第4回:「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係 (3/3)

実践的ERP入門
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは

第4回:「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係
著者:システムインテグレータ   梅田 弘之   2006/8/22
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ERPと内部統制

   ERPはSOX法よりも古くから存在します。その生い立ちからして「企業の内部統制や虚偽のない財務報告書を作成する」というSOX法の目的を実現しています。15年も前からERPに携わってきた筆者からすると、いまさら日本版SOX法という言葉がでてきても「もともと対応している」というのが正直な感想です。基幹業務の部分ならERPは十分対応できるように開発されているはずですし、ERPの守備範囲外についてSOX法は関連しないと思います。

   一言で内部統制強化のためのRCM作成といっても、そこには様々な分野のリスク・課題があり、その切り口も様々です。例えばIT切り口で分類すると図2のようになります。ここでの非IT項目はITに直接関わらない課題であり、内部統制課題としてはこの部分の比重は大きくなっています。

内部統制強化の課題分類(IT切り口で整理)
図2:内部統制強化の課題分類(IT切り口で整理)

   内部統制の課題は広範囲にあります。「社内規定がドキュメント化され、その通りに運用されていること」「内部監査担当者を選任して、定期的に内部監査を実施し、その改善をフォローする仕組みを用意する」「IR担当者を選任して、開示すべき情報をタイムリーに外部公開する」など、様々なチェック項目が本来必要となります。

   これらの課題は上場企業であれば当たり前に要求されるものですが、それを整理してチェックリストとして持っている会社は少ないのです。ぜひこの機会にRCMを作成して、自社の課題と達成度をチェックしてください。


ITに関するRCMの項目

   RCMのITに関する項目には「ITを使った改善」と「IT自体の改善」の2種類があります。「ITを使った改善」とは、内部統制強化対策にITを有効利用するものです。例えば「業務フローをツールで作成する」「ドキュメントを電子帳票システムで保存する」「不正アクセスをツールで検知する」ことなどがこれにあたります。

   一方の「IT自体の改善」は現在使用しているシステムの強化となりますが、その中にはERPの守備範囲と範囲外のものがあります。範囲外のものとは、「フラッシュメモリはパスワード機能付きのもののみ利用可能」「個人PCを社内LANに接続する際のルール」といった人が介在する運用ルールを指します。

   次回は、ERP守備範囲内の課題を取り上げます。チェックリストを用いた内部統制のチェックを各項目の解説を交えながら行います。ユーザ企業の方でも簡単に行えるものですので、ぜひご期待ください。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  代表取締役   梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経てシステムインテグレータを設立。前職で日本最初のERP「ProActive」を作ったノウハウをベースに、「Web Shopping」「Object Browser」「作って教材」などの自社ソフトを次々開発して、パッケージビジネスを展開。最近は「アプリケーションは日本の方が上」という信念のもと、完全Webベースの第3世代ERP「GRANDIT」の企画・開発を担当した。


INDEX
第4回:「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係
  受身で捉えてはいけない日本版SOX法
  内部統制活動の主要3ドキュメント
ERPと内部統制
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは
第1回 ERPの概要と導入のポイント
第2回 アンバランスな業務とERPの関係
第3回 海外進出する日本のパッケージベンダ
第4回 「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係
第5回 ユーザができるリストを用いた自社の内部統制のチェック

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