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SLAによるITマネジメントのあり方
第5回:重要性が高まるベンダーマネジメント
著者:
アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
2007/4/20
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ベンダーに期待される自主性
ベンダーマネジメントで先行する企業では、通常のSLA評価項目を拡張したスコアカード方式のベンダー評価を行う例が増えつつある。例えば、開発プロジェクトであれば表1にあげる項目などをKPI(重要成果指標)として評価する。なお、この場合、技術/業務の専門性、プロジェクトの難易度などの条件面も加味して評価するのが適切である。
予算遵守度
納期遵守度
運用容易性
関連システムへの配慮
改善要求への対応度
採用技術の永続性
ユーザ満足度
表1:評価項目
他方、ベンダーの価値を引き出し、満足のいく取り引きを行うには、評価・管理するだけでなく、ベンダーの能動的なアクションにも期待したい。自社とのプロジェクトがベンダーにとって初回取り引きである場合、とりわけ継続契約が期待できる場合は、取り立てて策を講じなくともベンダーは一定の努力を払ってくれるものである。
しかし、案件の安定供給が続いたり、評価が形骸化したりする場合は、常に信頼性の高いアウトプットを得られるとは限らない。ベンダーの自主性を引き出すには、前回述べたSLAに基づくインセンティブプランの活用も考えられるが、一方で一般的なSLAが決して万能ではないという認識も必要だ。
連載の中でも繰り返すように、SLAが不向きな業務(開発、SIなど)を外部から調達しなければならない場合がある。またSLAが適用できても、コミットされる内容は常に十分とはいえない。
評価項目の網羅性が高かったとしても、一定期間を経過すれば、SLMの目標達成のみに焦点を当てた恣意的な運営となる可能性がある。これは受験生に喩えると、学力向上というよりも受験対策を目指して勉強する姿とよく似ている。評価の勘所が分かれば、ベンダーはさながら赤本を予習するかのごとく対策を講じてしまうであろう。
動機づけの仕組み
では、合理的にベンダーを動機づけるにはどうすれば良いのだろうか。ひとつの方法としては、ベンダーの格付けに基づく調達方式を採用することが考えられる。
これは、実績や品質が一定以上と評価されるベンダーをリストアップ(10社など)し、一定規模以上の案件の契約先として活用する仕組みである。競争原理が働くため、ベンダーは自ずと自社の格付けを意識し、リストに食い込むことを目標に業務を遂行することとなる。リストアップされたベンダーは信頼性が高いので、RFP選定のプロセスを介さずに、迅速な発注や契約を随意に行うことも可能となるだろう。
一方、上位に格付けされて一定期間を経過したベンダーに惰性が生じる可能性がある。これは、ベンダーリストを適宜アップデートすることによって回避していく。例えば、年次で一定比率(下位2割など)の入れ替えを行うルールを適用すれば、上位ベンダーであっても除名されることを懸念して、緊張感を維持する確率が高くなる。
ただし、このような方式を採用する場合は、ベンダーのスイッチが可能な環境をあらかじめ整備(手順書のアップデートなど)しておかなければならない。引継ぎや技術移転が問題となるようでは、リスクを高めてしまう危険性が生じるからだ。
ベンダーSLAは、ベンダーマネジメントの1つの要素となるが、それだけで最適なIT調達を実現できものではない。SLMを実行しながらも、総合的なベンダー評価や動機づけを行うことで、より有益なIT調達を指向することが求められる。
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著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール
金谷 敏尊
シニア・アナリスト
青山学院大学を卒業後、マーケティング会社の統括マネージャとして調査プロジェクトを多数企画・運営。同時にオペレーションセンターの顧客管理システム、CTIなどの設計・開発・運用に従事する。1999年にアイ・ティ・アールに入社、アナリストとしてシステム・マネジメント、データセンター、アウトソーシング、セキュリティ分野の分析を担当する。著書「IT内部統制実践構築法」ソフトリサーチセンター刊。
INDEX
第5回:重要性が高まるベンダーマネジメント
ベンダーとの付き合い方
ベンダーマネジメントの機能
ベンダーに期待される自主性