持つ企業のほとんどは、日常の計算機運用業務の一貫として、このような計算機の稼動管理を実施していると思われる。しかし、計算機稼動統計データは大量に出力されるため、部分的な把握に留まっている場合が多い。そこでレガシーマイグレーション計画の立案時には改めて、分析目的に沿って期間限定または項目を集約して収集する必要がある。
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著者プロフィール
新日鉄ソリューションズ株式会社 荒木 義史
入社以来、製鉄所生産管理システムに対して、企画〜設計〜開発〜保守のソフトウェアライフサイクル全般に渡る業務に従事。現在は鉄鋼システムでの知見をもとにレガシーシステムを中心としたコンサルティング業務を担当。
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